表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の逆鱗  作者: 銀狼
王国内乱編
65/92

第65話:2つの出会い

「……ミーア……」

「姉さん……!!」

 姉妹は互いに抱き合い嗚咽を漏らした。少し離れたところにいる農民の息子セヴル、竜騎士隊(ドラゴン・ナイツ)のゴドリック等は場の雰囲気に感化され、もらい泣きをしていた。それを見たユーヤの眼が一瞬鋭く光ったが、吐息と共に力を抜き、チエと共に穏やかな目で2人を見つめていた。

 レイアがゴドリックの話を聞いた次の日、レイアは彼に頼み込んでワイバーンに乗せてもらい、トルヌ村まで運んでもらった。ユーヤ将軍に話を通し、彼から浜にいると教えられて向かった先に待っていた感動の再会、という流れである。勿論、姉妹にとっては予定調和。前日の夜、龍斗も含めて念話を行い、作戦の前倒しを決定した。抱き合っている今も、

「それで、この後の流れは……」

「私も『狗』で良いのよね」

「そうよ、それと……」

 と、今後の作戦進行について話し合っていたが、その非常に小さな声を聞きとった者は誰もいなかった。当然ながら、涙を流して抱き合うその全てが演技だと見抜ける者もいなかった。

 一通り終わって2人が離れた頃、ユーヤが煙管(キセル)の煙を吸いながら歩み寄ってきた。

「んで? これからどうすんだ、小娘共」

「……こうしてまた姉さんと会うことが出来ました。これ以上の事は望みません……それと、私達を引き合わせてくれたライトベルクに恩返しがしたいです。姉さん程ではありませんが、何かお役に立てるのなら……同じように、軍に入りたいです。1度断っている上で厚かましいですが」

「いや、俺が言ってたのは単に覚悟の問題だ。命捨てたくねぇ奴を戦場に出すわけにいかねぇからな。てめぇがそう言うんなら止めはしない……おい、帰りは1名追加な」

 『生き別れた姉妹の感動の再会』という明るいニュースは、直ぐにライトベルク中に広まることとなった。





 1体のワイバーンが海の方へ飛んでいくのを森の中から目で確認した男は、木から飛び降りて道へと出た。シャツにズボンという至って普通の格好だが、レザーアーマーとシャツは野獣の返り血で赤く染まっている。ズボンのベルトには黒光りする短い棒を挿していた。

 そのまま道を歩いていると、レンガを積んだ関所と衛兵らしき人物2人が見えてきた。何やら興奮した様子で、饒舌に話をしている。

「――あの大佐と魔法で張り合ったんだぜ。氷が反射する光に包まれたあの姿といったら……と、何の用だ?」

 1人が男に気付いて仕事の質問をした。

「ああ、傭兵志願者です。それより、何か面白い事でもあったんですか?」

「おおよ。生き別れた姉妹の感動的な再会だってよ!!」

「あの【無慈悲なる氷の槍】も、心までは凍りついちゃいなかったのさ――」

「あー、では、通らせていただきますよ」

 2人の会話を邪魔しないように、男は関所を通り抜けた。





「失礼します」

 室内にいた男は、入ってきた者を見て驚いた。相手は上半身は血に染まった赤色、冒険者然とした格好の黒髪の男。全く見覚えのない人物である。

「何者だ!!」

 黒髪の男はそれに答えず、全く違うことを尋ねた。

「……貴族の方とお見受けするが?」

「ああ、それが何か? お前は傭兵か何かか。ここは執務室だぞ」

「なら、これが何か、分かるか?」

 男が投げた物を、反射的に受け止めた貴族の男。ゆっくりと開いて受け取ったものを確認する。

「何だこれは? ネックレスか? 中々良さそうな品物……だ……が……」

 徐々に目が丸く大きくなっていく。黒髪の男は薄ら笑いを浮かべていたが、それには全く気付かなかった。

「……いや、待て……この飾り……まさか、『金珠貝の首飾り』!? いやいや、あれは、王家のご息女の為にしか作られない……は……ず……」

 目を丸くしたまま黒髪の男を見た。

「お、お前、これを一体何処で……その前に、これは一体誰の……?」

「なら、見てみましょうか。それが今まで見てきたものを……時の神クロノスよ。汝は時を司り、過去の全てを知る者なり。今我は望む、彼のものが過ごせし時を。我は望む、彼のものが経た過去を。我が望みしもの、汝の力を以てここに具現せよ、『記憶解読(リーディング・メモリー)』」

 首飾りから薄緑色の光のスクリーンが発生し、いつぞやと同じ映像が映し出された。反応も、あの時の貴族と同じである。違うところは、まず映像を見ている人数。そして流される映像の長さ。今回の映像は、フェルミレーナの成長を確認できた辺りで終わった。

「フェル……フェル……」

 映像が終わった後も、貴族の男は呆然としていた。やがてゆっくりと顔を動かし、黒髪の男を見た。

「お前……一体……」

「お初にお目にかかります。私の名はルート・イースト。貴方は?」

「……ランゴバルト・ベス・アルマ・ウェストル」

 光の加減か、ルートと名乗った男の藍色の眼が、妖しく光ったように見えた。そしてその色は、いつの間にか紫色へと変わっていた。

一応設定集なるものを作ってみました。今のところ人物のまとめを作っています。もしよろしければ目を通してみて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ