ザコと獣人の国 犬人族の国にて
side 功才
俺達は国境を越えて犬人族の国へと向かっていた。
「それで犬人族の国は何て名前なんですか?」
個人的にはバウバウランドとかワンダルフルシティとかに期待。
「犬人族の国の名前はワイズランドと言うそうですよ。私達はまず首都グレイスシティに行くそうです」
ワイズ(賢い)にグレイス(優雅)か。
つまらないが普通だよな、猿人族の国にモンキーランドとかウッキーシティがないのと一緒。
データボール参照ワイズスランド
コウサ君、ワイズランドには殆ど犬人族しかいないんですよ。
連絡役として猫人族や牛人の役人が逗留していますが猿人族は全くいません。何しろ悪戯した子供に"悪い子は猿人族がさらいに来る"なんて脅かす風習がある位ですから。
ちなみに現国王の名前はポチ・ワイズⅨ世さんです。
ワイズランドの国王は代々ポチを襲名するんですけど、まさかポチが古代語で勇敢を意味する言葉だと教えた事を、今だに信じてるとは思いませんでした。
訳して賢いポチ、師匠また原因は貴方なんですね。
(コウサ、今のがデータボール?)
以心伝心の効果でデータボールの結果がメリーにも伝わったらしく、小首を傾げて聞いてきた。
(そ、またの名を師匠の悪戯発表会。どうやら俺達はあまり歓迎されないみたいだね)
(みたいだね。でも何で犬人族は猿人族を嫌うのかな?)
(そりゃ簡単。統治をし易くするのと、国民の流出を防ぎたいからだと思うよ)
羊車の御者は犬人族がしてくれている、こんな内容を聞かれたら大問題だから以心伝心はありがたい。
(うー、またコウサは1人で納得するんだからー)
(猿人族は他人族を奴隷にする悪い種族だって言って悪者に仕立てる事で国民の不満を猿人族にぶつけたいのさ。そうすりゃ色んな不満は猿人族の所為ってなるからね)
天候が悪いのは猿人族の呪い、病も猿人族が流行らせたとか。
(それでよくエルフィンに頼みに来れたね)
(エルフは猿人族と扱いが違うのかもな…やべっ、男性陣は見た目で誤解を深める人ばかりじゃん)
ヤクザに魔物に三下。
犬人族における猿人族のイメージをさらに悪化させるよな。
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羊車には換気用の小さな窓が着いてある。
お陰で中からは外は見れるが外からは中は見えないらしい。
「普通だな」
「普通だねー」
ワイズランドに着いての感想がそれだった。
ワイズランドは至って普通の街、特徴と言えば他のオーディヌスの街に比べて建物が簡素なぐらい。
「骨付き肉の看板とかに期待したんだけどな」
「そんな事を言ったら猿人族の街にバナナの看板が乱立してる事になりますよ」イントルさんの言う通り、人と猿が違う様に犬人族と犬は生態が違うんだろう。
「建物が簡素なのは鎖国をして新しい技術が入って来ないからってとこですか。それにしても警戒されまくりですね」
道を行く犬人族の皆様は鼻をひくつかせては顔をしかめている。
「イントル、犬人族って若い娘が少ないのかな?街を歩いてるのが男しかいないよ」
「多分、猿人族に連れ去られるのを警戒しているんでしょうね」
イントルさんが呆れた口調で話す。
「くだらねえ。誰もワン公なんざに興味はねえってのによ」
ガーグさん、それかなりの問題発言になるかと。
「とりあえずお城に行って他の部族と話し合いですね。亀とか人魚はどんな感じなんですかね」
オーディヌスに来てから予想の斜め上を行く事が多く思わず警戒をしてしまう。
「犬人族と猫人族以外はティマー共和国から殆ど出ないみたいですから予想がつきませんよね」
願わくば、師匠の仕込みが少ない事を祈る。
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ワイズランドの城は石積みの簡素な建物だった。
「エルフィンやデュクセンの砦レベルか。犬人兵士も皮鎧が殆どか。でも何の皮だろ?」
「コウサ、あれは山羊皮だよ。あと偉そうな人達はアーマードボアの甲殻を使った鎧だね」
そういや俺が倒したアーマードボアの甲殻はエルフィンの商人が買ったらしいから意外とあの中にあるかもしれない。
犬人兵士さん達は遠くからでも俺達の匂いを嗅ぎつけたらしく臨戦態勢が充分。
「はぁー、頼み事しに来てあの態度ですか。そうだ!!ガーグさんここで威厳範囲拡大を使って下さい」
「いや今一使い方が分からないんだけどよ」
データボール参照威厳範囲拡大
ガーグさんとセシリーさんが一緒にいると発動されますよ。
使い方は相手をビビらせればOKです。
「…ガーグさんとセシリーさんが一緒に出れば効果が発動されるみたいですよ。いつも通りのガーグさんで行けば充分かと」
羊車からガーグさんとセシリーさんが降り立つ。
当然、エルフらしからぬガーグの容姿にどんびく犬人兵士さん達。
怯えを隠す為か、エルフらしいエルフのセシリーさんにターゲットを変えた。
「おい、エルフって随分と細そいな」
「見た目が良いからってお高くとまってるよな」
聞こえる様にコソコソと話す犬人兵士さん達。
「くぉら!!今ゴチャゴチャ言った奴ら前に出て来い!!俺はテメエの女を馬鹿にされて黙ってる程、人は出来ちゃいねえんだよ。なーに骨を折るぐらいで済ませてやる」
ガーグさんの大喝にシュンとする犬人兵士さん達。
あれが威厳範囲拡大なんだろうか?
「このチンピラハゲ。国の代表が自ら喧嘩を売ってどうすんのよ」
「いや、俺はセシリーを馬鹿にされたから」「ガー君の女房になるって決めた時からそれぐらい覚悟してるわよ。世話役の範囲を越えてガー君と一緒にいるだけでゴチャゴチャ言われてるから私は慣れてんの!!」
「だってよー」
「だってもさってもなし。少しは王族らしくドンと構えなさい」
犬人兵士さん達が大人しくなった。
どうやら威厳範囲拡大はセシリーさんにも効果があるみたいだ。
尻に敷かれし者とのコンボ効果って所か。
セシリーさんはお気に入りの1人です。
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