ザコとお上品王国 逃げと企み
珍しくメリーが出ません
side 功才
今の俺は日本国民ではなくエルフィン聖王国の民である。
愛国心では純粋エルフにも負ける気はしない。
そして腹が減っては戦はできぬ、今のエルフィンに必要なのは安定した食料生産なんだ。
だから
「俺は行けません。ようやく農作業や養鶏が軌道に乗ってきたのに現場を離れる訳には行きませんから」
お上品王国なんかに行くよりも畑に水を撒いたり鶏に餌をあげる方が何倍もマシなんだし。
「畑や養鶏場は代わりのエルフがいるじゃねえか。新しい農法を覚えられるって各地から人が集まってるだろ」
確かに畑も養鶏場も人手は足りている。
しかしガーグさんは、何時の間にそこまで状況を把握できたんだろうか?
伊達に王子として国政に携わってないって所か。
「いや、俺みたいな不細工な猿人族が随行したらエルフィンの恥になります。だって俺は礼儀作法に疎いんですよ、そんな俺が行ってエルフィンに泥を塗りでもしたら俺は耐えられません」
遠くを見ながらポツリポツリと呟く。
その誠実さを演じきった姿は、我ながら見事に国思いの少年を演じきったと自負できる。
「端からザイツにはそんな事を期待してねえよ。礼儀作法は若い貴族連中に任せておけば良い、彼奴らの勉強にもなるしな」
そう言えばこの間イントルさんのマナー教室が開かれていたもんな、エルフがトロルからマナーを習うって。
「それなら俺は必要ないじゃないですか。将来のある若人から経験の場を奪う訳には行きません」
「お前の役割は小狡い頭で他国の連中と渡り合う事だよ。無料同然で祝いの品を作るなんて芸当は他に出来る奴がいねえだろうが」
俺が祝いの品に作ったのはプラスチックの卵ケースに絵の具で染めた砂を詰めた物、空気の入らない透明ガラスやプラスチックがないオーディヌスでは王侯貴族も垂涎の逸品。
「それで俺の役割は終わりでしょ?即位祝賀会で問題なんて起きませんよ」
「エレンガンスの奴ら、サンエルフやレクレールにまで招待状を送りつけたらしい。だからお前が必要なんだよ」
サンエルフにレクレールって絶対に一悶着あるに決まっている。
「何でワザワザあんな物騒な連中と絡む必要があるんです?帆船に乗るだけでも嫌だってのに」
帆船の事故率は低くないんだって。
浅瀬を航行するならともかく今回は島渡りをしなきゃいけないんだし。
「ザイツ、それが本音か?もう決定だ。王子命令で随行員に任命してやる…お前の事だ、腹案は出来てるんだろ?」
「…レクレールやサンエルフが絡んでくるなら練り直す必要があります。それとエレンガンスの情報がもう少し必要になりますよ」チャームは師匠が無効化してくれるとはいえ対策を全くとらない訳にはいかない。
――――――――――
俺はイントルマナー教室が終わるのを待ってイントルさんから詳しい話を聞く事にした。
「水の魔石に土の魔石にネクロンマンサーですか?それってそんなに強力なんですか?」
「なんでも水の魔石は古代竜が力を込めた物らしいですよ、巨大な水の竜を召還できるそうです。土の魔石も上級精霊が力を込めた物だそうです、効果はクレイゴーレムを大量に産みだす事。そこにネクロンマンサーが霊を封じ込めて兵士として戦わせるそうです」
いやいや、ゲームじゃないんだから。
そのチート効果は反則じゃね?
「でもさすがイントルさん、。随分と詳しい情報を掴んでますね」
「別に大した事ありませんよ。エレンガンスでは年に1回王様が海に向かって水の竜を放つのは有名ですからから」
海に水の竜を放つのなら自然への被害も少なく精霊も怒らないんだろうな。
「自国民と他国に対する威嚇ですね。王家は巨大な力を持ってるって宣伝ですか」
まるで、どっかの国の軍事パレードだね。
「それとクレイゴーレムがいるから兵士はいらないんでしょうね。土さえあれば無限に生産できますから」
「しかも食料はかからない、疲れない、痛がらない、斬られても叩かれても進軍を止めない最悪の兵士ですもんね」
クレイゴーレムそのものは弱くても四六時中攻め込まれるのは厄介だ。
「ええ、しかもエレンガンスは島国ですから外敵には水竜で対応して内乱にはクレイゴーレムで対応できますからね。軍事費にお金を掛けなくていい分王侯貴族は税を趣味に使えるんですよ」
兵士の人件費も防衛費も掛からないから国庫には余裕があると。
「でも王様が魔石を使える魔力がなきゃ意味がないですよね。…まさか補助員付きってやつですか?」
「流石はザイツ殿、宮廷魔術師がフォローに入るそうです」
あー、王様の恥は部下の恥と。
それじゃ色々と練りに入りますか。
メリーって受けが良いんでしょうか?
ここまでこいキャラになる予定はありませんでした