ザコ≧勇者 アボー君への誓
side 功才
アボー君からみるみるうちに血の気が薄れていく。
「師匠、なんとかならないんですか?」
師匠なら神である師匠ならアボー君を生き返られせる事が出来るかもしれない。
「神と言えども、いえ神だからこそ人を生き返られせてはいけないんです。神に好かれていたから生き返れる、神に嫌われたから死んでしまう。そんな事はあってはならいんですよ。でもこれだけは約束します、彼の来世は私が責任持って幸福を授けてあげます」
師匠の言葉は嫌になるぐらいに公平だった。
「彼奴ら、仲間が殺られたってのに怒りもしねえし泣きもしやがらねえ。こいつも何であんな奴等をかばったんだ」
ガーグさんの言う通り勇者達はアボー君の死に何の関心もしめしていない。
「ウッドの矢がアボー殿の足を貫いて地面に縫い付けてあるんだ。コウサ、同じジュンゲルの人間として自分に謝らせて欲しい」
ハンナさんが俺に頭を下げてくる、騎士に憧れたハンナさんは同じ村のウッドがした事に耐えられないんだろう。
「アボー君はヒイロが勇者に選ばれた事を本当に嬉しそうに話してんだ。それにさ、勇者パーティーに好きな娘がいるような事を話してんだよ。アボー君の後ろに精霊魔術師のアミがいたろ?アボー君が矢で射抜かれたから逃げなかったんじゃない。大切な幼馴染みや大好き女の子を守って死んだんだよ…でなきゃアボー君の人生が哀し過ぎるよ」
涙が次から次へと溢れだしてくる。
「コウサ、メリーの所に来て。メリーがギュッと抱き締めてあげるから好きなだけ泣けば良いよ」
メリーが母親の様な顔で俺をて招く。
「メリー、ありがとう。でも待って、この後の動きを見逃しちゃいけないんだよ。アボー君の為にも」
ローブの袖で無理矢理涙を拭う。
「はっ、何が勇者だ?かばってくれた仲間の死に涙を流せない奴が勇者の資格ある訳ねえよ」
チピーラがヒイロ達に悪態をつく。
「何で泣く必要があるのさ?アボーはレクー様の所に召されたんだよ、喜ぶしかないよ」
ヒイロが無邪気な笑顔で答える。
「重戦士のアボーは俺達をかばうのが仕事なんだぜ。何もおかしくないさ、そうだろ」
精霊騎士のエペイストが妹のアミに声をかけた。
「…そうだよね…」
「お前、アボーから花とかネックレスもらって困ってたからすっきりしたんじゃないか?」
異常だ、こいつら。
レクーを信じる余りにまともな善悪を判断出来なくなっていやがる。
「エペイスト、早く倒して次の魔石を手に入れようよ。次はニアの番だよね」
ヒイロが剣を構えたまま、チピーラに近づいていく。
「信じられません!!死者を、アボーさんの遺体を跨ぐとは」
イントルさんの言う通り、ヒイロ達はアボー君の遺体を跨いでチピーラに迫っていく。
アミが跨がなかったのが唯一の救いかも知れない。
「師匠、黒幕の所に案内してもらえますか?ヒイロを勇者に選んだ奴の所へ…精霊神官ネメジスの父親のレクレールの総神官長の所に」
「ザイツ、黒幕ってなんだよ」
「ヒイロは勇者の資質があったから選ばれたんじゃないんですよ。ヒイロはレクレールに都合の良い条件を持っているから選ばれたんだと思います」
ヒイロが勇者に選ばれた理由は騎士団長の息子と言うバックボーンがある事。
周りに才能ある仲間がいた事。
剣術の才能がある程度あった事。
「そしてレクーを盲目的に信仰している無邪気な少年である事。どんな非道な事もレクー様の思し召しとあれば喜んで行う人間だから勇者に選ばれたんですよ」
そしてヒイロ達と唯一幼馴染みでないのが総神官長の娘のネメジス。
彼女は父親の言葉をレクー様の言葉としてヒイロ達に告げていたんだろう。
「泣いていてもその辺は冷静なんですね…分かりました、案内しますよレクレールの総神官長アイディールの元へ」
ちなみに 作者は明日誕生日です 何の予定もないですけど なんか好きな食い物でも買うかな