ザコ帰る ザコと山田先輩
出番は少ないのに人気な山田先輩の登場です
side 夏海結
学校の昼休み、私は何時もの様に屋上へ向かった。
「あれ?今日は小百合だけなの?勇牙と隼人は?」
「お2人方共、購買部によってから来るそうです。…私達と功才さんは元に戻れないんでしょうか?家の者の話では功才さんは午前中以外は外に出られていないみたいですし」
…つまり功才は私達を避けているって事か。
「分からないよ。この間、功才に会った時変わっていてビックリしたしね」
前の功才は、どこかオドオドしていて卑屈な感じがしていたんだけど、この間会った時には別人の様に大人びて落ち着いていたんだよね。
「神野さんも驚いていました。追跡のプロの自分から逃げただけじゃなく、あの時の功才さんはきちんと間合いをとっていたそうです」
神野さんは三条財閥に仕えている人で、普段は探偵みたいな事をしているらしい。
「私達じゃまた警戒されちゃうかもね。功才が警戒をしない相手って誰かな?」
「栄華さんや美才ちゃんとは今も仲良くされているそうです」
栄華さんはともかく、美才ちゃんは昔から功才にベッタリだったからね。
「後は…ほら、あの人は?功才の先輩の山田さん。私今日でもバイト先のコンビニに訪ねてみるよ」
「それなら私もご一緒します」
「小百合は今日習い事あるじゃん。勇牙を連れて行ったらケンカになりそうだし、隼人は自分が認めてない人には冷淡でしょ。だから私1人で行くよ」
side 山田
そいつが来たのは俺がコンビニでバイトをしている時だった。
「山田さん、お久しぶりです。私を覚えていますか」
「ザコの幼馴染みの夏海結さんですよね」
今はバイト中、相手はお客様だから敬語が基本。
「今少しだけお時間よろしいでしょうか?功才の事なんですが」
―――――――――――
「ザコが帰って来ている?」
「はい。でも功才は私達を避けているみたいであまり話はできませんでした」
ザコがお前達を避けたのは今に始まった話じゃないと思うんだけど
「しかし何でザコが帰って来たのが分かったんだ?」
「三条財閥で功才の携帯の電波をチェックしていたんです」
おいおい、それじゃまるで犯罪者扱いだろ。
「それであの警戒心が強い奴と、どうやってコンタクトをとったんだ?」
「三条財閥の人に功才の家を見張ってもらって、買い物の帰りに待ち伏せをしました」
…おい…そりゃザコも避けるよ。
「それで何で俺の所に来たんだ?」
「功才は山田さんの事を信頼しているみたいですから、功才に何があったか聞いて欲しいんです」
「ザコが変わったってのか?」
「大人びたっていうか雰囲気が変わっていました。功才が遠い存在になった感じがして…」
ザコが大人びたか…
「分かった。ザコに電話してみるよ」
side 功才
山田さんから電話が来た、さすがにあの人の呼び出しを無視する訳にはいかない。
「山田さんお久しぶりです。心配をおかけしたいみたいですいません」
「誰も心配なんざしてねえよ。…ザコ、いい面になったじゃねえか。半年間なにがあった?」
山田さんなら話しても大丈夫かもな。
……
「はっ!?異世界だ?ザコ頭は大丈夫か?」
やっぱりそうなるよね。
「最初は自分でも信じれなかったんですけどね。ガチでマジなんすよ。一応しょぼい魔法は使えるようになったんすよ」
山田さんにアイスキューブ、フラッシュ、シールドボール、アローファクトリーを見せてようやく信じてもらえた。
「確かに不思議な力だし、体もごつくなったみたいだしな。他には何か変わった事はあるのか?」
「彼女ができたんすよ。後は俺の居場所を作る事出来たのが一番っすね」
こっちに帰って来て実感した。
俺の居場所は日本じゃなくオーディヌスにある。
「へー女か?写メとかないのか。……おーザコ大金星じゃねーか。精々、大事にしてやりな」
「ありがとうございます。メリーが迎えに来てくれたら紹介しますよ」
「まさかはお前の彼女に会える日が来るなんて想像もしなかったよ。そういや今日お前の幼馴染みの夏海さんがバイト先に来たぞ」
「結がですか?あー俺があいつ等を避けているから山田さんを担ぎ出そうしたんすね。なんかすいません」
「まっ、そのお陰でお前にと再会できたんだから良いじゃねーか。で幼馴染みとは会う気ないのか?」
「三条財閥が動いたみたいなんすよ。だから下手な言い訳は通用しないと思うんす。それにあいつ等はオーディヌスの話を信じるとは思えないっすから」
「まっ、確かに異世界に行って戻って来たなんて話は誰も信じねーわな」
「そうっすよね。こうしていると向こうでの日が夢みたいに思えてくるんすよ」
命懸けの日々だったけど生きている実感があった。
本当に俺だけを必要としてくれる人にも巡り会えた。
「やっぱり戻るのか?」
「はい、帰るっすよ。あそこでは財津家の長男や幼馴染みの付属品じゃない、俺だけの居場所があるんすから」
「そっか、でも帰る日は教えろよ。見送りに行ってやんよ」
「それなら帰る日は土日にしときますね」
「余計な気は使わなくていい。ザコお前なんか欲しい物はないか?餞別代わりになんかやるよ」
「何もいらないっすよ。山田さんに会えただけで十分なんすから」
「後輩の癖に変な気を使うんじゃねーよ。まっ笑える物でもくれてやら」
その後、山田さんと色々な話をした。
くだらない話から将来の夢まで、色々と。
山田先輩の名前を決めてなかった