13ニスモ
傭兵の目をくぐり抜けさっさとその場から離れて行く2人。
小声で、
「だから言っただろ?あんな新米ちょろいもんだって」
…小さい相棒の黒い部分を垣間見た気がした。
「俺もよくやるけどさ」
って、やるんかい!
自分で言っていて虚しい。
話を戻して、
「どこにいるんだ?その、情報持ってる奴は」
「一番西に行け、って。ここは東門だから、もっと向こうだな」
どんどん進んでいく。
この道はアーケードなのだろう。沢山屋台が出ている。アイスに、串に刺さった肉やら虫やら、果物を売る店、精肉店、ジュースを売っている店もある。
それらを見ながら、
「うわー、すごいな。面白ぇ。なんか腹減ってきた」
「さっき昼飯食ったじゃんよ…」
「前から思ってたんだけどさ、お前少食だよな。まだ13なんだろ?もっと食べないと大きくなれないぞ。男の割にあんま筋肉無くて細っせーし」
「仕方ないだろ。筋肉がつきにくいんだ。1日置きに筋トレもしてるだろ」
食事の度に必ずといって良い程言われるのでアズは少しイライラした。
「しっかし、まじで腹減ったな。何か買ってもいいか?」
「…チッ。ひとつだけだ。ちゃんとお前の金で払えよ」
「今舌打ちが聞こえたような…。行ってくる」
アズが一睨み(顔は見えないが)すると、オーウェンは急いで買いに行った。
まったく、人の考えも見抜けないのか。そんなんでよく生きてこれたな。天然か?鈍感なのか?運が良かったのか?いや、人間運だけじゃ生きてはいけないだろ…
「これ旨いな」
いつの間にか戻ってきていた。手には先程の串刺し肉を持って。
「あんまりはしゃぐなよ。出稼ぎ設定なんだから、ここではあんまり物を買うな」
「分かってる」
本当に分かってんのか的な視線を送れば、分かってるに決まってんだろという視線を返された。
そうこうしているうちに、かなり西まで来た。するといかにも怪しげな、ここには悪い魔女が住んでいるんですよ、と全身で語る建物を見つけた。
「…あそこが、目的地ですか?」
「…聞いた話から推測するに、そうなんだろうな」
「まじで?」
「…行くしかないだろ」
顔を見合わせて盛大に溜め息を吐く2人。
そしてそのかなり後方、木の陰から覗いている2人組も小さく溜め息を吐いた。