ザコとイントルさん その2 ハンナさん登場
side ハンナ
自分達は、ガーグ冒険者隊との待ち合わせ場所に到着した。
ここで久しぶりにメリーに会えるんだよな。
そしてメリー自慢の男にも会える。
あのメリーが惚れた男だから、きっと強くてハンサムで素敵な男なんだろう。
…………
コウサって、どの人なんだ?
「ハンナ、久しぶり元気だった?」
「自分から、元気をとったら何も残らないよ。それでメリー手紙で言っていたコウサさんは今日来てないのか?」
「いるよ、そこに」
「えー、この弱そうなブサイクが?メリー大丈夫か?いくら何でもあれはないだろ?」
「ハンナ、その答えは、この依頼が終わればわかるよ」
side 功才
メリー、手紙に何て書いたんだろ。
でも、どんだけハードルを上げたとしても、本人の前で¨あれはないだろ¨って。
一応、騎士団の代表なんだしさ。
「こりゃ随分と社会勉強不足なお姉ちゃんだな。依頼協力を申し出てきたのは、そちらさんだぜ?」
「ガーグさん、あちらも悪気あって言った訳じゃないみたいですし。とりあえず作戦を決めませんか?」
流石は苦労人のイントルさん、素早いフォローだ。
「わかりました。自分達の考えですが、城にいる大集団のゴブリンも討伐する必要があるので、ゴブリンが帰って来て落ち着いている日暮れに攻め込むのが得策かと」
「だとよ、ザイツはどう考える?」
「俺が攻めるなら午前10時頃っすね。ここ何日か観察して分かったんすけど、ゴブリンが城をでるのが8時頃、帰ってくるのは遅い者で夕方4時頃っす。ゴブリンの大多数が出払って、イ・コージが研究に没頭して警戒が緩まる時間の10時ぐらいがいいっすね。それに夜に攻めて火を消されたら最悪っすよ」
「なっ、それではゴブリンは無視しろと」
「イ・コージを倒せば、ただの少集団のゴブリンになるっすよ。無駄な戦いをする必要はないっす」
「だとよ。次はどこから攻める?」
「自分は警備が手薄と予想できる裏手から攻めるべきだと」
「ないっすね。裏手の警備が手薄って確認をしたっすか?攻めるなら正面のゴブリン専用入り口から行くべきっすね。裏口からイ・コージの部屋まで行く時間が掛かり過ぎる可能性が高いっすからね」
「浅いな。イ・コージは臆病な性格の者なんだろ。それなら避難通路があるはずだ」
「臆病者が背後に通じるドアに鍵を掛けない筈ないじゃないっすか?ましてや避難通路は狭い可能性が高いんすよ?攻め手が不利になるだけっすよ」
「ぐっ、一々何なんだお前は。だったらお前の作戦を聞かせてみろ」
メリーに目配せをすると、goサインをだしてくる。
ハンナさんのフォローは任せた。
「いいっすよ。先ず夜明け前にこの場所に来て結界をはるっす。
ゴブリンの最後尾が出てから大体2時間後に攻め込むんすよ。
先ずはメリーとそちらのアーチーャで見張りを倒したら、ゴブリン専用入り口から侵入するっす。あそこから侵入して多少の物音がしてもゴブリンが帰って来たぐらいにしか思われないっすから。
交代時間がくる1時間のうちにイ・コージの研究室に攻め込むっすよ」
「メリー、こんな作戦は臆病で卑怯な男にしか思いついない筈だ。早く別れる事を勧める。中身はきっとゲスに違いない」
あー、反論できなくなって、そっちに来たか。
「正解っすよ。俺は臆病で卑怯者、自分や仲間が傷つかない為ならどんな卑怯な手でも使うっすよ。ゲス?どこが悪いんすか?高潔な精神で被害を拡大させる英雄なんて、まっぴらごめんすよ」
「ハンナ、止めといた方がいいよ。屁理屈でコウサには適わないから」
だから、メリーは弓で対抗すると。
「メリー、こんな男のどこがいいんだ?ただの口だけ男なんじゃないか?」
「だから言ったでしょ?依頼が終わればわかるって」
そりゃね、久しぶりに会った幼なじみの男が、こんなんじゃ怒るのは当たり前か。
「それじゃコウサの策で問題はないな。決行は明日。そちらも問題はないな」
side ハンナ
「ぐっ、行くぞ。メリー」
「行くってどこに行くの?」
「自分達の宿営地だ。久しぶりにゆっくり話をしたい」
メリーは、あのコウサとか言う男を気にしている様だ。
そのコウサは動く気配すらない。
「メリー、積もる話もあると思うから先に行ってくればいいっすよ。俺も適当に、見切りをつけてから上がるっすから」
「見切りって何だ?」
「メリー達は、ここ何日か交代制で、お城を監視してるんだよ。まったく、コウサは殆ど寝てない癖に無理をし過ぎだよ」
「何でそんな事を?」
「予測は予測。実際に見て得た情報が一番信頼出来るんだってさ。メリーにはお肌には悪いからとか、ガーグさんにはお酒を飲みたいでしょとか、実戦ではイントルさんに頑張ってもらいますからとか言ってコウサは、長時間監視をしてるんだよ」
「監視なら、それが普通だろ?」
「分かってるけど、コウサが心配なの。俺はいっつも楽をしてるからとか言ってすぐに無茶するんだから」
あのメリーが、ここまで男を想うなんて正直驚いた。
メリーは、昔からモテた癖に、恋愛に興味を持たずに狩りに没頭しまくり。
村に来た劇団を見て女優を目指してからは、さらにモテていたけど、相変わらず恋愛に興味がない様だったし。
理想の条件が狩りが一緒にできて、演技がうまくて、勇気がある人。
ブルーメンに来ても、周りにいる俳優の卵達に目もくれずに、自分の所に入り浸っていたよな。
それが、こうなるかね。
「コウサのバカ。
何が俺は臆病者よ、ジャイアントジープの時もゾンビスラッグの時もサキュバスの時もミスリルゴーレムの時も命がけだったじゃない。いっつもメリーの前にいた癖に。どれだけメリーが心配していたか分かってないんだよ」
はい?
「メリー、それ本当に、あのコウサが倒したのか?全部強力な魔物ばかりじゃないか」
「そうだよ。全部メリーも一緒だったから」
「いやいや、自分もまだ戦えない魔物ばかりだぞ。何人で倒したんだよ」
「多くて4人、ゾンビスラッグはメリーとコウサの2人で倒したよ」
「うそっ。有り得ない」
ザイツ・コウサって何者なんだ?
今回の功才の台詞はある感想で、功才の行動がゲスで嫌いだと言われたんで