ザコ≧勇者 帰郷の決意
side 功才
いくら現代日本の技術を導入したとはいえ1年で収穫量が飛躍的にアップなんてあり得ない。
ましてや今はまだ収穫期前だ、ぶっちゃっけエルフィンの食糧庫に今すぐに戦争をするだけの余裕なんてない。
他の国も事情はそんなに変わらないと思う、何しろオーディヌスは精霊の加護で極端な不作はないらしい。
何より精霊が戦争を防いでる事もあり食糧の備蓄はそんなには多くないそうだ。
「コウサ、日本に何しに行くの?」
「米の買い付けに行くんだよ。飯盒はヘイムランドに作ってもらったから大丈夫だし、いきなり戦争になれば食糧を融通出来れば主導権を握れる」
同盟国って言っても一枚岩じゃないから主導権争いや手柄争いは絶対に起きる。
そんな時に隙をつかれたら自滅しかねないんだし。
「でもオーディヌスのお金と日本のお金は違うんだよ。大量のお米を買うお金はどうするの?物を売るにしても高校生じゃ怪しまれちゃうよ」
「安い米にも金にも目星がついたから大丈夫だよ、売る物と相手もね。後は師匠から許可が出れば良いだけ」
ちなみに師匠には書類を提出済み。
「そっか、それじゃエイカお義姉さんに連絡しなくちゃね」
連絡するのは姉ちゃんだけじゃないけど。
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携帯の画面で親父が笑っている、俺には十数年見せていない満面の笑みだ。
親父は農水省日本のお米を食べようキャンペーンCMに出ているらしい。
このCMを知って俺が狙ったのは日本の備蓄米の古米や古々米。
普通なら買えないんだけど、親父が農水省関連のCMに出てるなら話は別。
あの親父の事だ、高級官僚と昵懇になってる筈。
「功才君、お父さんとは仲直りしないんですか?」
「師匠が来てくれったって事は日本行きを許可してくれるんですね。帰りは荷物が多くなるんでお願いしますね」
米の他にも塩とかも買いたいし。
「日本から連れ出した身としては御両親と仲直りしてくれるとありがたいんですけどね」
御両親か…。
「仲直りって言われても、ここ何年も親父とお袋とはまともに話してないんです。それに師匠には感謝してるんですよ、オーディヌスに来れたからメリーやガーグさん達に会えたんですから」
あのまま日本にいたら彼女なんて夢のまた夢。
「分かりました、行く時と戻ってくる時は連絡して下さい…戻って来る先はルーンランドで良いんですよね」
「ええ、帰りは荷物が多くなるんで」
今度は自分の意志で日本に行く、オーディヌスで得た大切な人達の為に。
…姉ちゃんと美才へのお土産どうしよう。
俺が作ってるエルフィン名物エルフ饅頭とか萩の月をパクったガーグ王子の頭じゃ誤魔化されないよな。
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side 栄華
メリーちゃんからメールが届いた。
功才のいるエルフィンが戦争に巻き込まれて、その準備の為に功才と日本に来るから休みをとって欲しいって。
メリーちゃんが教えてくれなきゃ功才は私達に黙っていたと思う。
そして功才は絶対にオーディヌスに帰る、私や美才が止めても帰る。
だから日本にいる間はいつも通りに功才と話そう。
でも功才は忘れたのかしら。
私がメリーちゃんから全部報告を受けているって事を。
久しぶりに家族と絡みます