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幕間二代目ザコの異世界冒険物語

 俺は自分の故郷が嫌いだ。

 家以外はどこにいても居辛いし、親しい人も少ない。

 大体、猿人がエルフの国に住む事が間違っていると思う。

 父さんから教えてもらった話に醜いアヒルの子がある。

 あれはアヒルの中に混じっていた醜いヒナが白鳥になったからハッピーエンドになる訳で、エルフの中に混じった猿人(ブサメン)がイケメンになる訳がない。  

(せめて姉さん達にみたいに外国に行けたら良いのに…俺だけに効く結界なんて酷くね?)

 俺の姉ちゃん達は綺麗だ。

 母さんの遺伝子が大活躍してエルフに混じっていても見劣りしない。

 しかし、俺は父さんの遺伝子が無双したらしく、猿人に混じっていても見劣りしてしまう。

 そんな姉ちゃん達も将来を見据えて外国に留学している。

 建前は文化交流だけど、父さんは姉ちゃん達に留学先で伴侶を見つけて欲しい様だ。

 それは国の為じゃなく、姉ちゃん達を思っての事。

 猿人はエルフより寿命が短く早く老けていく。

 姉ちゃん達も若い内はエルフに負けないだろう。

 でも自分だけが老けて旦那は若いまま…そんなの辛いに決まっている。

 ましてや俺ん家は新興貴族、周りからのやっかみも強い。

 俺も醜い猿人の子だと陰口を叩かれているし。 

 やっかみや陰口から逃げる為に、勉強や修行に励んだ。

 励んだるけどエルフィンには比較する相手がいない。

 筋力が弱いエルフに武術で勝っても自慢にならないし、俺の使える魔術はロキ様伝来の魔術だけ。

 外国に行けば自分の実力が分かると思うけど、ロキ様が張った俺限定結界のお陰でエルフィンから出る事は叶わない。


―――――――――――――――


 豪槍が唸りを上げて俺の腹をクリーンヒットした。

 呼吸困難に陥り思わず膝を着いてしまう。


「これで今日の修業は終わりだ。功貴、立てるよな?」

 ズタボロになった俺を見てガーグさんがほくそ笑む。


「へ、平気っすよ。まだ腹筋も腕立ても余裕っす」

 ここでへばった日には鬼王子が根性を鍛え直してやるとかぼざいて滅多打ちにしてくる。

 だから敢えてやる気を見せてポイントを稼ぐ…これぞやる気全開の優良弟子作戦。


「良い根性だ。なら腹筋二百に腕立ても二百。終わったら帰って良し」

 …やる気全開の優良弟子作戦は失敗したらしい。

 ボロボロになったブサメン猿人を見るエルフの目は冷たい。

 特に俺と同じ年代のエルフの目線の冷たさは氷点下である。

 訓練用の木槍を杖代わりにして家路に向かっていると、同い年のエルフ達を見掛けた。


(あっ、セレーノ…今さら掛ける言葉なんてないよな)

 痛む足に号令を掛けて物影に逃げ込む。

 痛む手で絶対結界を展開する。

 セレーノ・モノリス、俺と同い年の純血エルフ。

 小さい頃は良く一緒に遊んだけど、今は疎遠気味。

 勉強や修行が忙しい…そんなのは言い訳だ。

 自分がブサメンだと自覚して、エルフと猿人は違うと分かって、俺はセレーノを避ける様になった。

 セレーノ自身は俺を避けていないが、俺を嫌うエルフ達が俺からセレーノを遠ざけた。

 …セレーノに嫌われるのが怖いだけ、自分でも哀しいぐらいに情けなくなる。


(そろそろ行ったかな?…ここはどこだ?)


 気が付くと俺はレンガで作られた部屋にいた。


「功才君も恋愛はヘタレでしたけど、君も中々のヘタレですね」

 現れたのは木目調のスーツを着た紳士。


「ロ、ロキ様。ここは?」

 創地神ロキ、この世界を創った神の一柱で財津家の守護神。

 そして父さんを異世界地球から呼び寄せたお方。

 次いでに俺をエルフィンに閉じ込めた神様でもある。


「ここは魔導師の塔です。早速ですが功貴君、君には違う世界に行ってもらいます。私の知り合いに勇者召喚を計画しているお馬鹿な神がいるんですよ。戦闘経験のない人間を喚んで大したフォローもしない癖に困ったものですよね。だから貴方もそれに混じって事態を面白く…もとい正しい方向に導いて下さい。そして勇者をおちょく…もとい安全に元の世界に帰して上げて下さい」


「あの俺に拒否権は…」

 多分、そんなありませんって言われるのがオチなんだろうけど。


「もう転移術を起動したから無理ですよ…あっ、バナナはおやつに含まれんるんで気を付けて下さいね。オーバーした分は私が預かりますから」


「バナナどころか何の準備もしてないっすよ」


―――――――――――――――


 気が付くと見知らぬ部屋で見知らぬ人達に囲まれていた。

 耳が短いから猿人だと思うが、俺と違いイケメンと美少女ばかり…ロキ様、猿人だからモテないって言い訳が出来ないじゃないっすか。

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