ザコ帰る 山田先輩とメリー
side 功才
昔は想像もしなかったよな、大切な彼女が俺の部屋にいるなんて。
「子供の頃のコウサかっわいいー!栄華さんこの絵姿って後はないんですか?」
「功才のアルバムでそこまで喜べるのはメリーちゃんだけね。それでメリーちゃんは、どの写真が欲しいの?」
「1つだけ選ぶなんて無理無理ですよー。幼馴染みと一緒に写っている絵姿以外全部としか言えないです」
姉ちゃんは、俺に彼女が出来たら昔のアルバムを見せるのを楽しみにしていたらしい。
しかもメリーの食いつきが良いもんだから姉ちゃんはご満悦。
「分かったわ、可愛い義妹の望みならメリーちゃん用に新しいアルバムを作ってあげる。確か家のパソコンにデータが残っている筈だから」
「栄華お義姉さんありがとうございます。…でも家族で写っている絵姿は少ないんですね」
ちなみに俺の写真の撮影者は赤ちゃんの頃の撮影は両親、幼稚園から小学校低学年までは爺ちゃん達、小学校高学年から中学まで姉ちゃんと美才。
家族の集合写真は美才が泣く為に俺も写っているのも数枚撮っているけど、大多数の家族写真に俺は写っていない。
答えは簡単、家族写真は俺が撮影をしていたし、それを財津家それぞれのファンクラブの会報に載せるからだ。
「そんなの当たり前だろ。俺は昔から目立つのが嫌いなの。表舞台より舞台裏で動く方が性に合ってるんだから」
「功才は私の舞台を見に来ても、照明や大道具・小道具に興味を持っていたんもんね」
ちなみに美才の時は俺がきちんと見てないと美才が泣くから舞台に集中した。
「栄華さんも舞台に立つんですか?見てみたいなー。」
「私もメリーちゃんと一緒に演技してみたいな。功才は演技は上手いのに出る気が無いし。あのお父さんでさえ台本読みは功才に頼むぐらいなんだから」
正確には刑事ドラマの犯人役とかなんだけどね。
「私でもコウサが演技をしているかどうか分からない時があるんですよ」
「メリーちゃん簡単よ、功才は演技している時は…だから」
姉ちゃん、なんで肝心な所は耳打ちにするんだよ。
「えっ?そうなんですか。へっへーん、これでもう騙されないからね」
「ちょっ。なんだよ、それすっごい気になるんだけど」
「功才は知らなくていいの。それより貴方達は明日からどうすの?」
「とりあえず明日山田さんにメリーを紹介する。姉ちゃんと美才の休みが重なる土日に爺ちゃんの家に行って向こうに戻るつもりだけど」
「えっ!コウサ、お父さんとかお母さんに会わなくていいの?」
「…姉ちゃん達に伝言をお願いするから、それで良いよ」
あの人達も俺に会いたくないだろうし。
――――――――――
あの後姉ちゃんは取り留めのない話をして部屋に戻った。
「メリー、師匠から伝言とか無かった?」
向こうに戻るには師匠の協力がないと無理だと思う。
「あっ、そうだ。この球と鱗が必要なんだって。はい説明書」
メリーが渡してきたのは真っ黒な球と大きな鱗。
この鱗って、もしかしなくてまアレだよな。
"功才君この鱗は時空竜の生爪ならぬ新鮮な生鱗を剥がして加工した物です。ストラップとして使用すれば日本とオーディヌスの間でも携帯が使えるんでよす。しかも可愛いプチロッキ君の透かし彫りがしてあるんです。あまりの可愛らしさに日本でプチロッキ君がブームになると思います"
…時空竜さん、生鱗を剥がされたから泣いたんだな。鱗は全部で6枚、俺・姉ちゃん・美才・山田さん・爺ちゃんは確定だな。
後は予備として姉ちゃんに預けておくか。
とりあえず山田さんにメールを送っておく…
「それじゃメリー、もう夜も遅いし客室に案内するよ」
「やだ。メリーはコウサと同じ部屋で寝るの。離れたらまた会えなくなりそうで怖いだもん」
「俺の部屋はベットが1つしか無いんだって」
「メリーは同じベットでも構わないんだけどな。むしろウエルカムだよ」
確かに魅力的だけど、俺は恋愛ヘタレ紳士財津功才だ。
「分かったよ。俺が床で寝る、今日はゆっくりと話をするか」
「ならメリーも床で寝る。コウサにギュッとしてもらいながら寝たいの」
次の日、姉ちゃんは寝不足の俺を見て深い溜め息をついた。
side 山田
「山田さんちーす。隣にいるのが、あの、その、彼女のメリーです」
ザコ、男の方が照れてどうすんだよ。
「蓼食うう虫も好き好きってやつか、メリーさん、ザコが随分と世話になったみたいでありがとうごさいます。しかし良くこいつの鈍さに呆れませんでしたね」
「山田さん、なんか酷くないっすか?俺はどっちかつうと人の裏を読むの得意なんすよ」
「バーカー、お前は裏を読み過ぎなんだよ。もう少し自分に素直になれ」
「そうだよ、昨日だって一緒に寝たのにコウサは何もしてくれないんだから」
「ちょっ、メリー。今言わなくても良いじゃん」
ったく、尻に敷かれてやがるな。
「メリーさんそれは勘弁してやって下さい。ザコは大事な彼女に半端な真似をしたくなかっただけですから。まっ大方まだ人の親になれる自信がないとか考えたんだろ?お前は変な所で古臭い考えしてるよな」
「古くても良いんす。俺はまだ親になれる程、人間が出来ていないんすよ。向こうに行って実感したんです、自由にするって事は全部自分で責任を背負う事なんだって」
「へー、一人前の口がきける様になったじゃねーか。…しっかりやれよ、向こうで笑って暮らせる様にな」
「あ、あざっーす。向こうに戻る日は連絡しますんで」
「まっ、向こうの生活がキツくなったら戻って来いよ。バイト、優先して雇ってもらえる様にしとくからよ。それじゃメリーさんちょっと捻くれた奴ですけど、中身は俺が太鼓判を押しますからザコの事頼みます」
side メリー
ヤマダさんはそういうと私に頭を下げてきた。
ヤマダさんと別れた帰り道での事。
「コウサが自慢する理由が分かった気がするな。初めて会った女の子に後輩の為に頭を下げるなんて中々出来ないよ」
「あの人に会えたから前を見れる様になったんだ。いくら感謝しても足りないくらいだよ」
それならメリーも感謝しないとね。
ヤマダさんはコウサをこんなに素敵にしてくれたんだから。
山田先輩を別作品の主役にしたくなってきた。