ザコとメリーの準備
今回は少し短めです
side 功才
「メリー、森にはどんな魔物が出るんだ?」
「森では魔物より獣に気をつけなくちゃ。熊なんてゴブリンを餌にするくらいだし」
「森の中では、スモールファイヤーを使いながら進むか」
「山火事になるから禁止。森の中ではメリーの指示に従う事。わかった?」
フラッシュって言えば良かった
「こっちの森の事は、全然分からないからむしろお願いしたいぐらいだよ。それでメリー先生何を買ったらよろしいでしょうか?」
「何日も潜る訳じゃないから、そんなに必要ないよ。食料・雨具・テント・弓矢・塩・飲み水・ナイフ・香辛料ぐらいかな」
「飲み水はあてがあるから大丈夫だけと、塩とナイフ・香辛料って。まさか……」
「鹿とかウサギ美味しいんだよ。心配しなくてもメリーが捌いてあげるから。ねっ子兎」
「メリーさん、なんか最後の発音が違うんじゃないかーな」
「気にしない、気にしない。久しぶりに子兎シチューも食べたいな」
「ははっ、メリーは兎を捕るの得意なんだ」
「得意だよ。浮気なんてする悪い子兎を見つけたら直ぐに射っちゃうかもね」
メリー、目が笑ってない。
いや、浮気はしないから、大丈夫なんだけどね。
まだ付き合ってないし。
確認はできないけど。
――――――――――
出発前日、ミントに呼び出された。もちろん、メリーにも同席してもらう。
「コウサ君、これが頼まれていた虫籠だ。それとある貴族が噂を聞いて動くらしい。だからこの目立つ虫籠は渡したくないないんだよ」
虫籠は檻の形状をしており、丁寧に小さな扉もついている。
虫籠は木製であるが、銀細工や宝石が散りばめれており、人目を惹く。
「その貴族の事を教えてくれるっすか?」
「ゲース・ドンゲル伯爵。爵位こそシャイン様と同じ伯爵だが、人柄は比する事もないほど卑しい。ドンゲル伯爵は、昆虫標本のコレクターでもある」
そりゃまたおあつらえ向きな奴が来てくれたな。多分、ドンゲル伯爵はならず者を使ってジュエルバタフライを奪うつもりだろう。
「シャイン様はまだブルーメンにいるんすか?」
「虫籠を預かった時に君達の心配をしておられた」
「なら安心っす。予定変更になるっすが、明日シャイン様とミントさんに見送りお願いしたいっす。できるだけ目立つ格好でお願いするっすよ。それとこの手紙をお願いするっす」
「伝えておくけど、何か意味があるのかい?」
「細工は流々、仕上げをご覧じろ。だよねっコウサ」
メリー、それ俺が言いたかったのに。
出発当日
約束通りシャイン様はタキシード、ミントはドレスで来てくれた。
元々高名なシャイン様と最近噂になっているミントが連れ立って見送りをするとあってかなりの人だかりができている。
そして俺はこれみよがしに派手な虫籠をぶら下げて旅立った。
子兎のくだりはピトフーイ様から頂きました