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ザコと勇牙と姉妹

前にリクエストがあった勇牙編です

side 財津栄華

(ざいつえいか)


「カーットォッ。いいねー、さすがは栄華ちゃん良い演技だったよ」


監督が笑顔でOKをだしてくれた。

当たり前よ。

今のセリフは演技じゃなく本音なんだから。


「流石ですね栄華さん、特にあの¨無くして始めて大事な人だって気付かされたなんて。私バカだよね¨の台詞。とても演技とは思えませんでしたよ」


マネージャーも、したり顔で誉めてくる。

あんな台詞なんて簡単。


居なくなって2ヶ月たった弟功才の事を思えばいいんだから。

映画の撮影を終えてた私はあの寂しい家に帰る。


大きいだけで、誰も待っていてくれない家に。


案の定、家には灯りが着いていなかった。


「ただいま、あら美才帰ってるじゃない。あの娘ったら灯りも着けないで」


無駄に広い居間に美才の姿はなかった、いる場所は多分あそこね。

私は美才がいる部屋の戸を開けた。


「やっぱりここにいたのね。美才ご飯も食べないで何をしてるの」


美才がいたのは功才の部屋。

美才は功才のベッドに座っていた。


「やだ、お兄ちゃんのご飯が食べたいの」


仕方ないかもしれない。

忙しい両親に代わって美才の面倒を見ていたのは功才だったし。

お爺ちゃんお婆ちゃんが家から出て行ってから、ご飯を作っていたのも功才。

美才にしてみれば功才のご飯がお袋の味。


まだ中学生の美才が家に帰って来た時ぐらいは、それを食べたくなるのは無理がない話。


「仕方ないでしょ。功才は、いないんだから」


「お兄ちゃん、帰って来ないのかな?」


「わからないわね。どこで何をしてるのかもサッパリわからないんだもの」


「お兄ちゃんが居なくなっても1ヶ月も気付かなかったんだよね。教えてくれた人も私達の知らない人だったし。お兄ちゃん元気かな?」


あの頃は家族全員が、撮影やレコーディングで泊まりが続いていた。

たまに帰ってきても、功才とすれ違っているとしか思わなかったのよね。

ううん、忙しさのあまり誰も功才の事を気に掛けていなかったのね。


「本当にあの子は、どこで何をしてるのかしらね」



side 勇牙


「んだと、隼人もう一回言ってみろ!」


「何回でも言いますよ。これ以上功才を探すのは無意味ですよ。労力の無駄です」


「隼人、ひどいよ。そんな言い方って」


「ひどい?事実じゃないですか。三条財閥が、これだけ探しても見つからない人間をどうやって探すんですか?」


確かに俺や仲間が探しても功才の手掛かりは全く掴めていない。


「でも幼なじみの俺達が探してやんなきゃ、誰が彼奴を探すんだよ。彼奴の親父さんは絶対に探さねえーぞ」

 

「だからですよ。功才を見つけてどうするんですか?家族が1ヶ月も気付かなかった家に戻って来いとでも言うんですか?僕達にできるのは功才の無事を祈るしかないんですよ。それに僕も勇牙も唯さんも小百合さんも高校に入ってから、功才と何回話をしました?みんな功才がバイトをしているのも知らなかったじゃないですか!」


俺が功才と最後に話をしたのは何時だったっけ?


俺は族、隼人は野球、小百合は習い事、唯はバスケに忙しかった。

それでも昼休みとかには4人で集まって飯を食ってたけど。


「俺達、功才が居なくなって、始めて彼奴の話をしたんだよな……」



side 財津美才

  (ざいつみさ)



「みっさっちゃーん!!」


「みんなー、ありがとー!」


私はアイドル。

ファンの前では、どんな時も笑顔でなくちゃいけない。

実のお兄ちゃんが行方不明になっていても。


「美才ちゃん、どうしたの?お弁当をこんなに残して。玉子焼き大好きじゃなかったっけ?」


「マネージャーさん、ちょっと食欲がなくて、すいません」


だって私が大好き玉子焼きは、お兄ちゃんが作ってくれるフワフワの甘い玉子焼きなんだもん。

お兄ちゃんは私が帰ってくる時間に合わせて、私の大好きなご飯を作ってくれていた。

疲れたから、外で食べてきたから、そう言って手を着けなかった事もあったな。

「そう?もう少ししたら、次の現場に移動だから待っててね」


マネージャーさんが居なくなったのを確認してアイドル美才ちゃんから財津美才に戻る。


「お兄ちゃん帰って来てよー。美才もうワガママ言わないから、ご飯も残さないから。玉子焼き作ってよー、美才にごめんなさいって謝らせてよー」


マネージャーが帰ってくるまでの僅かな時間だけ、財津美才に戻った私は思いっ切り泣いた。

泣いて笑う為に、どこかで見てるかも知れないお兄ちゃんに笑顔を届ける為に。


妹が強力なキャラになるかも?

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