ザコ帰る それぞれの想い
久しぶり?の更新です
side ガーグ
プルングの嬢ちゃんは、本当に光に包まれて消えちまった。
ザイツ、お前の師匠って一体何者なんだ。
「無事向こうに渡れたみたいですね。さて皆さんには、この魔石を渡しておきます。この魔石がある所に功才君達が戻って来ますから」
ロッキが俺達に寄越したのは、真っ黒な魔石。
(おいおい、この魔石、洒落にならねえ精霊力だぞ。こんなのは上級精霊が必死にならねえと無理だろ)
「ザイツ殿とプルングさんが帰って来るのは事前に分かるのですか?そうじゃないと魔石を安置して置く場所が難しいのですが」
確かにイントルの言う通り魔石を袋に入れている時とかに、ザイツ達が戻って来たら大変だろうからな。
「トロルさんは心配性ですね。大丈夫ですよ、功才君が来る時にはきちんとアラームが鳴りますし、功才君が戻ろうとしたら、魔石にカウントダウンが表示される親切設計になっています。ほら、私弟子思いの優しいお師匠さんですから」
「わ、分かりました。私達はそろそろ戻りますね」
イントル、良く言ってくれた。
俺もここから早く帰りてえ。
「もう帰っちゃうんですか?せっかくロッキさんの爆笑小咄を用意していたんですけどね。代わりに素晴らしいお土産を差し上げますよ」
そういうとロッキは俺達1人ずつに布袋を渡してきた。
「中味は開けてからのお楽しみですからね。皆様方には功才君がお世話になった様ですし。そうゆう事でGood-bye!!」
ロッキが指を鳴らしたかと思ったら、俺達は深い森の中にいた。
「ここは惑わしの森なのか?」
しかし何か違和感がある。
何よりこの森には見覚えがあった。
「セシリー、近くに精霊はいるか?いたらここがどこなのか聞いてくれ」
場所の予想はついているが…
「ガー君、ここエルフィンだよ。しかもお城の近くの森みたい」
確かに森の向こうにはエルフィンの城が見えている。
「そりゃ異世界から戻ってくるザイツ達を迎えるにはうちの城が一番都合が良いんだけどもよ」
頭を抱えたくなるってのは、この事だろう。
「ガー君、あの人って何者なんだろうね?」
「さあな。だけどザイツの師匠で俺達と敵対する立場じゃないのは安心だな」
「只ならぬ気迫を持った方でしたね。相対するだけで身がすくむ思いでした」
イントルは野生で生まれ育ったトロルだ。
その野生の勘でロッキの得体の知れぬ力に怯えたんだろう。
「自分はまともにしゃべる事ができなかった。あれは人なんだろうか?」
ハンネスの嬢ちゃんの疑問は、全員が感じたと思う。
しかし
「触らぬ神に祟りなし。深く追求しないの方が得策だ」
ロッキに、その気があれば、俺達を苦もなく瞬殺できていただろうからな。
side 栄華
「美才、ご飯よ」
「いや、食べたくない」
メリーちゃんが来てから美才はずっと、この調子。
部屋に入ると美才はベットの上で膝を抱えていた。
「功才のご飯を食べられるのも後何回もないのよ。功才は私達が土日休みの日にあわせて帰るんだって」
「なら、美才は土日ずっとお仕事をする!!」
私は美才の隣に腰を掛けた。
「こーらっ、大好きなお兄ちゃん困らせたら駄目でしょ?」
「お姉ちゃんは寂しくないの?お兄ちゃんにもう会えなくなるんだよ!」
寂しくない訳がない、今でも覚えている。
赤ん坊の功才が小さな手で私の指を握り返してくれた日。
小学生の時には、いくら頑張っても幼馴染みに追いつけないって涙ながらに相談してきたし。
中学生になったら、いつの間にか他人行儀な気遣いをする様になっていたわね。
「寂しくない訳ないでしょ?だからお姉ちゃんは功才にとびっきりのプレゼントを贈るの。可愛い弟が違う世界で頑張れる様にね」
side 財津 万才
「はい財津ですが。…なんじゃ栄華か。…なにっ!功才が帰って来た、しかも嫁連れじゃと。…ふむふむ、分かった。準備は儂と婆さんに任せておけ」
そうか、功才は嫁を連れて帰って来たか。
儂も栄華に負けぬ贈り物を準備しておくか。
次でいよいよ100話目です