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龍の逆鱗  作者: 銀狼
武闘大会編
31/92

第31話:第203回エルグレシア王国国王主催セトラベルク春季武闘大会 ……通称『春闘』

「それでは大変お待たせ致しました!! これより、第203回エルグレシア王国国王主催セトラベルク春季武闘大会を開催いたします!!」

 壇上に上がった男の声に、コロッセオ全体から大歓声が沸き上がった。その拍手と声量の大きさに龍斗は顔をしかめた。

 まず1回。1拍置いて3連続、男の手の動きに合わせ、全員が同じタイミングで手を叩いた。それと同時に会場に響く声も治まった。

「なんなんだこの茶番は……」

「……そう仰らずに」

 思わず口に出た龍斗の呟きに、苦笑しながらレイアが言った。

 龍斗がいるのは闘技場(コロッセオ)の中の観客席に最も近い場所。参加者は全員、戦いの場となるグラウンドの中にいる。一方参加しないマーティス姉妹は壁を隔ててすぐ後ろ、観客席の最前列に座っていた。3人は観客や他の参加者たちの熱気に馴染めず辟易してしていたが、続く注意説明に気を引き締めた。

 音量を上げる魔法を付与した道具を使用しているので、男の声はコロッセオ中に響く。

「それでは毎年恒例の口上ですが、ルール説明をいたします!! ルール説明をいたします!! 大事なことなので2回言いましたよ!! まず戦闘方法ですが、これは総合戦闘、即ち自由です!! 剣でもハンマーでも拳でも魔法でも、とにかく自由です!! 得意な攻撃で自由に戦ってください!! なお武闘大会中、このコロッセオには王国魔術師団の方々による特殊結界が張られております。これによりコロッセオ内の戦闘は管理戦闘、即ち致命傷を負っても死ぬことの無い、一定の安全が確保された戦闘です!! 各々の力を存分に発揮して下さい!!」

 龍斗以外の参加者から歓声が上がった。

(やかましい……ああ、イライラする!!)

 龍斗は内に怒りを秘め、ただ眉を顰めるに留まった。



「それでは只今から春闘第1ブロック1回戦を行います!!」

 宣言と共に歓声が上がり、グラウンドでは剣を交える音、爆発音などが響き始めた。

「さて、この対戦形式でどうなるのか見物だな」

 のんびりとした口調で言った龍斗。彼が今いるのはマーティス姉妹のすぐ後ろにある観客席。抽選の結果第3ブロックにふられたため暫くは時間がある。特にすることもないので対戦が始まるまで他の対戦を見ておこうと思ったのだ。

 第1回戦はバトルロワイヤル。参加者50人が自由に戦い、最後に残った1人のみが次に進むことが出来る。この方法でベスト32を決定し、後は1対1によるトーナメント戦となる。総勢1600人の中からただ1人の頂点を目指す戦い。それがこの春闘なのである。ベスト16以上に残った者にはそれぞれの順位に合わせて一定の賞金、更に王国騎士団員としての勲章を与えられる。誰もがその栄光を手に入れるため、結界のお陰で相手を殺すことが無いというのもあって全力で戦っている。

「ふむ……本当に何もかもばらばらだな。魔術師も戦士もごっちゃか。剣は言わずもがな、鉄槌、槍、あれは徒手空拳か? 魔法も詠唱系が目立つが、強化系使ってるのもいるな。誰を相手に戦っても勝ち残れるような実力者、それを見極めようってか」

「そう言う事ですかね……龍斗様、これではあの戦法は無理なのでは?」

 ミーアが振り返り、龍斗にそう尋ねた。いつものように飄々とした態度で龍斗が言う。

「いや、予定通りあの戦法で行く。前衛陣は力とスピード頼り。魔法は威力大だがそれに比例して溜め、詠唱時間が長くなる。飛び道具は……基本狙いを定める必要があるからなぁ。やっぱ隙が出来るな。懐に入られたら終わりって奴がほとんどみたいだし。今回の50人だと誰かな……あ、あのでかい剣持ってる奴が残るかな」

「典型的な一般論ですね。それで言えば龍斗様は魔法が使えて接近戦も出来る。臨機応変に対応できるのでは?」

「それはそうなんだがな、レイア。俺は忍、真正面から戦うなんてのは本当は専門外なんだよ。だから姑息な手段を使うが……それだと実力は分からない」

「それで力を絞る、と?」

「ああ。接近戦は元から修行と経験があるからいいが、魔法はこっちに来てから得た力で経験に乏しい。経験を積むにもいい機会だろう」

「しかし、ご自分で仰った詠唱の隙が残りますよ」

「強化系の術で防御、回避する方法もあるし、いざという時は接近戦も辞さない。忘れてないさ、要は勝てば良い。終わり良ければ全て良しだ」

 と、その時、戦闘終了の合図となる銅鑼の音がコロッセオに響いた。

「試合終了!! 第1ブロックを制したのは大剣を振るうこの男!! マルス・ディンバートンだ!!」

 グラウンドに立つ1人の男に向けて会場中が歓声を浴びせた。その人物は龍斗が勝ち残ると予想していた人物だった。

「なるほど、あいつか……んじゃ、そろそろ準備しとくかね。次の次だし」

「お気を付けて」

「ご武運を」

 姉妹の声援を受け、龍斗は観客席を後にした。

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