ザコ達と試練 ハンナとイントルの選択
side ハンナ
背後のトロルは自分に攻撃をしてくる気配がない、むしろリッチを牽制してくれてる感じだ。
「フム、オ前達二選択肢ヲヤロウ。女トロルヲ倒セバ仲間ヲ解放シテヤル。トロルヨ、ソノ女ヲ倒セバ人間ニナレル道具ヲ授ケテヤル」
リッチの選択肢に迷う要素はない筈。
それなのに自分は何故かトロルに武器を向ける事をためらってしまう。
「お断りします。貴方が人間になるマジックアイテムを持っている保証がありません。第一、人間になる為に人道にもとる事をしては本末転倒ではありませんか?」
不思議な事にトロルが理論的な意見を述べた。
「ホウ!!トロルニシテハ理知的ナ考エダナ。フム、女ヨ。オ前ガトロルヲ倒セバ騎士二推薦シテヤロウ。私ハ元宮廷魔術師長ナンダヨ」
騎士、夢にまで見た憧れの騎士。
理知的とはいえ、トロルは魔物だ。
トロルとリッチ、自分はどちらを信じれば良いんだろう?
side 功才
ヘイムランドでの用事が終わったので師匠にエルフィンまでの転移をお願いしたんだけど…
「…ここどう見ても魔導師の塔だよな。ガーグさん達かイントルさん達に何かあったのか?」
用事もないのに師匠が魔導師の塔に喚ぶ訳がない。
「貴方達には仲間の手助けに向かってもらいます。トロルさんは試練をクリアしたんですけどね。このままじゃトロルさんとハンネスさんが殺し合うかリッチの餌食になりそうなんですよ」
うん、何やら不吉な名前が出て来た。
「あの師匠、つかぬ事をお伺いしますがリッチってお金持ちの方じゃないですよね」
リッチなんて中ボスみたいな魔物にザコが勝てる可能性は限りなく低いんだけど。
「当たり前ですよ。永劫の命を手に入れた魔術師それがリッチです。トロルさんが試練をクリアしたので功才君の手助けを認めてあげます」
きっと、俺の拒否権も認めてくれないだろう。
師匠もメリーも…
「コウサ行こ!!イントルさんを傷つけたらハンナは立ち直れないよ」
イントルさんが着いてるから大丈夫だと言いたいんだけど、今のハンナさんにはイントルさんの記憶も俺達の記憶もない。
「下準備をする時間はありますか?…と…と…の…が欲しいんですけれど」
向こうでしか手に入らない物もあるから多少時間が掛かると思う。
その間にチートトロルイントルさんがリッチを倒してくれる事に期待。
「それなら今すぐに取り寄せてあげますよ…はい、どうぞ」
俺の頼んだ物を一瞬で手渡してきた。
どうやら神様だってカミングアウトした師匠は力を隠す気が微塵もないらしい。
「コウサ行こっ!!メリーとコウサが行けば絶対に解決出来る筈だよ」
その自信はどこから湧いてくるのかを一度聞いてみたいが…そんな度胸なんて当然持っていない。
「それではいってらっしゃいー。あっ言い忘れましたけど鉱山にはアンデッドが沢山でますから気をつけてくださいね」
きっと師匠は言い忘れたんじゃなく、愕然とした俺の顔を見たかったんだと思う。
―――――――――
俺達は次の瞬間には鉱山の前にいた。
心の準備は大切だと小声で訴えたい。
「さてと、プチフラッシュを発動させなきゃいけないから先頭は俺が行くよ。でもその前に師匠に取り寄せて貰った榊のおがくずにこれまた師匠からもらった聖水を掛けて…アローファクトリー」
彼氏の見栄を張りつつ、出来上がった矢をメリーに手渡す。
「コウサ、サカキって何?」
「榊は俺の国で清めに使われる木だよ。アンデッドに効果がありそうだろ?」
それに神様から直接もらった聖水が染み込んでるんだからアンデッドには効き目満点な筈。
プチフラッシュの光量を最大にして鉱山を進む。
師匠の話だと坑道を真っ直ぐ進めば良いらしい。
「コウサ、このまま歩いていったら間に合わないよ…そうだ!!確かコウサのリュックにライト付きのヘルメットがあったよね」
俺がヘルメットを手渡した瞬間
「瞬足!!」
スレイプニルさんから授けられた瞬足を発動させたメリーは彼氏の見栄をポイ捨てして奥に消えて行った。
side メリー
瞬足の力は凄かった。
普通に走ってるつもりなのに一瞬にして遠くへ行けるんだもん。
10回ぐらい瞬足を使ったら辺りが明るくなり始めた。
多分、もう少しでハンナ達がいる場所に着くと思う。
そしてここで
「コウサ召還!」
捕らえし者の能力の1つ、コウサ召還はどんなに離れていても一瞬にしてコウサを喚び出せる夢の様な能力なんだよ。
「メリー、ここって?どこ?」
次の瞬間、コウサがメリーの目の前に現れた。
コウサに泥棒猫が近づいたらコウサ召還。
コウサがガーグさんにいかがわしいお店に連行されそうになったらコウサ召還。
メリーが寂しくなったらコウサ召還。
まさに神様が認めた恋人同士の為にある能力だよねっ。
明日もどれか更新します