ザコ≧勇者 準備は万端に
Side 功才
転移を終えると、哀愁漂う男性が待ち構えていた。
しかし、そのくたびれたサラリーマンみたいな容姿に騙されてはいけない。
何故ならこの人は魔法研究所の所長にしてルーンランドの暗部を担っている人。
「ヤ・ツーレ所長、わざわざお出迎えありがとうございます。これがお約束の食糧です」
米はエルフィンから提供してルーンランドで保管してもらう。
「これ程の食糧を良いんですか?」
「野外に保管庫を作ったり二重受け取りを防止する手間を考えたらルーンランドさんに管理をお願いした方が楽っすからね。各国は入国す時に兵士を何人連れて来たってルーンランドさんに報告するっすからその時に渡してもらえれば助かるっす」
そして重要な会議はルーンランド城内で開かれるから、足りなくなれば都度申請してもらえば良いんだし。
ちなみに美味しい米の炊き方とお粥の作り方はヘイムランドが売る飯ごうセットにつけてもらう。
「そうですか、こちらからの報告ですが新しいマジックアイテムを作りました。これでサン・エルフの悲劇は防げます」
ヤ・ツーレさんの話ではマジックアイテムは光属性の魔法をルーンランドに向かって使うとマジックドレインが発動。
その魔力で結界が出来るらしい。
(ドックタグに埋め込まれた魔石があれば出入り可能って事はマジックアイテムを作ったのはイ・コージかもな)
前にイコージの立て籠る城を攻めた時に似たような感じだったし。
「これはもう大量に作っちゃったんすか?」
「今はテスト期間中です。これから量産態勢に入る予定ですが、どうされましたか?」
「ちょっと俺のアイディアも加えて欲しいんですよね。それと結界の外に魔方陣と壁を構築してもらう事は出来ますか?」
そして次に俺を出迎えてくれたのは男前主任のエリーゼさん、隣にはワイルド系イケメン貴族でエリーゼさんの旦那さんのガドインさんもいる。
「おい、腹黒小僧。今度は何の用だ?」
「発動する結界に色を着けて欲しいんすよ。視覚効果を持たせて結界を壊すのは無駄って思わせたいんす。逆に正面は透明にして相手を引き付ける用にしたいっすね。それともう1ヶ所人目に着かない場所の結界を薄くしてもらいたいんすよ」
「本当に嫌な小僧だね。相手が放つ撹乱部隊を誘導するんだろ?それで壁ってのは何使うんだ?」
ヤ・ツーレさんの話だとレクレールには異端者審問隊って組織があるらしい。
そんなのに背後から攻められたらパニックに成りかねない。
「壁はL字型の物を2つ作るっす。そしてまずは敵の動きの監視と攻めて来た時の牽制として使うんすよ。その真ん中にチャーム消去と恐怖を与えれる魔方陣を作って欲しいんすよ。そして壁には連動させて結界を張れる用にするんす。中に人を閉じ込めれる様にお願いしたいっす」
「はぁっ?なんだ、そりゃ?」
驚いてるエリーゼさんとは逆にガドインさんの顔を歪めている。
「南エルフの女子供の保護の為か…」
ガドインさんがポツリと呟いた。
「もう1つ、こっちの士気を下げない為っすよ。いくら戦争とは言え操られている女性や子供は攻めにくいっすからね。下手すりゃ武器や防具を着けさせないで特攻してくるっすよ」
俺達が女性と子供で混成された敵の部隊を倒せば士気も下がるし、レクレールに大義名分を与えてしまう。
「ガーグもとんでもない小僧を手に入れたな。歳はマジックガールズや魔法学院の生徒と変わらないんだろ?」
「ウチの王子様はバリバリの武闘派っすからね。しかも相手がレクレールっすから予防は何重にもしとかないと」
いくら冒険者をしてたとは言えガーグさんは女性や子供に手は出しにくいだろう。
「分かったよ、先陣が野郎共なら普通に壁として使えるからな。それとこれがお前ら2人のドックタグだ。真ん中に埋めてある青い魔石がチャーム防止と結界突破の効果を持っている。チャームの威力が強ければ青が紫になって赤に変われば危険だ」
ドックタグにはきちんと俺の名前とかが刻まれている。
「すいません。これ直してもらえますか?私名前がザイツ・メリーに変わったんですよ」
どうやらエリーゼさんはガーグさんから俺の苦手分野を聞いてたらしい。
「ザコが勇者を?お姉さんも感動のプロボーズを聞いてみたいな」
ニヤニヤしながら問い質しはじめるエリーゼさん。
「聞く必要なくね?ってか恥ずかしいら勘弁して下さい!!」
「おや?本当にっすが消えたな。腹黒小僧も恋愛だけは年相応なんだな…それじゃ2人の出会から聞かせてもらおうか」
ガーグさん早く来て下さい。
ドSが俺をいじってます。
これでイコージが更新出来ます