ザコの昔バレンタイン&進路編
春秋さんからリクエストがあった幼なじみと功才の話です
side メリー
やっぱり、コウサはいいなー。
私は隣にコウサが居るだけで、幸せを感じる事ができる。
お別れ会で忙しくてコウサを満喫できなかった分、私は馬車の中でコウサを満喫していた。
「ねぇ、コウサ。コウサは向こうにいた時はどんな暮らしをしてたの?」
「どんな暮らしって言われても地味に目立たない様にしてたよ」
「もっと具体的に教えてよー。女の子に告白されたとか、好きな子がいたとかさ」
告白なんてされた事ないし、確実にメリーの地雷じゃん。
「向こうの世界にバレンタインって行事があって、好きな男に対して女がチョコを渡して告白する日があるんだけど」
――――――――――
バレンタイン。
俺が両手に持つ紙袋の中に大量チョコを入っていた。
でも凄い虚しい。
だって
「財津君、これ勇牙君に渡してお願いっ」
「勇牙用は右だよ。後はチョコに君のクラスと名前を書いてくれれば俺が届けるから」
バレンタイン。
それはモテない男にとっては厄日でしかない。
さらに俺は長年モテまくる幼なじみへの指定配達人となっており、今じゃ紙袋を持参する程になっていた。
「ほらっ、お前らにお届け物だ。ったくお前らが表に出て来ないから俺が配達人なんてしなきゃいけないんだぞ」
「一回一回受け取って礼を言うのが、面倒臭いんだよ。チョコなんて大量もらっても困るだけたぜ」
「勇牙、お前は今全国のモテない君の気持ちを踏みにじった。ちきしょー俺なんて1個も貰えないのに」
「功才も唯さんや小百合さんからは貰えるじゃないですか」
「正真正銘の義理チョコがな。去年なんて唯は無包装の板チョコだったし、小百合はメイドさんに買ってもらったチョコだよ。それに俺はこれから速攻帰んなきゃいけないから、今年はそれも無理なんだよ」
「おっ、デートの約束か?」
「あぁ、可愛い妹がどこで逆チョコなんてシステムを覚えたのか、これから帰ってチョコレートケーキ作りをしなきゃいけないんだよ」
「昨日作れば良かったじゃないですか」
「昨日は姉貴と美才のお配りチョコの手伝いだよ。お手伝いと書いて90%功才のお手製だけどな」
「まだ大丈夫だろ?少しゆっくりしてけよ」
「はっ、これだからモテる奴は。俺がバレンタインの放課後に残ってる姿を見られてみろ。チョコを貰えずに僅かな期待にすがる寂しい男にしか見られないんだぞ。それに美才は細かいデコレーションをした方が喜ぶんだよ」
功才が学校から飛び出して数分後の事。
「あれっ、功才は?今年はちゃんとしたチョコあげようと思ったのに」
「功才は美才ちゃんに頼まれたチョコレートケーキ作りに帰ったよ」
「相変わらず功才さんは美才ちゃんが可愛くて仕方ないんですね。功才さんはお菓子作りがお上手ですから、私達の手作りチョコなんて渡せませんよね」
「小百合だよねー。去年のホワイトデーのクッキーもメチャクチャ美味しかったし」
「お前らのチョコって、まさかお返しクッキーが目当て?」
「………」
「………」
「後から功才に今年はクッキーを作るなってメールをしときますね」
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幼なじみ2人には本当に感謝しちゃう。
だってコウサの魅力に気付かなかったんだもん。
「でもお話を聞いてると仲が良さそうだよ?何で遊ばなくなったの?」
「俺が勝手に離れたんだよ」
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中3の冬
俺の志望校が彼奴等に伝わった日の事
俺は幼なじみ4人に囲まれていた。
「おい、功才。何で美星を受けないんだよ」
「勇牙、答えは簡単だ。成績も銭も足りないからだよ」
「何を言ってるんですか。成績なら僕と小百合が手伝いますし、君のお姉さんも美星に行ってるじゃないですか」
「隼人、美星は私立だろ?親父から公立に行く金なら出してやるって言われたんだよ。親父は姉貴と同じ高校に行って欲しくないらしい」
「それなら美星の近くの学校でもいいじゃん。何でわざわざ反対側の技塾工業に行くの?」
「そりゃ唯、公立で手に職をつけれる高校はあそこしかないんだよ」
「今までずっと5人一緒だったのに。一言ぐらい相談してくれてもいいじゃありませんか。私達幼なじみなんですよ」
「小百合、何時までも幼なじみが一緒って訳にいかないだろ?それに俺は高校を卒業したら家を出て働かなきゃいけないんだよ」
言える訳がない
こいつらの取り巻きから、美星に行くなって言われた事を
言える訳がない
お前達と比べられるのに、疲れたなんて
言える訳がない
お前達へのやっかみが、俺に来て大変だとか
言える訳がない
お前達、4人だけでクリスマスを過ごしたのを知っている事を
言える訳がない
こんな俺を心配してくれる大切な幼なじみを傷つけたくないから。
俺は勝手にお前達から離れるなんて。
リクエストを貰えたら随時書いていきます
作者が書けるならですけど