12次の街
2人が宿を出発して2日目。
「なぁ、どの街に向かってるんだ?この方角だと、カイリルか…それともタフタか?」
やっと聞く事ができた。宿を出たときに聞こうと思っていたのだが、アズの置かれた状況的にそれは止めた方が良い、と判断したためだ。
そこから1日経ってやっと、周りに人のいない(気配もしない)環境になったのだ。
多分アズもその辺を分かっているのだろう、すぐに教えてくれた。
「どちらでもない。ニスモだ。実はお前のいた所で聞いたんだ。そこに泉に詳しい人がいるかもしれないって」
「そうなのか」
ニスモとは辺境の街である。
そこで俺は声を落とした。
「この前の山賊、明らかにお前とわかって追ってきてたよな?」
「そうだな。あの日逃げるときにしっかり、顔はともかく後ろ姿は見られていたと思うし、そこから2週間は追跡されていた気がするし、それともやっぱりお前を買った時に足が付いたのか…」
「え…。最終的に俺の所為なの!?ってそうじゃなくて、あの時、1人逃げた奴いたよな。後でそいつが追っかけて来る可能性もあるよな?援軍を連れて、とか」
「無くは無い、な。だからニスモでは変装をする事にした」
数日後、森を抜け、ニスモに通じる門の前には金髪の兄弟がいた。
「では、ようこそニスモへ」
門番の傭兵に開けてもらい、中に入る2人組。
1人は身長180くらい、もう1人は身長150くらいの小柄な子だった。
「兄ちゃん、ここには仕事があるかなぁ」
「きっと見つかるさ。ラコルーニャ伯父さんだって仕事を見つけたんだ。俺達にだって見つけられるさ!」
彼らは出稼ぎにこの国に来たらしい。子供の出稼ぎは今時珍しくない。それにこの街は辺境にしては中々賑わっている方だろう。ここなら稼ぎ口がたくさんあるから、すぐに見つかるはずだ。
若い傭兵は心の中で2人にエールを送っていた。