ザコとガーグ戦士隊の出会い
一気に男臭くなります
side 功才
ガーグ戦士隊と会う手筈が整った。
それでメリーと一緒に待ち合わせ場所へ向かったんだけど……。
ばっくれようかな。
「コウサ、あの人達かな?」
「多分そうなんじゃないかなと、あまり信じたくはないよな」
待ち合わせ場所にいたのは、2m近い髭の分厚い坊主頭の男と、その坊主頭より一回り大きい覆面を被っている男。
(や、やべぇ。オークよりゴツいってありえねーだろ)
「おい、おめえがザコか。俺がガーグだ。意外にチビなんだな」
目ざとく俺を見つけてくれた髭坊主が、低音ボイスで話かけてきた。
「すいません。ガーグさん、脅かしてどうするんです。ザイツ殿の戦い方を聞いてあんなに感心してたじゃありませんか?あっ、申し遅れました自分はイントルと言う武道家です。この覆面にはやむにやまれぬ事情がありますので了承して貰えたら有り難いです」
イントルさんは大きな身体を縮こまらせて、申し訳なさそうに謝ってきた。
その態度からイントルさんの人の善さが伝わってくる。
うん、覆面は今の所は振れないであげよう。
「こっちからお願いしたんすから構わないっすよ。俺達の事はギルドから聞いたんすか?」
そうだとしたらガーグは守秘義務をモットーとするギルドと強力な繋がりを持っているかもしれない。
「誤解すんなよ。ギルドに俺のダチがいてな、そいつが言うには俺達とお前等が組めば強力なパーティーになるって確信したそうだ。ギルドの守秘義務を補って余りある強力なパーティーがな」
それは逆に厄介な話。
つまりガーグの友人は、ギルド職員としての立場を危険に晒してもガーク達に荷担したとも考えられる。
つまりガーグに不利益が生じそうなら隠蔽する事も否定できないな。
「それは買い被り過ぎっすよ。俺達はまだ何件も依頼をこなしていない新米コンビなんすから」
「冗談よせや。新米がジャイアントシープやゾンビスラッグを無傷で倒すなんて普通は有り得ないんだよ。それに油断のならねー目をしやがって」
俺とガーグはお互いの目を逸らさずに睨みあう。
「コ、コウサ顔が怖いよ。せっかくパーティーを組むんだから笑顔、笑顔ねっ」
重すぎる空気に耐えれなくなったメリーが顔を強張らせながらも、その場を取り繕うろおうとする。
「メリー大丈夫だよ。ガーグさんは信用ができる人だ。だから腹の探り合いも演技も止める。ガーグさんイントルさん改めてガーグ戦士隊への加入希望をさせて下さい。俺の名前はコウサ・ザイツ、隣にいるのがアーチャーのメリー・プルングです。俺の戦い方を確認したいんなら依頼を一緒にこなしてもらうのが一番かと」
「ガーグ戦士隊への加入希望で良いんだな」
「俺の戦い方は聞いてるんでしょ?ザコって油断をしてもらった方が足元をすくいやすんですよ」
「ったく、俺を有名税の暴風壁代わりにするつもりか?可愛げのないガキだぜ」
「そりゃ、可愛げのなさは親のお墨付きですからね」
コウサとガーグが目を合わせてニヤリと笑い合う。
「早速だが新生ガーグ冒険者隊としての仕事がある。サキュバス退治だ。ザイツ良い知恵はあるか?」
「その前に確認をさせて下さい。サキュバス退治はフランソワ乙女騎士団が請け負った筈ですが」
「こないだフランソワの所に入った奴はギルドにいるダチの弟でな。そいつが行方不明になった。
サキュバスを退治できなかったフランソワ乙女騎士団は依頼失敗扱いだよ」
データボール参照サュキバス
サキュバスは通称夢魔とも呼ばれています。
男性にエッチな幻術を掛けて自分の結界に取り込んでからジワジワと精を吸収していく悪魔なんですよ。
サキュバスは力は弱いですけども、功才君の場合は疑いだけでショックアローが飛んできそうですから気をつけて下さいね。
「ガーグさん、その男が消えた場所と日数を教えて下さい」
「消えたのは一昨日。場所は飲み屋街にある小さな劇場の裏らしい。フランソワ乙女騎士団が見てる目の前で消えたそうだ」
「まだギリギリ間に合うな。ガーグさん俺とメリーでサキュバスを引きずり出しますんで、退治はお願いします。メリー今回は6と7を使う」
「いいけどコウサはどうするの?………うん、わかったよ、思いっ切り射くから安心してね」
微妙に安心できない言葉が聞こえてきた。
side メリー
闇の中、コウサが劇場近くを歩いていると女が声を掛けてきた。
「あら、可愛い坊やね。こんな夜中まで、遊んでいるイケない子はお姉さんがお仕置きしちゃうぞ」
「へぇーいい女だね。妖艶って言葉がピッタリくら」
(ガーグさんの言葉は無視。それに今は我慢、我慢。これは作戦なんだから。コウサがにやけているのも演技なんだよね)
やがてケバい女とコウサは闇に消えてしまった。
「ガーグさん、イントルさん、あのケバい女がサキュバスです。だーかーら遠慮なく倒して下さい」
「お、おう。わかった任しておけ」
「メ、メリー殿。コウサ殿はご無事なのでしょうか?」
「大丈夫ですよ。後1分我慢をすればわかりますから。いやサキュバスに分からせてやるんだから」
闇夜の中で不適に微笑むメリーであった。
side 功才
ここがサキュバスの結界の中か。
例の男を探すも幻術で隠してあるらしく探せない。
「キョロキョロと落ち着かないでどうしたの?もしかして緊張してるのかな」
(この後に起きる事を考えると体がこわばるんだよ。残り時間は30秒って、ところか)
「お姉さんが美人過ぎて緊張してるんっすよ。骨抜きにされちゃいそうで怖いんすよ」
「本当にに可愛い坊やね。骨だけじゃなく色んなものを抜いてあげる」
(やべっ。頭がボーっとしてきた、抜かれるのは骨じゃなく魂なんだろうな。20…)
「緊張して来れないのかな?ならお姉さんが行ってあげる」
(サキュバスが来るあれも後10秒で………)
「くすっ、つーかまえた。それじゃいただきまーす」
side メリー
1分たった。
アローブレスレットの6と7のボタンを同時に押す。
「いっけー。ホーミングショックアロー」
私が放った矢は闇夜に消えていく。
「ガーグさんイントルさん、もう少ししたらコウサが光で合図をよこします。そこにサキュバスが現れます」
お願い、私の想いキチンと届いて。
side サキュバス
この男、見た目は悪いけど中々変わった魂を持ってるみたいね。
男は私の幻術の効果で既に意識はなくなっている。
「それじゃいただきまーす」
その時、私の結界の中に風切り音が響いた。
「いってー。メリーの奴少しは手加減しろよな。それじゃ、すっきり目が覚めた所で」
私の幻術が人間に破れたの?
あの男が私に向かって走り出て来た。
「残念ねー。また幻術で私の虜にしてあげる」
「無駄だよ。今の俺には大切な女の気持ちが注入されているんだよ。くらいなっ、最大光量のフラッシュを」
side ガーグ
プルングから今回の作戦の内容を聞いた。
おもしれぇ、あの坊主は噂以上におもしれえな。
自分を餌にしてサキュバスの結界に潜り込み、プルングの矢の痛みで幻術を破る。
闇の眷族であるサキュバスにとって光は苦手以外の何でもない。
それを目の前で喰らわされたら結界は崩れちまう。
つまり光が溢れ出した、そこだっ。
「いくぜ、イントル。ザイツにだけ楽しませてたまるかっ」
「ザイツ殿は楽しんではないと思いますけどね。ガーグさんサキュバスが姿を現しました。一気にきめますよ」
…………………
「ガーグさんもイントルさんも見た目通り凄い強さですね。サキュバスを一瞬で倒すんですから」
「いえいえ、私達としてはザイツ殿の見た目にそぐわない強さに驚いていますよ」
確かにザイツは見た目は弱っちいけど、とんでもない強さを持っている。
「よっしゃ、新生ガーグ冒険者隊の初仕事も無事終了。でも一番見た目と違ったのはプルングだよな。サキュバスを見つけた時の目はやばかったぜー」
俺とイントルが、ビビるなんて滅多にないんだからな。
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