表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の逆鱗  作者: 銀狼
邂逅編
16/92

第16話:果たしてこの濃霧に茜を射せるのか

「さて……んー、じゃあ、あんたらにしか出来ない事を頼むとするか」

 龍斗達3人は馬車で街道に出た後、丸2日かけてアサンの森を抜けた。今は森を抜けた先にある国、エルグレシア王国内にある旅亭の一室にいる。関門を通った時には既に空が赤く染まっていたため、今日これ以上動くのは無理だと判断したのだ。

 龍斗の言葉を聞いた女性2人は身を固くした。男性が女性奴隷に命じることなど基本的には1つしかないからだ。だがその予想は見事に裏切られた。

「先に言っとくけど、夜伽の相手しろとか言わんから、そう身構えるな。取り敢えず俺はあんたらの情報が欲しいんだがな」

「私達の……?」

「ああ、今後どう動くかに関わることだしな。てか、いつまでそこに突っ立ってる気だ、椅子あるだろ」

 旅亭の部屋はたいして広くはない。龍斗の傍にあるシングルベッド、反対側には壁に寄せられている木製の机、その下の空間にピッタリ納まるように作られた背もたれの無い木製の椅子が2つ。家具と呼べるものはそれだけである。というより、立ち歩くスペースを考えるとこれ以上は置こうにも置けない、といった感じである。

 龍斗は椅子を引っ張り出し、座るように促した。それだけで歩けるスペースが半減する。

「え、あの、しかし、私たちは奴隷ですので」

「いいから座れ。そっちが良くても俺が話し辛い」

 困惑する2人に軽い苛立ちを含め、命令口調でそう言った龍斗。それを聞いた2人は戦々恐々といった様子で椅子に腰かけた。奴隷にとって主の命令は絶対である。幾ら意に沿わぬことでも、命令されたことには従わねばならない。逆に命令が無ければ勝手に動くことは許されない。故に一般常識で言えば奴隷というのはモノ扱いである。その常識を持つレイア、ミーアにとって龍斗の行動は不可解だった。もっとも龍斗には何かおかしなことをしているという自覚は無い。奴隷の扱いという大陸の常識を知らず、ただ単に対等な人間として扱っているだけである。そもそも彼には彼女らの所有者であるという自覚がないのだが。

 龍斗はベッドの上で胡坐(あぐら)をかいて座った。鳶色と青色の目を正面から見据える。

「まずあんたらの事を聞きたいんだが……どっちがどっちか忘れたけど、確か姓が一緒だったよな。つーことは姉妹か?」

「あ、はい。私はレイアと申します。歳は今年で15になります」

「わ、私はミーアです。年は13です」

 透き通るような金髪に鳶色の目をした姉のレイアからは、とても同年代とは思えない大人びた風格を感じ取った。一方、妹ミーアの方は年相応といった感じで、全体的にまだ幼さが残っている。

(なるほどな、性奴隷用の呪いを掛けられただけのことはあるわ)

 改めて彼女らを見ると、髪や目の色、雰囲気、胸の大きさ等細かいところでは差があるものの、どちらも共通して言えることがある。即ち綺麗、可愛い、美しいと形容される容姿の持ち主であることだ。

「で? 2人は大陸出身か」

「えっと、それはこのランドレイク大陸出身という事でしょうか?」

「ああ、そうだな」

「でしたら違います。私達は別の――俗に北方大陸と呼ばれる大陸の出身です」

「え、ちょっと待て、大陸ってここ以外にもあるのか!?」

 龍斗は思わず身を乗り出した。まさかランドレイクのような巨大な陸地が他にもあるとは夢にも思っていなかったのだ。今まで発言していたレイアは龍斗の様子に少し気後れしたが、何とか気を戻して質問に答えた。

「はい……東西南北そして中央にそれぞれ1つずつ大陸がある、と教えられました。因みにこのランドレイク大陸はその内の1つ、東の大陸にあたります」

「そうか……いやぁ、広いなこの世界は。人間が住むには広すぎるんじゃないかねぇ」

 龍斗は詠嘆の声を上げながら態勢を戻した。腕を組んで上を向いたまま首を横に振る。が、しばらくしてあることに気付き、視線を2人に戻した。

「待てよ? 他所の大陸からここまでどうやって来た?」

 2人の目を交互に見る藍色の眼は、最終的に口を開いたミーアの青目で止まった。

「大きなガレオン船に、帆船に乗ってきました。お父さん、お母さん、リノにアルトにダルジオ、アレン、ポルドール……護衛の兵士や従者と共に何ヶ月も掛けて……なのに、なのに……」

 ミーアは途中から顔を下げ、両手で顔を覆いながら肩を震わせた。時折すすり泣く声が龍斗の耳にも届いてきた。レイアはそんな妹の肩を抱いてなだめている。ただならぬものを感じた龍斗はレイアに問う。

「……道中、何かあったのか」

「はい……ランドレイク大陸に向かう途中、私達が乗る船は海賊の襲撃を受けました。勿論、対策は十分にしておりました。善戦しましたがしかし、相手の力量が上回り……結果、ガレオン船は海賊に乗っ取られました。その時に……父を始め多くの方が殺されました。母や従者の一部は……奴らに犯された後に……っ、私たち姉妹と残りの従者、生け捕りにされた兵士たちは2~3の部屋に詰め込まれました。そして大陸に着くと同時に……生きている者は全員奴隷商人に売り渡されたのです」

 ミーアよりも気丈なレイアも途中からは目を固く閉じ、声を震わせながら語った。語り終わると唇を噛み、涙を流すまいと(まぶた)を更に固く閉じる。だが思いとは裏腹に彼女の眼尻から一筋の(しずく)が流れ、妹と同様に肩を震わせた。

 ……龍斗はそれをただ見守るしかなかった。

このタイトル、正直言って書き手である私自身に対する問いではないでしょうかね。感情移入しすぎたのかな?←

うーん、こういう会話だけの部分って結構難しいなぁ……精進あるのみですね。はい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ