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ザコとお上品王国 レクレールのお友達

ようやく勇者の名前だけでます

side 功才


 俺達を乗せた帆船は静かに海を渡っている。

予定では船上で海釣りをして久しぶりに刺身を食べたかったんだけども。


「ゴウザー、きぼち悪いよー」

メリーを始めエルフィンの方々が絶賛船酔い中。

俺は爺ちゃんと良く海釣りに行ってたから平気なんだけども、グロッキー状態のメリーに膝枕をしている為に船室から身動きがとれないでいた。

メリー達はエレガンスの港に着いても船酔いから回復せずに馬車で宿屋に、ガーグさんとイントルさんは船酔いはしなかったけどもエレガンスに挨拶に行ってしまった。

結果、俺の足下には大量の手荷物が残されている。

思わず小学生の時に荷物持ちジャンケンで俺以外が組んでた時や、中学の修学旅行でお土産持ちに任命された時を思い出してしまった。


「仕方ねえな。とりあえず荷物にライトウェポンを掛けてと…うん?あれは仲間だ!!」

ふと近くの船に目をやると俺と同じく1人で大量の荷物を抱えている少年がいる。

身長は190㎝ぐらいで、かなりごつい体つき、短い茶髪に人の良さそうな顔。

俺と同じブサメンで、彼も面倒事押し付けられの星の下に生まれたんだと思う。

向こうも俺に気付いたらしく、人の良さそうな笑顔で頭を下げてきた。


「お互い大変すね」


「でもオラはこれぐらいしか役にたたねえから」

誰に聞かれても問題のない玉虫色の言葉、まさに彼は俺の同類だ。


「やれる事をやっとけば問題ないっすからね。あっ、俺はエルフィンから来たザイツ・コウサっす、お互い下手こかない様に頑張りましょ」


「オラはエフォール・アボーだ。レクレールから来ただよ」

まじ?レクレール?


「レクレールって勇者様、清光の救者様達が活躍しているレクレールっすか?」


「んだ。ヒイロはオラの自慢の幼馴染みだよ」

アボー君が嬉しそうに笑った。

確か今回は勇者パーティーもエレガンスに来ている筈、それだとアボー君が持っているやらたらと派手な荷物は勇者パーティーの物なのかもしれない。


(どうする?アボー君から勇者パーティーの情報を聞き出すか?いや、それでアボー君が攻められたらやるせないしな)


「ザイツ殿、お待たせしました。荷物は私が持ちますよ」

挨拶を終えたらしく、イントルさんとガーグさんが走って来てくれた。


「イントル3人で分ければ良いじゃねえか。まっ、ザイツは貧弱だから少しで良いけどな」


「ガーグさんやイントルさんと比べたら大抵の人が貧弱になっちゃいますよ」

2人共、プロレスラーや相撲取りよりごついんだから。


「それがコウサ君のパーティーだか?わざわざ戻ってきてくれるなんてうらやましいだよ」


「リーダー自ら動かないといけない弱小パーティーなんすよ。俺達はエルフィンの護衛役で参加してるんす。アボー君それじゃ」

俺はアボー君と別れて足早に移動をする。


「おい、ザイツ。あいつは何者だ?弱小パーティーのリーダーに言ってみろ」


「アボー君はレクレールの勇者の幼馴染みだそうです。幸いつーかなんつーか勇者パーティーは先に移動してたみたいですね」


「あいつ1人に荷物を押し付けて移動か。勇者様は随分と良い御身分だな」

どう考えても地域限定勇者より偉い王子様が嘆く。


「でもレクレールの人は話に聞くのと随分と印象が違いましたね。もっと威張っているイメージだったんですけども」


「アボーさんは一般市民なんだと思いますよ。レクレールで権力があるのは騎士団や神官らしいですから」

多分、アボー君が下手を踏むとアボー君の家族が見せしめに罰せられるたりするんだろうな。

でも勇者の情報は欲しいよな…。


「ガーグさん、前にエレガンスに来た時に依頼を受けた貴族の名前は覚えてますか?」


「シターニ・イバーリ子爵だ。それがどうしたんだ?」


「イバーリ子爵の所にガーグさんに改めて挨拶に行ってもらおうと思うんですよ。エルフィン使節団を連れてね」


「ザイツ、また何か企んでやがるな。とりあえず船酔い連中が回復してからだ」


――――――――――


 翌日、ミッシェルさんを代表としたエルフィン使節団がイバーリ子爵の家を訪れていた。

ちなみにイントルさんハンナさんペアは他国へ挨拶まわりに行ってもらっている。


「これはこれはエルフィン聖王国の皆様、遠方より来て頂き申し訳ありません」

きちんとした礼儀で使節団を迎え入れるイバーリ子爵、もの凄く笑顔なのはエルフィンの王子様が数あるエレガンス貴族の中から自分の所に挨拶に来たのが嬉しく仕方ないのだろう。


「実は以前我が国の王子ガーグ・エルフィンローズがイバーリ子爵のお世話になったので、王子自ら挨拶に来させてもらいました」


「ガーグ王子様がですか?…そんなあれ位は当たり前の事ですよ」

イバーリ子爵が必死に取り繕う。

他国の王族との関りを忘れるのはかなりのマナー違反になるから当たり前なんだけどね。

何しろ殆どエルフで構成されているエルフィン使節団はかなり目立っている。

その上にワルキュレアで詩人イントルがエルフィン使節団に同行しているのを宣伝したお陰で注目度はかなりアップ。


「イバーリ子爵久しぶりだな。お前のペットのシルバーウルフを捕まえた時は随分と世話になったな」

イバーリ子爵は全てを思い出したらしく顔面蒼白になった。


「それじゃお願いがあるっすよ。レクレールの勇者パーティーを祝賀会で壇上にあげる手筈を整えて欲しいっす。嫌なら良いっすよ、イバーリ子爵がガーグ王子様と詩人イントルさんに働いた無礼が国中に広まるだけっすから」

礼儀を重んじる国の貴族だから嫌とはいえ言えないだろうけどね。

ちなみにエフォール(努力)アボー(囮)フランス語になります

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