ザコ帰る 幼馴染みとの再会
80話を越えてようやく再会です
side 三条 小百合
「功才さんの携帯から反応があったんですか?」
「はい、先日わずか数分でしたが携帯の電波をキャッチしました。発信先は田園調布にある公園です。今数名の者が対象者の家を見張っております」
「ありがとうございます。何かあったら教えて下さいね」
みんなに連絡しなくてはいけませんね。
side 功才
姉ちゃんか美才のストーカーなんだろうか。
眼鏡を掛けたサラリーマン風の男が俺の後をつけてくる。
撒くのは簡単だけど、向こうに行く前に心配の種は無くしておきたいよな。
幸いにここは俺の地元。
相手を陥れるぐらいは簡単だ。
ここにはお金持ちが多くセキュリティーが、しっかりとしている。
だから、
まずは思いっきりダッシュ。
んでもってスピードを落とさずに角を曲がって電柱に隠れる。
男が近くの家の裏門に近づいた時に
「アーススタン」
男はよろけて裏門に手をつく。
そこの家は人は社長さんで、ガードマンが在駐してるんだよね。
男がガードマンに言い訳をしているうちに俺は逃げるのみ。
買い物を済ませて家に帰って来たら、何で勇牙が家の前にいるんだ?
なら裏門は…隼人が待ち構えていやがる。
(何で俺が帰って来たのが分かったんだ?それよりどうする?持久戦に持ち込むか)
「財津功才さんですね。お嬢様がお待ちです、ご同行願えますか」
先の男が俺に話しかけて来た。
お嬢様って事は
「あちゃー、三条財閥関係の人だったんすか。良く俺の居場所が分かったすね」
「最近の携帯は電波が特定できるんですよ」
普通、そこまでするか。
いや、この人達の意地もあったんだろうな。
ガキ1人捜せないってのは財閥の名折れってか。
「個人情報は保護しなきゃいけないんすよ」
話をしながらも相手との間合いをとっていく。
「できたら大人しく従って下さい。お嬢様のご友人に怪我はさせたくないので」
脅しかよ。
それなら……
「いやー、お手数はかけたくないから、自分で歩いて行くっすよ」
やばい人には平身低頭。
下手に怪我とかさせたら面倒な事になりそうだし。
俺が逃げようとした時
「お嬢様、財津様を確保しました。早くお嬢様にお会いしたいとの事で…ええ、財津様のお宅の近くにおりますので」
男はニヤリとしながら電話をきり
「お嬢様は大変喜ばれていた。よ・も・や・お嬢様を泣かす様な真似はしないですよね」
「いやー三条さんは、見た目と違って芯が強いんすよ」
こうなりゃ、フラッシュで目潰しをして逃げてやる。
「神野さん、ご苦労様です。功才さんお久しぶりですね」
小百合にフラッシュは使えないか。
「これはこれは小百合お嬢様、相変わらずお美しい」
「小百合お嬢様?功才さん、どうなされたんですか?」いやー、功才さんは逃げたいんですよ。
「よお!功才元気そうじゃねえか」
勇牙も来たか。
「勇牙、今日は絶好のツーリング日和だぜ。愛車が走りたいって泣いてるぞ」
ちなみに俺の心も泣いている。
「久しぶりに幼馴染みに会うのにツーリングに行く程、勇牙は薄情じゃありませんよ。功才も久しぶりに会う僕達から逃げたいとか言わないですよね」
隼人は、いつの間にか読心術を身につけたんだろ。
「隼人、言わなくても通じるのが幼馴染みじゃね?」
つまり、俺の気持ちを察しろ。
「功才、良かった。無事だったんだね」
結、かなり命懸けな戦いをしてたんだぞ。
無事なのは、はっきり言って奇跡なんだよ。
「いやー、みんな久しぶりだな。元気そうで何より。安心したよ」
「それでお前は今までどこに行ってたんだ?携帯には出ないメールも返さねえ。随分心配したんだぞ」
勇牙、オーディヌスには電波がないんだって。
「なんつーか、電波が届かないぐらいに遠い場所だよ」
「外国ですか?でも出国履歴はなかったみたいですよ」
そりゃ隼人、ビルの間から行ったんだから仕方ないだろ?
「もう勇牙も隼人も久しぶりに会ったのに尋問みたいな真似は止めるの。ねっ久しぶりにみんなでカラオケに行かない?」
「あー、俺はパス。今は半端じゃなく忙しいんだよ。それに俺にも彼女ができたんだ。他の女と遊びに行くのは駄目だろ?」
メリーが心配しているのに、カラオケなんかに行く気にはなれない。
それにばれたら絶対に矢が飛んでくる。
「えっ?功才に女?騙されてんじゃないのか」
「いや勇牙、功才が夢を見た可能性もあります」
「隼人、半年も見る夢なんてねえだろ?勇牙言っておくけども一緒に写ってる写メもある!」
俺は比較的に大人しめの写メを見せた。
「功才、この女は外国人か?……いくら払った?」
勇牙、いくらって…やっぱりそう思うよね
「名前はメリー、メリー・プルング。正真正銘俺の恋人だ。なんで金を払う必要があるんだよ」
「そりゃお前、こんな美人が功才と付き合う訳ないだろ?お前鏡がない国に行ったのか?」
くっ、正論だけに反論できないのが悔しい。
「隼人…功才が言ってる事は本当だと思うよ。この娘すごい幸せそうだもん。……うわっ、こんなにベッタリくっついて。小百合見て見て、ほっぺにキスしてる。功才ったらニヤケちゃって」
「功才、分かりました。外国に行って彼女に振られたから戻ってきたんですね」
隼人、その同情の目はなんだ。
「違うっつーの。振られてねーよ。いいか3週間か4週間したらキチンとメリーを紹介してやる」
正直言えば隼人の言葉に乗っかりたかったけども、メリーの事だけは否定したくない。
でもメリーが気付いてくれなきゃどうしよう。
side メリー
シャルレーゼ様が馬車を貸してくれたお陰でデュクセンへの旅は順調に進んでいた。
(コウサ、メリーがいなくて寂しがってないかな?コウサ、ちゃんとご飯を食べてるかな?)
いつもならコウサの事を思うだけで心がポカポカするのに、今は心配で胸が苦しい。
コウサに会えたら、思いっ切り甘えて、たっぷり2人っきりの時間を堪能するんだから。
side 美才
お兄ちゃんがピンチだ。
あの4人組がお兄ちゃんを取り囲んでいる。
(今日はお兄ちゃんに膝枕してもらいながら耳掃除をしてもらう予定なのに!!)
美才のお兄ちゃんバッテリーは、まだ満タンじゃないんだからねっ。
「お兄ちゃん、今日は美才にプリン作ってくれる約束でしょ?お家に帰るわよっ!!みなさんお兄ちゃんは長旅の疲れがとれてないのでまた後日にお越し下さい」
「こらっ、美才。耳を引っ張るなよ。ちゃんとお兄ちゃん歩くから……みんな、とりあえず今日の所はごめん」
(美才、ありがとう。助かったよ、あいつらにオーディヌスの話をする訳にはいかないからな)
(話てもどーせ信じないわよ。お兄ちゃん強くなったんでしょ?今まで散々上から目線で見下されてきたんだから、見返してやればいいのに)
(そんなの必要ねえよ。見下すとか、見返すとかくだらねえ。時間の無駄だよ)
そう言うお兄ちゃんの顔は、とても大人びていた。
とりあえず、美才はお兄ちゃんをとったどー!
最初は見返すのも有りかと考えていましたが、命懸けの戦いをしたり、王族とかと関わってきた功才にそれはしないと思って、この展開にしました。