ザコとお上品王国 アボー君と勇者パーティー
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side 功才
前夜祭の翌日、予想通りエレガンスから行動の制限願いが出された。
内容は城下町や近くの海岸以外には行かないで欲しいと言う物。
「コウサー、時間も出来たしデートに行こっ。メリーはコウサと2人で海が見たいなー」
ちなみにガーグさんとセシリーさんはエレガンスの貴族が主催したパーティーに呼ばれているし、イントルさんとハンナさんは詩人イントルのファンの集いに呼ばれている。
「海か。それなら姉ちゃんに日焼け止めを送ってもらわないと」
メリーの雪の様に白く美しい肌にシミなんて出来たら大変、でも小麦色のメリーも捨てがたい。
「でも何で森に行っちゃ駄目なのかな。久しぶりに狩りがしたかったのに」
「外国からのお客様がクレイゴーレムに襲われでもしたらエレガンスの面子が丸潰れになるからね。なんせエレガンスは魔石自慢で兵士を持たない国だから」
森には粘土層があるから危険だけど石畳の町中ならクレイゴーレムは作れないし、砂浜なら海に逃げ込めばクレイゴーレムは溶けてしまう。
「兵士のいない町か。良く犯罪が起きないよね」
「まあ犯罪を犯したら最後クレイゴーレムに追い詰められるだろうからね。広い島だけど逃げ場は限られているいるし、それにエレガンスの貴族様達は強力な魔石を持ってるみたいだよ」
エレガンスには市民が使える武器屋は無いらしく市民の殆どが丸腰、早い話が丸腰の民を遠くから魔術で攻撃するって事、ちなみに魔術が効かない魔物とかにはワルキュリアの兵士や他国の冒険者にお願いをするらしい。
ガーグさん達が前に呼ばれたのは動きが素早くて狙いがつけにくいシルバーウルフって魔物だったからだそうだ。
「それならガーグ冒険者隊の出番はないって事?」
「もし何かあってお願いをするとしたら魔術師の多いルーンランドかエルフィンだと思うよ。騎士や戦士は武器の持ち込みが制限されているしね」
ちなみに魔術師の触媒や魔石にも持ち込みに制限が掛けられていた。
「それだとルーンランドはお願いされたら困るんじゃないの?メリー達の装備はコウサのリュックに入ってるから良いけど」
メリーの言う通り、俺の時空リュックにはガーグ冒険者隊の装備一式が閉まってある。
「時空リュックが持ち込み禁止にならなくて良かったよ」
ガーグさんやエルフィンの人達に聞くと、時空リュックからは洒落にならないレベルの精霊の力が溢れているそうだ。
「それはそうだよ。古代竜ビルクーロなんて昔話にしか出て来ないんだもん。それに素材にするには普通は倒さなきゃいけないんだし。生きたままの古代竜から鱗を取りましたなんて笑い話にもなんないよ」
向こうで言えば生きているライオンのタテガミを引きちぎるみたいな話。
「でも師匠にビルクーロって本当にいるんすか?って聞いたらジャグリングをする竜って動画が送られてきたからいるんだろうね」
動画には洒落にならない大きさの岩で泣きながらジャグリングをする黒い竜が映っていた。
あれがビルクーロなんだと思う。
――――――――――
メリーと一緒に宿屋を出るとそれはいた。
「メリーちゃん、こんな所で会うなんて偶然だね」
ウッド君が花束を抱えて現れる。
「偶然?メリーとコウサが泊まっている宿屋の前で偶然花束を抱えていたの?なにそれ?キモッ」
メリーはこれ見よがしに俺にくっついてくる。
「ウッドさんだから止めた方がいいって言っただべ。宿屋の前で偶然に再会なんて誰も信じないだよ」
「あっ、アボー君お久しぶりっすね」
思いっきり正論を言ってくれたのはレクレールの重戦士アボー君だった。
「アボーうるさい。君やそこの男と違って僕は格好良いだ!!偶然も絵になるそれが美男子なんだ。さあ、メリー僕と海を見に行かないか?」
うん、メリーが何でウッド君を嫌うのか良く分かった気がする。
「はぁー、だからこの勘違いキモ男をパーティーに入れるの反対だったんだよね。ウッド、これ以上レクレールの恥を晒すのは勘弁してちょうだい。アボー、もう行くわよ。ナルシスキモ男に付き合うなんて時間をドブに捨てる様なものなんだから」
アボー君に話し掛けて来たのは青い髪の少女。
あれは確か勇者パーティーのアミ・グロワール。
そしてどこか嬉しそうなアボー君。
「アミ、ヒイロとニアが2人で出掛けて悔しいからって負け犬の遠吠えかい?第一アボーみたいな醜い男は勇者パーティーに相応しくないって君も認めたじゃないか?」
ヒイロと言えば勇者の事で、ニアはヒイロの幼馴染みの精霊武術家の事だろう。
「あれはヒイロが言ったから…つい」
それを聞いたアボー君は可哀想なぐらいに落ち込んでいる。
「コウサ行こっ!メリーとコウサの2人っきりの甘い時間は1秒も無駄にしたくないんだから。それとウッド迷惑だから二度と顔を見せないで」
そう言うとメリーは俺と手を組んだままズンズンと歩き出した、俺としてはヘコんでるアボー君が気になるんだけども。
「勇者パーティーって人の痛みが分からないのかな。醜いからパーティーから外すなんて」
憤慨しまくりなメリーさん、その理論で言ったら俺は補欠にもなれないと思う。
「うーん、あの勇者を見ると悪気ってよりも無邪気なだけじゃないかな。ほらっ、子供が大きな虫を捕まえると前に捕まえた小さな虫に興味をなくすのと一緒だよ」
「それならコウサは勇者達とも仲良くなれるの?」
「それは無理だと思うよ。無邪気さは時には残酷で純粋さは盲信に繋がるからね。多分、勇者達の判断基準は善悪じゃなくレクーにあると思う。俺がレクーを信じない限りは勇者達とは相容れないさ」
これはかなり厄介な相手で、何しろどんな非道な事をしてもレクー様の為と信じちゃうんだから。
「でもアボー君可哀想だったね。きっとアボー君はあのアミって娘の事を好きなんだよね。それを目の前であんな事を言われてさ」
「モテない男は付き合いたいとか好きになって欲しいの前に好きな娘が喜んでくれるだけでも満足なんだよ。それにアボー君は俺と違って振られるのを怖がっていないんだろうね」
ちなみに俺はメリーに振られるのが怖くて他人行儀になった過去がある。
「それでコウサも1人でゾンビスラッグを倒しに行こうとしたんだ。あの時はコウサに嫌われたと思ってメリー凄く悲しかったんだよ」
当然、メリーも忘れてないらしい。
その日1日俺はメリーに頭が上がらなかった。
…いや、いつもと変わらないか。
そしてその日、エレガンス城の執務室には粘度の着いた紙が置かれていた。
紙には"魔石を返して欲しければ死者の洞窟にアーキ王女1人で来い"そう書かれていた。
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