幕間 イ・コージ 中年研究員が反旗を翻した理由
作者も中年独身サラリーマン。
思わず感情移入しそうに、いや中年独身サラリーマンはみんなイ・コージの気持ちがわかる筈…
side イ・コージ
今の自分の立場を考えると思わず笑ってしまいます。
遊びも恋も何もかも犠牲して手に入れた結果が、牢屋に繋がれる囚人という身分なんですから。
子供の頃に学校の先生はこう言いました
¨努力は人を裏切らない¨と。
私イ・コージはその後に一言を付け足したい。
努力は人を裏切らないが、努力した人でも人に裏切られる。
思い出す。
私が、この立場に堕ちる結果を作った奴の顔を。
その頃私は皇国魔法研究所に勤めており、来る日も来る日も、魔法陣の研究の日々でした。
徹夜も珍しくない不規則な日々、当然体型はふくよかに。
そんなある日、研究者の所長に呼び出されたんです。
――――――――――
「魔物を操作する魔法ですか?」
「そうだよ、コージ君。できるでしょ?君は優秀な魔法使い何だからさー。簡単でしょ?これができれば魔物の被害を減らせるから賞金も貰えると思うよ」
所長とは言え貴族の次男坊が能力に関係なく着いただけです。
簡単に言ってくれますが、これは難しい研究でした。
「それなら先ずゴブリンの研究から入らせてもらってもよろしいでしょうか?」
「ゴブリン?もう少し強力な魔物にしてよ」
これだから素人は。
「ゴブリンは人族と同じ二足歩行の上に能力が限定されています。ゴブリンが農作業や刀の手入れをして見せたら操作の効果が分かりやすいですから」
キチンと納得してくれたのかは、分かりませんが所長が頷きました。
これで研究員の倍以上の給料を貰うんだから、貴族様は本当に羨ましいですよね。
その日から私のゴブリン研究が始まったんです。
イ・コージのゴブリン研究結果抜粋
ゴブリンは餌をくれる者や自分より強い者に従うらしい、らしいと言うのは言語が通じない為に確認ができていないからである。
そしてゴブリンは決して同種を意味なく責めたりはしない、力の優劣が決まれば上が下を守り、下は上に従う様だ、この点は人間よりも優れている。
……………
(久しぶりに研究所以外で飯を食べるか。…リディちゃんいるかな?)
私はその時久しぶりに恋をしていたんです。
相手は研究所近くでウエイトレスをしているリディちゃん、可愛く良く笑う娘でした。
今思えば愚かな行為ですね、所詮人族は能力よりも見た目や金が大切なんですもんね。
あの頃はリディちゃんの笑顔を私だけにむけた特別な笑顔だと信じていましたけども。
いえ…‥そう思いたかったのでしょう。
それを原動力に研究も頑張れましたし。
そしてついにゴブリンを自分の意志で操作する事ができる様なり、所長に報告に向かいました。
「よくやったねー。さすがはコージ君。でさ相談なんだけども、これ俺の手柄にしてくんない?俺への結婚祝いとしてさ」
「所長は結婚なされていたではありませんか?」
「あんな女別れたよ。新しいのはコージ君も知っているリディだよ、あっコージ君は結婚式呼ばないから。リディが君をキモイとか言ってたし。そうだ、ゴブリンを兵にすれば戦争に有利だぜー。人族の兵を傷つけずに戦争ができるんだしな。ヒャッハッハッハー」
この状況を相談しようにも、研究しかして来なかった私には友人と呼べる人はいませんし。
所員同士はお互いの研究を秘密にしたいから交流をしていません。
私の努力は、私の恋は、私の評価は、私の存在は、私の成果は誰も必要としてくれないのか?
イ・コージと言う人間は必要とされないのか?
それなら、それなら、それなら私は人族を止めて不当な扱いを受けているゴブリン達と国を作ってやる。
私はその夜、研究資料と研究対象にしていたゴブリンを引き連れて研究所を捨ててやりました。
目指したのは、あの馬鹿所長の一族が所有している古城。
誰も城に訪れないから研究に没頭できました。
研究により大勢のゴブリンを従える方法、人族のみを殺せる魔法等を見つけました。
ゴブリン達も私に良く従ってくれ、生まれて始めて充実した日々を送れていましたね。
略奪?それは人族が良くする事じゃないですか?
私の研究成果を奪おうとした人族が罰せられないのに、私を罰しようとしたら、あの男の罪を並べ立ててやるつもりでした。
でも私に弁明の機会は与えられず牢屋に繋がれる日々。
ここには牢番以外は誰も来ません。
私はここで朽ちていくのでしょう。
笑えますね………。
ある日牢屋に牢番以外の人族が来ました。
これで最後なんでしょうか?
それとも……
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