ザコのエルフィン滞在記 ~さよなら~
この話が区切りになります
side 功才
四階も同じく一本道。
ただ違うのは試練の間の扉に細かい装飾が施されており、どこか神殿の扉を連想させる。
そして部屋の中は白一色で統一されていた。
部屋に入った途端、強烈な光が俺とメリーを包む。
「メリー、大丈夫か?ってメリー?」
後ろにいる筈のメリーの姿がない。
「彼女ならここです」
声がした方を見ると、神官みたいな衣装を着た女性と十字架に縛れて猿ぐつわをされいるメリーの姿があった。
気絶をしているのかメリーはピクリとも動かない。
「彼女を助けたいですか?しかし彼女の心を読むとこんな不安があります
"コウサは元の世界に帰りたいんじゃないかな"
今なら彼女の中から貴男の記憶を消してあげますよ。これほど魅力的な女性です、きっと素敵なバートナーを見つけれる筈です」
女は冷たい目で俺をみつめてくる。
つくづく嫌な試練ばかりだよな。
欲望や戦いでフルイにかけたあげくに、相手の不安や不満をつきつけるか。
「そうだよ。メリーなら俺よりも格好も良く金持ちな彼氏をみつけられるさ。だからどうだってんだ!貴女なんかに決めれる筋合いはねぇ。俺とメリーの事を決めれるのは俺達だけなんだよ。それに俺以上にメリーに惚れる男はいないっ」
「それは随分と傲慢な話じゃないですか?貴男が惚れてるから、なんだって言うんですか?」
女の視線がさらに冷たい物となる。
「惚れてるから、心の底から愛してるから、俺は全力でメリーを幸せにする。俺の居場所はメリーの隣なんだよっ!」
少しの間の後
「はーい合格です。お姉さん久しぶりの熱い告白に感動しちゃいました。もう彼女さんなんて涙を流しちゃってますよ」
へっ?
「え、えー。メリーは気絶してたんじゃ?」
女の視線は先の冷たい物から生暖かい視線に変わった。
「誰も気絶しているなんて言ってないじゃない。相手の言動から不自然さを見抜く観察眼、欲にまみれた後を見通す先見性、初めて見る魔物の弱点をつく冷徹さ。そんな貴男でも心の底から愛している彼女のピンチには見落としがあるんですね」
この女、いや1つの意識体って所か。
それが姿形を変えて試練を行っていたのかよ。
「でもメリーは、動かなかったじゃないか」
「だって私が命令しましたもん。彼の貴女への気持ちを確かめるから気絶してるフリをしなさいって、教えたら彼氏は精霊魔法の餌食になっちゃうよって」
騙された、この俺が一杯食わされた。
つーか、ドッキリじゃないんだから、勘弁してくれ。
「貴方達は試練に見事合格しました。上の階に脱出用の魔法陣がありますので、そこから出て下さいね。それではお邪魔虫は消えまーす」
残されたのは顔を真っ赤した俺ともの凄いご機嫌なメリー。
「コウサ、コウサ、メリー感動しちゃった。メリーの居場所もコウサの隣なんだから」
同刻 イントル
「彼女を助けたいですか?しかし彼女の心を読むとこんな不安があります
"本当に自分はイントルと種族の壁を越えれるのか"
今なら彼女の中から貴男の記憶を消してあげますよ。これほど魅力的な女性です、きっと素敵なバートナーを見つけれる筈です」
「確かにその不安は私にもありました。不安は考える程に増すものなんです。だけどもハンナが側にいる程に愛しさがましてきます。そして気づいたんですよ。大事なのは何か捕らわれるじゃなく側にいたい、好きだって気持ちなんです」
同刻 ガーグ
「彼女を助けたいですか?しかし彼女の心を読むとこんな不安があります
"ガー君とは立場も寿命も違う"
今なら彼女の中から貴男の記憶を消してあげますよ。これほど魅力的な女性です、きっと素敵なバートナーを見つけれる筈です」
「ごちゃごちゃうるせえんだよ。早くセシリーを解放しやがれ。俺はセシリー以外の女に惚れる気なんざ更々ねえ。そいつがいれば王族だろうが冒険者だろうが、どんな荒波でも2人で笑いながら乗り越えれるんだよ」
…………
「ガー君、最近どうしたの?私の魅力にようやく気付いてくれたとか?」
「お前には昔から惚れてたよ。こないだ曾祖父さんに叱れたんだ、男が先の不安を理由にしてゴチャゴチャ言い訳するんじゃねえ!男だったら惚れた女を今抱きしめろ。先が不安なら絵姿に意志を宿す技を教えてやるってな」
side 功才
5階に上がるとガーグさん達やイントルさん達と合流できた。
みんな同じ目にあった様で男性は気まずそうで女性は喜色満面になっている。
「あの扉を開けるとゴールですね」
「ああ、随分と人騒がせな塔だったな」
「とりあえず戻って休みましょう」
精神的に疲れた男性陣
かたや
「セシリーさん、ハンナ、最期の試練で何て言われた?メリー嬉しくて思わず泣いちゃった」
「メリーそうだよな。自分も嬉しき泣きしたよ」
「この塔すごいよね。あの朴念仁ガー君に熱い告白させるんだもん」
ガールズトークの真っ最中です。
「おらっ、話は塔から出てからにしやがれっ」
扉は至ってシンプルな物、多分もう試練はないと期待したい。
そして扉の先には
「ガーグ、待ちわびたでおじゃるよ」
金髪ガエルがいた。
「てめえエンリトどうやって、ここに」
「脱出用の魔法陣に魔力を流し込んで来たんでおじゃるよ。薄汚い他種族をオーディヌスから消し去るんでおじゃる」
エンリトは懐から石を取り出すと自分と俺達の間に放り投げて呪文を詠唱し始めた。
やがて石からゆっくりと光が溢れ出す。
エンリトは結界に守られているみたいだ。
(なんだ?あの光は?光に触れた石が消えた!あれは多分)
「セシリーさん、ガーグさんを頼みます、口は悪いけど優しい人なんで。ハンナさんイントルさんと幸せになって下さい、それとメリーをお願いします。
イントルさん貴男は周りに禄な大人かいなかった俺が初めて憧れた大人でした。
ガーグさん兄貴みたいに思ってましたよ。メリー……どこにいてもお前だけを愛している。そして……さよなら」
大事なみんなに、あの光が届く前に俺は走る。
目標はあの石
「この石を囲っちまえば平気だろ。シールドボール」
side メリー
シールドボールが光で満たされた。
でもコウサがいない。
シールドボールの中には石だけ…
やだ
コウサがいない
やだ、やだ、やだ
コウサッ―――!
これで終わったらヒンシュクだろうなー。
ちなみ今回はキャラに感情移入してしまいました