19オーウェン
「くそっ!」
オーウェンは逃げていた。
やはりアズがメインだったのだろう、3人しか追いかけて来ない。
オーウェンは、どこか彼らに自分と似た匂いを感じていた。
「お前ら、殺し屋とかか?」
全くと言っていい程逃がしてくれそうにない奴らに、腹をくくり立ち止まって尋ねた。
「ふうん、同業者か?まぁ、それに近いようなもんだが。どっちにしろお前は俺達の顔を見たし、今職業も知った。生かしておくわけにはいかないなぁ」
そんなのは建て前だろう。ただ奴らは闘いたいだけなのだ。過去の俺がそうだったように。
オーウェンは剣を抜いた。
俺はここで死ぬわけにはいかない。
「来いよ」
「命乞いなら今の内だぜ?」
思い切り、剣を振りかぶった。
−−−
はぁっ、はぁっ…
自分の息づかいが聞こえる。
俺はまだ生きているらしい。
辺りは血の海で、そこに男が4人倒れている。オーウェン以外の3人は死んでいた。
「くそっ…」
体のどこかから血が流れているのを感じる。
頑張って立ち上がってみようと試みたが血が足らないのか、骨が折れているのか分からないが、立てなかった。
「どうしよう…」
「全く、馬鹿なのかい?」
急に声がした。
そちらに頑張って顔を向けると、声の主がいた。
「…お婆さん…」
あの魔女だった。
「こんな所にいたら死ぬよ。家に来なさい」
するといつの間にいたのか、男が近づいてきて、オーウェンをお姫様抱っこした。
抱え方に少々嫌悪感を感じたのだが、傷口には一番良い抱え方だった。
歩いている間にオーウェンはだんだん意識が朦朧としていき、ついに気絶した。