幕間 先輩と幼なじみ
出番がないのにランキングは3位の山田先輩の幕間です
side 山田先輩
「あれっ、店長今日ザコの奴休みですか?」
「山田君、それがさ携帯に電話しても出ないんだよ、履歴書には家の電話番号は書いてないし」
「ったくザコの奴サボリかよ。明日俺が叱っとくんで勘弁してやって下さい」
この時は俺はザコが体でも壊したんだと思っていた。
ザコがバイトをサボる事なんて今までなかったし、むしろ他のバイトが休んだ時にヘルプで来るぐらいだったし。
次の日
「おうっ、ザコはいるか?」
「あっ、山田先輩ちーす。それがザコの奴、昨日から来てないんすよ」
「はっ?あの学校とバイトを生き甲斐にしてる奴がか?悪い物でも食ったんじゃねーだろうな?」
「携帯に電話しても電源が入ってないみたいですし、家電は誰も知らないんすよ」
ザコの担任に聞いてみても結果は芳しくなかった。
家に電話はしても留守電だったって話だし、プライバシーの保護とかで電話番号を聞く事は出来なかった。
まっ、先生があそこの一家の電話番号を漏らしたらマスコミで叩かれそうだもんな。
彼奴の事だ、美才ちゃんに頼まれてマネージャーの代行でもしてんだろ。
一週間たってもザコはバイトどころか学校にも顔を出す事はなかった。
周りでは家出とか騒いでいるけども、そうは思えない。
可能性として高いのは入院か。
ザコの話じゃ、芸能界じゃ財津家は4人家族で通っているみたいだし。
それから俺はザコの家の電話番号を調べてみたが、全く分からなかった。
ザコの親父さんの事務所に電話してみたら
「功才?所長にはそんなお子さんはいませんよ」
なんてぬかすし。
成果をあげられないまま、1ヶ月がたった。
ネットで調べてみたら、彼奴の親父さんは映画のロケをしているらしい。
「すいません、サインお願いしていいですか?」
本来なら顔も見たくない奴だけどもファンを装って近づく。
胡散臭い笑顔でサインを書いてる男に小声で確認をする。
「俺は功才の先輩なんですけど、彼奴は入院しているんですか?それとも家出ですか?」
「何を言っているのかわらかないですが。功才とは誰の事でしょうか」
「俺の可愛い後輩です。学校とバイト先のね、彼奴ここ1ヶ月学校にもバイト先にも顔を出していないんですよ。マスコミが知ったら面白がるでしょうね、財津家に長男がいて、しかも父親は1ヶ月も行方不明に気づかなかったんなて」
「あの馬鹿息子!我が家の立場を考えられないのか?それで君の目当てはなんだい?金かコネか女か?」
そりゃこんな親がいたら卑屈にもなるわな。
「言ったでしょ?俺は後輩を心配しているんだって。俺の要求は彼奴を探す事と居場所か分かったら教える事、それだけです」
俺は携帯番号を書いた紙を突きつけて、その場を後にする。
あの親父は、本当に功才の父親なんだろうか?
次の日には財津功才を転校にしちまうし。
――――――――――
「山田、お前なんかやらかしたか?勇牙さんがお前に会いたいんだとよ」
俺に話し掛けてたのは、マッドエンペラーって族に入っているダチ。
「何もやってねーよ。多分ザコが行方不明になっている件だろ」
待ち合わせ場所に行くと、美男美女が勢揃いしていた。
(こん中いたら、ザコが引け目感じるのは当たり前か)
「それで何の用だ?」
「惚けないで下さい。貴男が功才と親しくしていたのは分かっています。功才が家出する先に思い当たる節はありませんか?」
こいつが三条隼人か。
家出確定はないだろ?
「お願いします。唯も気に病んでいますので、少しでも手掛かりが欲しいんです」
でこれが三条小百合と。
功才のこの字も出しやがらねえ。
「小百合止めてよ。私が夜出歩いたのがいけないんだ。あの時すぐに誰かを呼んでれば良かったのに」
でこれが夏海結と。
これまた自分の反省しかないのか?
「ここでこうしても埒があかねえよ。俺が仲間と探してくる」
最後は鷹丘勇牙と。
ちなみに世間一般では、それを暴走行為と言う。
「でもどうして功才さんは私達に何の相談もしてくれなかったんでしょうか?」
「功才は昔からそうでしたよ。1人で抱えて1人で解決しようとして。今に始まったじゃありませんよ」
「やっぱり強引にでも美星学園を受けさせれば良かったんだよ」
「あん時も功才は1人で決めたろ?あの馬鹿、俺達に心配ばかりかけて」
いや此奴等笑わしてくれるね。
「へー、貴方らでもザコの心配が出来るんだ?こりゃ意外だ」
「年上とはいえ聞き捨てなりませんね。功才を心配しているから僕等は忙しい中集まっているんですよ?」
「はっ?心配しているのはそこの夏海って女の事だろ?お前等からは、一言もザコを心配する言葉を聞いてねえぜ?ザコが1人で解決?お前らのこった相談した所で私達が助けてあげるとか言ってんだろ?何で彼奴がお前らと違う学校を選んだから教えてやろうか?お前らの取り巻きが文句をつけたんだとよ。美男美女4人組の邪魔だってな」
「おい、テメエそれを誰から聞いたんだよ?適当な事を言うとタダじゃおかねえぞ」
「聞いたのはザコ本人からだよ。つうかお前ら最近ザコと連絡とったか?違う学校に慣れたかとか?最近何をしてるかとか?まっ、バイト先に顔を出さない所をみれば分かるけどな」
(仕方ないか、こいつらは周囲が自分達を必要とするのが当たり前なんだろうから)
「教えてやるよ。ザコは1回もお前らの悪口も自慢もしなかったよ。ただ大切な友達としか言ってねえぜ。今お忙しいみたいだけども、その中に何人ザコみたいな奴が何人いるんだ?きちんと財津功才が自分にとってどんな存在だったのかを考えてみろっ!
……まっ身近にいすぎた大事な者ほど価値が解らねえのかもな」
俺にとって、ザコは気を使い過ぎる可愛い後輩でしかないんだし。
次からは本編 頑張ります