幕間 トムとレミその後
女性の方から、リクエストが多かったトムとレミのその後です。
side トム・チーキーン
マクスウェル家の領内にあるゴーズラと言う名の町に来て2週間がたちました。
僕の新しい職場はゴーズラの近くにあるミスリル鉱山。
幸いな事に新しいゴーレムも順調に成長しています。
………だけどレミには、まだ会えていません。
レミの母親から
「トム君、ごめんね。あの娘よっぽど怖い目に遭ったみたいでお父さんにも怯えているのよ。トム君の事は様子をみて、私から伝えておくから今はレミを待ってあげて」
そう言われたんです。
情けない事に今の僕に出来ることは鉱山に潜る事だけ。
――――――――――
「兄ちゃん、兄ちゃんの使う人形は随分と便利だな。俺達の倍以上の速さで採掘するんだからよ」
「ドガンさん、僕の名前はトムです。それとこれは人形じゃなくてゴーレムですよ」
ドガンさんは、この鉱山の採掘主任、僕に色々と気を使ってくれる。
「細かい事は気にすんな。その人形のお陰で俺達は楽をさせてもらっているんだからよ」
「でも、このゴーレムはまだまだ小さいんですよ。ゴーレムも僕も、もっと体格を良くしないと」
「確かに兄ちゃんは体が細いからな。男は力がなきゃいざって時には大事な者を守れねえで後悔するぜ」
後悔は充分しましたよ。
だから後悔はやめて僕もゴーレムも成長するんです。
side レミ
「こーらっ、レミちゃん。また、ご飯残してる」
「ドガンさんすいません、あまり食べたくなくて」
この人は私の担当ナースのリリー・ドガンさん。
ドガンなんて厳つい名前をしているけども、とても可愛らしい女の人。
「まっ、食べたくない時は誰にでもあるよね。私も今朝は食欲なかったし」
「ドガンさんが食欲ないなんて珍しいですね」
「本当だよね、これは午後からは雨だな」
ドガンさんはアゴに手を当ててわざとらしく、しかめっ面を作ってみせる。
「具合が悪いんですか?」
「あー、違う違う。馬鹿親父が昨日遅くまで飲んだくれてさ。何でも親父が働いているミスリル鉱山にゴーレムを使う採掘師が働きだしたみたいで、親父がその子を気に入ったらしくて家に連れて来てお酒に付き合わせていたのよ。他の採掘師も来たからうるさくて寝れなかったのよ」
ゴーレムを使う採掘師?
まさかトム?
「その男の人の名前は?どんな人でしたか?教えて下さい!!」
「確か名前はトム、採掘師には見えない細い男の子。でも良い目をしてたわ」
トムだ、絶対にトムだ。
良かった、トム元気なんだ。
トムちゃんとご飯食べてるのかな?
ゴーレムのメンテナンスに熱中して徹夜してないかな?
でも……会えない。
会うのが怖い…。
私の体には醜い傷が残っているし、お父さんの時みたいにトムも拒絶するかもしれない。
「お母さん、トムがゴーズラにいるって本当?」
私は見舞いに来たお母さんに詳しい話を聞く事にした。
……………
「トムがガーグと戦った?あの荒くれガーグと?」
トムがガーグなんかと戦って無事で済む訳がない、ガーグはドルムーンでは有名な冒険者、顔も怖く言葉遣いも悪い。
「ガーグだけじゃなく、4人組の冒険者隊と戦ってゴーレムも壊されたのよ」
「うそ………」
「でも大丈夫よ。ゴーレムは新しくなったし、トムも新しい鉱山で一生懸命働いているみたいよ。負けたくない友達を見つけたんだって」
その時俄かに病院が慌ただしくなったんです
「お父さん、大人しくして。斬られたんだよ」
あの声はリリーさん。
「うるせー。トムの坊主がまだ鉱山に残ってんだよ」
トムに何があったの?
side トム
採掘現場に突然現れた男は刃物を振りかざしてミスリルを持ってくる様に要求した、しかも取り押さえ様としたドガンさを斬りつけて。
僕と男がミスリルを取りに行っている間に何とかドガンさんを逃がす事ができたけど。
「そこの弱そうな僕、ごっついオッサンを逃がしたのいいけど1人でだーいじょーぶ?」
「少なくとも泥棒の将来よりは大丈夫かと」
「生意気言うじゃねーよ。早くそのミスリルをよこしな」
どうすればいい。
こんな時どうすれば、こんな時コウサ君ならどうするかな?
男が持っているの鉄のナイフ……
それなら
「お前なんかにやるぐらいなら捨ててやるよ」
僕は手に持っているミスリルを投げ捨てる。
「ガキッ、調子にのりやがって」
案の定、男は僕に向かってきた。
………
鉄がミスリルに勝てると思ったら大間違いだよ。
ゴーレムを操作して、男に立ち向かわせる。
「そんな小せえ人形で何しようてっんだ?」
先ずは
男に向けてパンチを出させる。
「けっ、そんな大振りが当たるかよ」
男はゴーレムにナイフを突き立てようとする。
確かに大振りだよ、わざとだけどね。
ガギンッと鋭い音が採掘場に響く。
「このゴーレムはミスリルで作っているんです。鉄のナイフなんかじゃ、かすり傷もつけれませんよ。そう言えばミスリルが欲しいんでしたよね?それならあげますよ」
…………
「ただし差し上げるのは、ミスリルの拳ですけどね」
ナイフが届く程の距離で、ミスリルゴーレムのパンチを腹にもらった強盗は呻き声を洩らしながら崩れ落ちた。
その後、念の為と言われて僕は病院に連れて来られた。
どうもみんな僕が1人強盗を倒したのが信じられないらしい。
side レミ
トムが強盗と戦って病院に運ばれてきた、そう聞いた私はいてもたってもいられずに気づいたら駆け出していた。
(良かった、トムは怪我をしていないみたい)
でも、怖い。
トムの近くに行くのが怖い。
私がためらっていると、トムが走り出して来てギュッと抱き締めてくれた。
「レミ会いたかったよ。話たい事が沢山あるんだ。新しくできた凄い友達の事……それに2人の新しい生活の事も。時間はいっぱいあるんだ、これから2人でずっと一緒に歩いて行くんだから。……僕はお金も大きなゴーレムも無くしちゃった。それでも良かったら僕と結婚して下さい」
私は泣きながら頷いていた。
あの地下室て流した悔し涙じゃない嬉し涙を流してトムに返事をする。
「喜んで」
久しぶりの笑顔で、そう返事をした。
やっぱり、作者は爽やかな話よりイ・コージみたいなひねくれた話が似合うかも…‥
トムレミに投票してくれた方が満足してくれたか不安です