第34話:第2回戦 魔術師アゲート
どうでもいいことだとは思いますが対戦相手の名前を知り合いに考えてもらいました。それに私はミドルを入れたんですが←
有難うございます。では、どうぞ
3日後、第1回戦が全て終わり、第2回戦へと進んだ32人がコロッセオのグラウンドにいた。まだ日が昇って間もないというのに、会場内は既に熱気に包まれている。今行われているのは第2回戦の抽選。トーナメントの位置決めである。着物姿の龍斗は相変わらず腕を組みながら静かに様子を見守っていた。進行役の声が響いた。
「第2回戦以降のトーナメント表を発表いたします!! モニター、カモン!! 参加者の皆さんはカードに表の情報を送りますので、そちらをご確認下さい!!」
龍斗は自身のカードを呼び出した。見てみると春闘参加を証明するマークが青い光を放って点滅している。試に指で触れてみる。薄い膜のような光がカード上に現れ、黒い線が枝分かれになっている図が浮かび上がった。その末端は上に16、下に16。下段の左から2番目の所に赤い点があるのを見つけ、そこに触れる。途端に図が拡大され、それぞれの線の下に人名があるのが分かった。赤い光が点滅している下には東龍斗と書かれている。参加者の頭上には膜を形成している光が巨大な球体となって浮かんでいる。これでコロッセオのどこにいてもトーナメント表が確認できる。
「抽選の結果、トーナメント表はこのようになりました。参加者の皆さんが見ている分には自分の名前の上に赤い点滅があります。これは皆さんがトーナメントをどこまで進んだかを示すマーカーです。勝ち進む毎にそのマーカーも動いていきますので、頑張って下さいね。試合の進行は下段の左端から、その次に上段の左端からという順番です。それでは第2回戦第1試合を始めたいと思います!! 第1試合の選手以外はグラウンドからご退場下さい!! 選手のお2人は中央にお願いします!!」
龍斗はもう1度カードを見た。自分の名前があるのは下段の左から2番目。その線は左端にある線と合わさって1本になり先へと続いている。
(と、いうことは……俺は第1試合か)
カードを仕舞った龍斗は中央へと歩いていった。
夜を思わせる濃紺のローブを身に着けた男。胸の中央部には透明な石が月のように輝いている。左手に持つ短い棒にも同じような石が嵌めてあった。棒には華美な装飾が施されているが、それは単なる飾りではない。短棒はワンドと呼ばれる魔法具で、その装飾には魔力増幅の効果がある。石も魔法石と呼ばれるものである。
魔法石は自然の中に存在する魔力が凝縮、結晶化したもので、魔法を使う際の補助として大いに役立つ物である。またほとんどの魔法石には属性がある。属性持ちの石に魔力を通すと、その属性の魔法の威力が格段に上がるのだ。例えば、龍斗と対峙している男のワンドには炎属性を表す赤い魔法石が嵌まっている。これに魔力を通して炎属性の魔法を発動した場合、何も使わない時の5倍は威力が変わるのだ。またワンドや魔法石を使うことによって本来必要な詠唱を省略する事も出来る。
無論この男は、大陸では一般的な魔法を用いて戦闘をする者、即ち魔術師である。
(さて、本格的な魔術師を相手に、俺の術がどこまで通用するのか……)
和服姿で腕を組む龍斗は静かに相手を見据えた。因みに今回は太刀『東雲』を背負っていない。使わない武器を持っていても意味がないので、宿屋の部屋に置いてきた。
「それでは第2回戦第1試合を始めます!!」
進行役の宣言が響いた後、男はワンドの中央を持った左腕を前に出してきた。そのまま静かに言葉を紡ぐ。
「私の名はアゲート・パウロニア・ジャスパー。見ての通り魔術師だ。して、貴方は」
相手の名乗りに応じるのは大和の礼儀。何の表情も出さずに龍斗が応えた。
「東龍斗。近接格闘もあるが……一応、魔法だな」
「ほう、そうですか。では魔術師同士、正々堂々――」
ゲオハルトの言葉は途中で止まった。代わりに目が大きく見開かれる。龍斗が何か動いたわけではない。ただ腕組みをして立っているだけ。だがゲオハルトにはその姿が2倍にも3倍にも大きくなったかのように感じた。それは龍斗から放たれた威圧感故のものなのだが、それをアゲートが知る由もない。
「……流石にバトルロワイヤルを勝ち残った人間。そりゃ覇気ごときで倒れるわけないわな」
「な……何をした……!! 炎の精霊サラマンダーよ!! その偉大なる御力を我に与えたまえ!! 眷属に与えしその力、その業火を今ここに示せ、『フレイム・バーナー』!!」
「ゆく川の流れは絶えずしてしかも元の水に非ず、其は全てを押し流す怒涛、『鉄砲水』」
アゲートが持つ棒の装飾が光り出し、彼の正面に1つの魔法陣が現れる。更に、赤い魔法石が光を放つと魔方陣が赤く染まり、人を丸ごと飲み込むような大きな炎が龍斗に向かって真っ直ぐ進んでいく。
対する龍斗は、手印を組んだきり暫くは動かなかった。相手の詠唱途中から呪文を唱え、相手とほぼ同時に魔方陣を展開させた。アゲートの赤に対し龍斗の青く光る魔方陣からは、言葉通り人どころか家ですら流れていきそうなほどの大量の水が炎に向かって進んでいく。
「なっ、なんて早さだ……ワンドの魔力増幅、魔法石の力まで使って……」
水蒸気を上げながらも炎と拮抗、いや、徐々に飲み込みつつある水流を見てアゲートは驚いた。
アゲートは勇気、ジャスパーは生命力とか自然の回帰とかそんな意味だそうで。