ザコ≧勇者 ザコと退魔師
Side 功才
転移の光を抜けると、そこはマンションの一室だった。
目の前に顔をひくつかせた山田さんがいたけど。
「ザコ、何をやらかした?本部の結界が全部無くなったし本部詰めの精霊もいなくなったんだぞ」
山田さんは顔を青くしながらを頭を抱えている。
「…師匠、何したんですか?」
俺が結界とか精霊をどうこう出来る訳がない。
「どうやらここの結界では私の力に耐えられなかったみたいですね。貴方が功才君の先輩の山田大明さんですか、私はカラフルハートな魔導師ロッキ…気軽にロキ神様って呼んでくださいね」
師匠、神様なんだから正体をばらしたら気軽に呼べなくなるかと。
「ロキ?…ザコ、詳しく説明しろ」
山田さんの額には青筋がくっきりと浮かんでいて笑えない空気を漂わせていた。
「何と言いますか。俺を喚んだのはガチの神様な訳でして…でもロキ師匠はそんな威張らないし接しやすい神様ですよ」
そこから俺がオーディヌスに喚ばれた経緯を詳しく説明したんだけど、山田さんの顔がみるみるうちに汗だらけになっていく。
「ザコ!!神様に対して不遜な口の聞き方をするんじゃねえ!!ロキ神様と言えば高位の神霊に在らせられる方なんだぞ!!」
山田さんは俺の師匠に対する口の聞き方がなってないとお説教を開始。
そしてそれをニヤニヤしながら見つめる師匠…きっと、師匠はこれを見たかったに違いない。
「坊主で退魔師?山田さんマジなんすか?」
「マジだ。ったく高位の神霊なんて組織の人間でもお言葉を聞いた事がないんだぞ。それをお前は」
何でも山田さんは能力者互助会って組織に属して退魔師しているとの事。
俺達が来たのは能力互助会の本部にある一室らしい。
その組織に属している人間でも神様レベルになると、言葉を聞いた事があるのは100年に1人いるかかどうとの事…俺はメルアドまで知ってるのに。
「俺に言われても、師匠がロキだって知ったのも最近なんすから」
「ザコ、様をつけろ!!ロキ神様が来たなら本部の結界が保たないの当たり前かもしれないですし、精霊の方々も同席を不遜と思って戻られたのでしょう」
「あー、ガチのヤンキーが来たからがナリヤンが姿を消した様な感じっすね」
何でか分からないけど、ガチのヤンキーってナリヤンに厳しいんだよな。
「ロキ神様、この馬鹿には神様がどんな尊い存在なのかをよく教えておきますので」
そう言って山田さんは師匠に土下座をした。
「大丈夫ですよ、頭を上げて下さい。私のワガママで功才君をオーディヌスに喚んだんだし…そうだ!!貴方に良い物を授けましょう」
師匠はそう言うと懐から白紙の紙を取り出す。
「師匠、神が紙をだすってギャグですか?」
「さ、寒いです!!功才君、寒すぎです。放送事故並の寒さですよ!!…この紙に祈りを捧げると貴方も神霊と結縁が出来ます」
相変わらず俺にくれる物以外は無駄にチートなんだから。
「そんな私にはもったいないです」
山田さんは恐縮しまくり。
「でも貴方に徳が足りなかったり資質がないと誰も来ませんよ。それに私の弟子に協力してもらうんですから安いもんですよ。それじゃ功才君、戻る時にはワタシニ、デンワシテクダサーイ」
師匠はそう言うと手で受話器の形を作りながら姿を消した。
山田さんは紙を両手に持ちながら涙を流して平伏しちゃってるから俺が立っているのが非情に気まずい。
「コウサ、なんか複雑な関係だね」
きっと山田さんが居なかったら俺はメリーに癒しを求めていただろう。
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「戦争か…ザコ、死ぬぞ」
改めて日本に戻って来た理由を話すと山田さんはポツリと言った。
「やっぱりそう思いますよね…でも退けないんすよ。相手がヤル気満々で耳を貸してくれないんすよ」
オーディヌスでは魔物と戦いでも負けは死を意味するんだし、ましてや今度の相手は仲間にも容赦がないレクレール。
南エルフに囲まれた時点で俺は詰みだろう。
「札の礼もある…組織に頼んで色々と準備をしてやるよ。それでこれからどうするんだ?」
「何日かしたら家に行きます。姉ちゃんに親父と会う段取りを頼んでますから。そうだ!!山田さん組織の力で役人に仕込みを掛けれますか?」
念には念を入れて餌に食い付いてもらう必用がある。
「分かったよ。組織もロキ神様の頼みは無下に出来ないからな…何をすれば良いんだ?」
「親父がお米を食べようってキャンペーンに出てるらしいんですけど、その担当をしてる役人の家族が…する様にして欲しいんすよ。親父が…って噂と一緒に」
「分かったよ、任せておけ。それとこの部屋は好きに使って良いからな」
それじゃ足掻けるだけ足掻いてみせますか。
感想でザコが勝手ワンパターンって来ましたが負ければ死ぬんでそうなります