ザコとミスリルゴーレム
久しぶりに戦闘します
side 功才
シャイン様から作戦成功の連絡が届いた。
それなら将来のお友達トム・チキーンー君に会いに行きますか。
それでは細工の開始。
「ガーグさんとイントルさんって、どっちが力が強いんですか?」
「そりゃイントルだよ。まぁ俺もそれなりには力があるぜ」
ならイントルさんにあれをやってもらうか。
「わかりました。それと道具を作る鍛冶屋を紹介して欲しいんですけど」
「構わねえけど、何を作らせるんだ?」
「ゴーレムを倒すのに使う道具ですよ。出来次第、鉱山に行くので、その前にみんなに作戦を伝えておきますね」
今回用意する物
とりもち
鈎付きロープ
水入りシールドボール
力自慢のパーティーメンバー2人
嫌になるぐらいに、狙いが正確なアーチャー
小技師
よっし、これで準備完了。
――――――――――
ミスリル鉱石の採掘場は洞窟状に掘り進められていた。
何故かそれを見たイントルさんから大きな溜め息がもれる。
「あれ、イントルさん。どうしたんですか?大きな溜め息なんてついて」
「不思議なんですけど、昔から鉱山にある洞窟を見ると憂鬱な気分になるんですよ。嫌な事があったとか狭い所が嫌いとかじゃないんですけどね」まぁ、イントルさんは俺やガーグさんと違ってナイーブそうだからな。
洞窟の中は、薄暗く物静かで、俺達が歩く足音が反響している。
「それでトム君はどこに住んでるんですか?」
「あー、この道が開けた所にいるそうだ」
開けた場所に着くと、ゴーレムが待機していた。
あー、そうきたか。
ゴーレムは、意外に細身ってか虚弱な感じ。
多分、術者のトム君が動かし易くする為に自分の体に近づけてあるんだろう。
「誰?僕はここを動かないかないよ。絶対に動かないんだから」
トム君の気持ちは痛い程わかる。
下手に騒げば家族に被害が、公的な機関に訴えでもしたら捕まっている彼女に被害が及ぶ。
だから、周りに嫌われてでも誰かに気づいてもらえる可能性が高いであろう、この手段を選んだんだろう。
「興奮して聞く耳持たないって感じだな。ザイツ指示を頼む」
そりゃこの暗い洞窟にネガティブな状態で過ごしていたら、疑心暗鬼にもなるわな。
ましてや、トム君は大事な彼女を守れなかった自分を責め続けていただろうし。
トム君と俺達の間に、ノミとハンマーをもった細身なミスリルゴーレムが立ちはだかった。
先ずは
「フラッシュ」
狙うのはゴーレムじゃなく、しばらく光から遠ざかっていたトム君。
トム君の目が眩ん所為でゴーレムの動きも止まる。
「ガーグさん、イントルさんお願いします」
「おう、任しときな」
「ザイツ殿、次の指示をお願いしますよ」
そして次は
ゴーレムに
「ライトウェポン」
続け様に
「アースタン」
地面にミスリル製の出っ張りが出来上がる。
その出っ張りに
「シャープネス」
出っ張りの鋭さがます。
それじゃ
「ガーグさん、イントルさんゴーレムに鈎つきロープを引っ掛けて倒れそうになったら教えて下さいね。メリーは2番のボタンを押してコイツと合成。狙うの場所はわかってるな」
「大丈夫だよ」
「ザイツ、ゴーレムが倒れるぞ」
ゴーレムのバランスが崩れた瞬間に
「マジックキャンセル&グラビティーソード」
体を重くされたゴーレムが、鋭さをました出っ張りに倒れ込む。
ゴーレムが手放したハンマーとノミの激突音と、ゴーレムの倒れる音が、洞窟に鳴り響いた。
「ふぃー、とりあえず一段落かな?……ありゃトム君意外に根性があるのね」
頭を抱えながら、ふらつきながらもトム君が立ち上がってくる。
「レミの苦しさはこんなもんじゃないんだ。レミの悲しみはもっと深いんだ。レミはもっと悔しい思いをしているんだー!!」
トム君の気合いが移った様で、ゴーレムは体に食い込んだ出っ張りを、つけたまま強引に立ち上がる。
人間なら生々し過ぎて見れないよな。
だって、お腹に杭が刺さってる感じになってるんだぜ。
このままじゃ、トム君にも悪影響がでるかもしれない。
だから一気に決める、俺以外のメンバーで。
「メリー、頼む」
「コウサ任せて。戻ってブーロクンアロー」
ベチャリと音がしたかと思うと、トム君から悲鳴が聞こえる。
「これなに?動けない」
必殺トリモチアロー
アローファクトリーでトリモチを矢にする。
それをメリーがトム君の頭上を狙ってくっつける。
あとはブーロクンアローで戻すだけ。
そしてまた、ゴーレムの動きが止まった。
ゴーレムが手放したミスリルハンマーに向かって
「ライトウェポン、イントルさんお願いします」
「よっと。ザイツ殿の任せられました」
イントルさんに狙ってもらうのは、ゴーレムが体につけているアーススタンの出っ張り。
イントルさんが叩く度に、ゴーレムの体の穴が広がっていく。
「ザイツ殿、最後行きますよ」
ゴーレムに
「グラビティーソード」
体を重くされたゴーレムは衝撃を逃がすの難しくなり砕け散る。
そして最後に俺の仕事。
水入りのシールドボールをトム君の頭に持ってきて
「マジックキャンセル」
地道にトリモチを取っていく。
予想通り、トム君は茫然自失となっていた。
「ほい、これプレゼント。シャイン・マクスウェル様の領内にある最近発見されたミスリル鉱山への紹介状だ。トム君はゲードがミスリルを略奪しに来たのを防いでいた。OK?」
「何で殺してくれなかったんですか?僕は生きたくないのに……」
「こないだブロッサム家の令嬢ミント様がゲードの家に襲撃をかけられた。その時多くの女性を救出したんだけど、その中にどんなに怪我をさせられても体を許さなかった女の人がいたらしいよ。名前は確かーネミじゃなくレイでもなく、そうそうレミだ。レミ・バルドーだ」
「レミは、レミは無事なんですか?」
「命に別状はない、ただ先のミスリル鉱山の近くで入院してるんだけど、生活が苦しいらくてな。誰かに助けて欲しいんだよなー」
「ありがとうございます。ありがとうございます。今直ぐに旅立ちます」
「トーム君ー。今出たら捕まっちゃうよ、周りはトム君に同情してるけどさ、それと法律は別物だよ」
「そんなせっかくレミに会えると思ったのに」
「トム君彼女が本当に大切なんだね。わかるよ、すっごい分かるよ、その気持ち。モテない男に彼女ができる奇跡がどれだけ嬉しいものか、もの凄いわかる」
「で、ですよね。ありがとうございます」
うん?トム君が納得したって事は、見た目だけでもモテナイ君と認定されたのか?
「話は変わるけど、違う鉱山でミスリルゴーレムを動かすには何が必要なの?」
「あっ、そうだ。良かったー。このコアと形を形成できる分のミスリルがあれば直ぐ動かせます」
トム君が大事そうに抱えているのは、手の平大の水晶玉。
それで増えるなんて、カスピ海ヨーグルトみたいなゴーレムだな。
「ほんじゃ採掘に必要最低限のミスリルを、この袋に詰めて。……それで残ったミスリルはどうしたら良い?」
「皆様には、お世話になりましたから、差し上げます」
「本当?催促したみたいで悪いねー、それじゃトム君も袋の中に入ってちょうだい」
(ザイツ、白々しいな。あれは催促ってよりタカリだぜ?)
(ガーグさん、人聞きが悪い。でもこれでミスリルの所有権は、トム君から俺達に移りました。ガーグさん残りのミスリルを袋に詰めて下さい。あっイントルさん袋にライトウェポンを掛けときますので鍛冶屋にお願いします)
ガーグさんに袋を持ってもらって街の入り口に待機しているマクスウェル家の馬車に積み込んでもらう。
馬車にはトム君とレミさんの家族も乗っていた。
俺はトム君が入っている袋の隣にもう1個の袋を置く。
(トム君、これは街のみんなからのお祝いだってさ。彼女さんと幸せになってくれよ、俺も君もモテない同士なんだから応援してるよ)
side ガーグ
しかしザイツには呆れたと言うか何と言うか。
依頼料の他に質の良いミスリル鉱石、腕の良い採掘術士を手に入れやがって。
しかしあれだけ頭が回る癖に、何でああなるのがわからないのかね。
「ねっねっねっ、コウサ。モテない男に彼女が出来る奇跡って何?メリー詳しく知りたいなー」
「いや、絶対分かってるだろ。あんなこっ恥ずかしいセリフはもう言いません」
「メリー、コウサと違って馬鹿だから分からないの。コウサー」
「イントル、休むぞ。ザイツはあの様子じゃプルングの嬢ちゃんに1日中いじられるだろうよ」
「しかし不思議な少年ですね。弱いのか強いのか、判断しにくい」
確かに、実力は初級冒険者の癖に、結果はベテラン冒険者並みの結果を残しやがる。
何と90万PVを超えました。
感謝いたします。