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ザコとお上品王国 ロキ師匠

side 功才


 アーキ王女はふらふらと歩きながら奥へと進んで行く。


(奥に見えるの水だよな…やべっ!!)

「絶対結界」

俺は小声で絶対結界を展開させた。

その小声のまま

「みんな結界の中に入って。そして何があっても声は出さないで下さい」


(コウサ、何がどうなってるの?アーキ姫ってキヨ・ワーグの事を好きじゃなかったの?)

声は出せないけど心の声、以心伝心なら平気な訳で。


(…師匠に会えてなかったらあんな風になっていたのは俺達かもしれないんだよ)

最も、師匠に会わなきゃ俺はまだ日本にいるんだけど。


(もしかしてアーキ姫はチャームを掛けられてたの?でもアーキ姫はさっきまでキヨ様とか言ってたよ)


(多分、一定の条件で発動するんだと思う。例えばこの場所に2人が来たら発動するとか)

さっきまでお互いを見つめ合っていた恋人達、でも今は女は恍惚とした表情で虚空を見つめて、男は彼女を哀しげに見つめる。

そしてその視線は、もう決して交わらないだろう。


「アーキ姫お迎えにあがりましたよ」

涼やかな声と共に現れたのは


(精霊騎士エペイスト!!やっぱりレクレールの仕業か)


「ああ、愛しのエペイスト様。どうか魔石をお納め下さい」

アーキ姫が恭しく2つの魔石をエペイストに手渡す。


「アーキ良くやったな。さっ、近くに来い」

エペイストはアーキ姫を抱き寄せるとキスをした。

しかしその視線の先にあるのはアーキ姫じゃなくキヨ・ワーグ。

その視線に含まれるのは侮蔑の感情。


「レクー様と相反する汚らわしい闇属性のネクロマンサーが美しき国レクレールに入れるなんて本気で信じたのか?冗談だろ、レクレールが汚れる」


「エペイスト兄さん、早くレクレールに帰ろうよ。その人はレクレールに連れてくの?」

エペイストに声を掛けて来たのは

(勇者ヒイロだよな…。エペイストの事は責めないのか?)


「ヒイロ勘弁してくれよ。そんな事をしたら俺がリュクス神官長様に怒られるだろ」


「同じリュクスでも神官長様じゃなく、ネメジスさんに嫌われるからでしょ?」


「こらっ!!ヒイロ」


「エペイスト兄さん、顔が真っ赤だよ」

おどけた態度を見せるヒイロ、そしてヒイロを怒ったふりをして追いかけるエペイスト、そしてアーキ姫は地に打ち捨てられる。


(レクレール国民、レクー信者じゃなきゃ人間じゃないってのか!!ふざけやがって)


結界から出ようとした俺をガーグさんが抑える。

(止めろ、船にはレクレールの大軍がいるんだぞ。今攻撃しても犬死にするだけだ)

俺の耳元でガーグさんがそう囁いた。


「ヒイロ、ハンカチを持ってないか。早く口を拭きたい」


「持ってるよ。ニアが"ハンカチは持ったの?"とか"傷薬は忘れてない?"って、うるさいんだよね」


「勇者ヒイロもニアに掛かったら、ただの手の掛かる幼馴染みだな。あっ、悪い。今は手の掛かる彼氏なんだもんな」


「エ、エペイスト兄さん!!」

今度はヒイロの顔が真っ赤になる。


「さっきの仕返しだよ。あっと、チャームを解除しとかなきゃ魔力がもったいないよな」


そして

「キヨ様、キヨ様、キヨ様ー!!」

正気に戻ったアーキ姫がキヨ・ワーグにすがりつく。


「うるさいなー。エペイスト兄さん、洞窟ごと消しちゃおうよ。魔石が手には入ったから光の5精霊様と契約が出来るんでしょ?」


「全く、ヒイロは何歳になっても光の精霊様達が大好きなんだな」


(これってとんでもなくヤバい展開じゃね)


 勇者達の姿が消えたと同時に

「セシリーさん、アーキ姫にスリープを掛けて下さい。ハンナさんはアーキ姫を背負って、イントルさんはキヨ・ワーグをお願いします」


そして逃げ始めた俺達の後ろから青い光が洞窟を崩しながら迫ってくる。


「マジかよ。間に合わねー!!ってあれ?」


俺達を追いかけてきた光は何時の間にか止まっていた。


「やれやれ、ロッキ様に姿は見せるなって言われてたんですけどね」


で、でけえ。

6m近い洞窟にギリギリ収まっているゴツい体。

振り向いた顔には鋭い牙。

(一難さってまた一難かよ。でも今ロッキ様って言ってたよな)


「トイザルスさん、よくやってくれました。あのままじゃ功才君達が粉々に砕けてましたよ」


「し、師匠?」

平然と現れたのは俺の規格外師匠、ロッキ。


「ロッキ様、有り難きお言葉、光栄至極に存じます」

トイザルスと言われた男は大きな体を縮こまらせて片膝をついた。


「まさか光の精霊が何体もレクレールに味方をするとは予想外でしたね。狂った信仰心を食べて癖になったんでしょうか。…さて功才君、レクレールは上級精霊と契約をしました。そこで君も契約をして下さい」

「契約って精霊とですか?でも上級精霊との契約は無理って言ったのは師匠ですよ。つうかトイザルスって誰なんすか?なんでそんな危ない名前をつけたんです?」

絶対にトイザルスは本名じゃないと思う。


「彼は私の手下の魔神さんですよ。功才君、君に契約してもらうのは創地神話に出てくるグレートでダンディでハンサムな神様と契約をしてもらいます」


「創地神話?なんすか、それ?」


「創地神話はオーディヌスに伝わる古い言い伝えですよ。昔、遠い地から3人の神様が来ました。1人は槍を持った様、1人は槌を持った神様、1人は深遠なる知恵を持った神様。最初に槍を持った神様が虚空に槍を突き刺すと土が集まり大地となり、次に槍を振るうと空が出来ました。次に槌をもつ神様が大地を槌で叩くと大地は細かく割れて大陸と島、そして海が生まれました。最後に知恵を持つ神様が精霊や様々な動物を喚び、この地は生命で満たされました。槍も持った神様の名前から、この地はオーディヌスと呼ばれる様になりました。これが創地神話です。もっとも今では魔術に詳しい人しか知りませんけどね」


「流石はトロルさんお詳しい。さて功才君、この話に出て来た深遠なる知恵の神様の名を当てて下さい。もちろん、ノーヒントです」


(予想は出来た、でも有り得ない。でもそうだとすると全部説明がつくんだよな。例えばオーディヌスと地球で共通する言葉が多すぎる事だ。シープ、エルフさらに居合い。俺達の世界で槍をもった神様で有名なのは北欧神話のオーディン、そしてオーディヌス。そうしたら槌を持った神様はトールだよな。そして最後の1人、北欧神話で知恵が働く神様と言えばトリックスター、ロキ。俺の称号にはトリックスターの弟子なんてのもある。そんでもって師匠の名前はロッキ。でもありえねえよな)


「北欧神話のトリックスター、ロキですよね。ロキ師匠」


「うわっ、あまり悩まないでつまらない!!功才君、あれでしょ、サプライズ潰しな人でしょ」


(あっさり認めちゃったよ!!)


でもロキと言えば悪戯好きな神様、まさに師匠だよな。

ロキって空飛ぶ靴を持ってるし。

ようやく功才が師匠の正体を知りました。

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