ザコ達と試練 魔族現れる
side 功才
俺の危険探知ザコレーダーの反応がマックスだ。
「静かすぎじゃないですか？弓の１本か２本は飛んでくると思ったんですけどね」
今の所、弓どころかエルフが１人も現れていない。
「まだ気付いてないんじゃないかな？」
「メリー、それじゃ結界の意味がないだろ？自分の予想だとエルフは来ないんじゃなく来れないんだと思うぞ」
狩り娘と脳筋娘の立場はいつの間にか逆転していたらしい。
「コーウサー、何があったか教えてー」
そう言ってすがりついてくるメリー、イチャイチャしたくなるのは我慢しておく。
「ガーグさんの対応に精一杯なのか…それか魔族を警戒してるかだな」
「エルフには精霊が危険を教えてくれますからね。ガーグさんも精霊と会話できるそうですし」
ガーグさんが真面目にフェアリーとかと会話してたら笑えると思う、その前にフェアリーが怯えて近づかないだろうけど。
「イントルさん、エルフの集落はどっちですか？」
「向こうの辺りですね。大勢のエルフがいますよ」
イントルさんの案内に従って進むと聞き覚えのある声が響いて来た。
「だから魔族が近づいてるって言ってんだろうが。さっさと迎撃体制にはいりやがれ!!」
禿頭に青筋をたてて怒鳴りつけているガーグさん、その姿はどう見ても堅気の人には見えない。
「この里には聖なる結界が掛けてありる。それにここはエルフの集落、猿人に心配される必要はない」
相対してるのは金髪イケメンエルフ、あの２人が同じ種族って信じる人はいるんだろうか。
「エルフなら精霊の声に耳を傾けやがれ。来てるのは普通の魔族じゃねえんだよ」
「お前の様な猿人に精霊様の声が聞ける筈がなかろう。さぁ里が汚れる帰りたまえ」
金髪イケメンエルフの後ろにはセシリーさんがいる。
普段ならガーグさんを馬鹿にした相手に容赦はないんだけど、今のセシリーさんはガーグさんの剣幕に怯えている。
（このままじゃセシリーさんは記憶が戻ったら自分を責めるだろうな…仕方ない、俺が一肌脱ぎますか）
「どーもーすいません。冒険者ギルドから派遣されて来た者なんすけど、エルフの代表者の方はいらっしゃいますか？よろしかったらお話をお伺いしたいんすけども」
俺は金髪イケメンエルフに揉み手をしながら近づいていく。
「また猿人か。ギルドとは言えエルフの里の事には口を出さないでもらいたい」
「それがそうもいかないんすよ。どうやらこちらに強力な魔族が近づいてるって情報がはいったんすよね。つまり魔族が町にも近づく恐れがあるんすよ、ギルドとしては放っておく訳にいかないんすよー」
揉み手をしながら頭も下げつつ愛想笑いをする。
これぞ!!ザコの腰巾着モードだ。
「魔族の１匹や２匹我が魔術で返り討ちにしてくれる」
匹ね、こいつは魔族を人間扱いしないと。
「これはこれは頼もしいっすね、感激っす、男っす、まさにエルフの鏡っすよ…でも魔族は１人や２人じゃないんすよね、どうやら集団で来てるらしいんすよねー。そこで提案があるんすよ、私と一緒に来た３人もここにいるガーグさんも一角の冒険者なんすよ。そこで私達にエルフの皆様のお手伝いをさせて頂けたら嬉しいんすよね」
こういう時は一気にまくし立てるのがポイント。
「しかし、だな」
「仰りたい事は良く分かるっす。冒険者への料金はギルド負担で手柄もエルフの独占で良いんすよ」
「分かりました。お力を貸してもらいましょう」
返事をしてくれたのはセシリーさん。
「神官殿、軍事には口を出さないでもらいたい」
「神官だから分かる事があります。魔族は２００を超える集団で攻めてきております…幸いに冒険者の皆様はエルフが不得手な近接職のご様子。助けにはなっても邪魔にはなりません」
流石はセシリーさんしっかりと自己主張をしてくる、記憶はなくとも気の強さは変わらないらしい。
「それじゃガーグさんもそれで良いっすね。あっ、俺はコウサ・ザイツって小物っすよ」
「わーったよ。それで何をすりゃ良いんだ？」
来るのは２００人近くの魔物。
「ガーグさん、魔族はどの方角にどれ位いるっすか？」
「集団で固まって北の方にいる。で前衛を固めるのか？」
「結界があるから簡単に入って来れないっす。侵入して魔族を各個撃破するんすよ」
ちなみに俺は前衛職じゃなく中間管理職だ。
魔族とは戦わなくても嘘にはならないだろう。
「ザイツ、それは無理そうだぜ」
ガーグさんの指差す先には大量の魔族が空に浮かんでいた。
そして中央には一際大きい魔族がいた。
黒い肌に鋭い牙や爪、長く尖っている２本の角。
そしてでかくてゴツい、ありゃ３ｍはあるんじゃねえか？
「エルフども良く聞け!!俺は魔族のガセル・サーターン様だ!!命が惜しくば時戻しの杖を差し出せ」
ガセル、ガセル、セガル、セガ…なんて危ない名前なんだ!!
「魔族が何をほざく!!この聖なる結界を破れる訳がなかろう」
余裕一杯の金髪イケメンエルフさん。
「結界？こうするまでさ。お前ら突っ込め」
ガセルの合図で１０人近くの魔族が結界に体当たりをしてくる。
しかし、結界に触れた途端に丸焦げに…。
その後も体当たりを繰り返す魔族、しかし結界を壊せずに丸焦げに。
「だから言っただろう。これだから魔族は愚かだと言うんだ」
いや、あいつらの狙いはあれだ。
そうなるとあれが有効かも。
若い人には分からない危険な名前が…
けっして柔道着は着ません
