ザコと獣人の国 萌えない獣耳
side 功才
異世界に来て分かった事、萌えれる獣耳は、ほんの1部だけなんだよね。
先ずは猫人族の方々。
護衛組は黒猫とブチ、黒猫さんはマッチョで肌も日焼けをしいて肌も真っ黒、早い話がボディービルダーな猫耳。
ブチさんは何故か学ランを着ていて角刈りの髪と尻尾がブチ、早い話が応援団の団長な猫耳。
それで代表は白猫らしいがお顔は神経質そうな細面に眼鏡、言うなれば市役所の課長猫耳。
とりあえず誰も語尾にニャーをつけていないから一安心。
犬人族の方々の護衛は土佐犬とドーベルマン。
まず土佐犬の方はアイパッチをしていて軍服を着ている、早い話が鬼軍曹犬耳。
ドーベルマンの方は開襟シャツを着て金のネックレスにサングラス、言うなればヤーさん犬耳。
そして代表者はブルドックでシルクハットにスーツを着ている、言うなれば男爵犬耳。
皆さん、早く通せと騒ぎまくって門番のエルフさんは大困り。
「お仕事お疲れ様っす。それでこちらの方々はどちら様っすか?」
俺は顔見知りの門番エルフに声を掛けてティマー共和国の方々はあえて無視する。
「我々はティマー共和国の遣いの者である。なぜに猿人族が出て来たのだ!!早く位の高いエルフを呼べ」
食い付いて来たのは男爵犬耳。
「俺の名前はザイツ・コウサ。猿人族っすけれどもガーグ王子様の側近をしている者っすよ。でも不思議っすよね、礼儀をわきまえてるティマー共和国からは書状が届いてないんすよね。書状も無く名前も名乗らずだと、王子様に取り次ぐのは難しいんすよ」
「良く回る口ですね。私は猫人族のミュウ・ミャー。ティマー共和国で猫人族の外務を担当しています」
猫課長、名前は萌えなんだ。
「儂も犬耳人族の外務を担当しているプー・ドルフ男爵だ。急の事ゆえ身分を証明をする物は持っておらぬ」
ブルドックなのにプードルとはこれいかに。
「ティマー共和国の方と信用するとして、要件だけでも教えて欲しいっすね」
「猿人族のあまりおふざけをすると痛い目をみるぜ」
低い声で絡んで来たのはヤーさん犬耳。
「俺達には時間がないんだ!!必要なら強制突破をしてでもエルフィン王家の方々に会いに行く。邪魔するなら容赦はしねえ」
気合いたっぷりな団長猫耳。
「それは勘弁して欲しいっすね。殴られるのは嫌だからお城に案内させてもらうっすよ」
わざとビビった振りをしながら、ティマー共和国の6人を馬車に誘導する。
目尻がざがった所を見ると自分達の恐喝外交がうまくいったと安心したんだろう。
いや、俺も安心したよ。
見事に罠に掛かってくれたんだもん。
俺とメリーは別の馬車に乗り込む。
ちなみに使者を載せているのは派手で見た目が良い高級馬車、中にはウェルカムフルーツも置いてある好待遇。
俺とメリーが乗っているのは見た目は普通の荷馬車。
でも足まわりやクッションをカスタイマズしていて振動は皆無に近い。
「コウサ、ティマーの人達の尻尾はあまり動かなかったよ。でも馬車に乗り込む瞬間にはヘニャってしなだれたていたよ」
「ありがと、うん予想通りの展開だね」
尻尾が微動だにしなかったって事は、あの強気な態度は演技の可能性が高まる。
「演技に熱中し過ぎて尻尾が不自然な動きになったんだろうな。…メリー苦笑いをしてどうしたの?」
メリーの苦笑いの意味が分かったのは、これから大分後の事だった。
――――――――――
城で出迎えを担当してくれる人は、気弱なエルフさん達を厳選してある。
自分達の偉容に怯えているのを確認して肩をそびやかすティマー共和国の方々。
「こちらにガーグ王子様がいるっすよ」
…………
固まっている、ガーグさんを見たティマー共和国の使者が固まっている。
王座に座るのはフルアーマーガーグさん、着ている鎧を使い古しの鉄の鎧、脇にはヘイムランド特製のミスリル鉈を抜き身で置いている。
その脇には鎧を着てミスリルスティックを持ったイントルさんとバトルアックスを持ったハンナさんが控えていた。
「良く来たな。俺がガーグだ。まあ、楽にしてくれ」
低音ボイスで迫力たっぷりに喋るガーグさん。
噂や俺の態度を見て強気な恐喝外交が通じると思っていたティマー共和国の使者の皆様は怯え始めていた。
「ありがたいです、それで話と言うのは…ヒィッ!!」
犬人族代表のプー・ドルフ男爵が近づこうとした瞬間、イントルさんのミスリルスティックが鼻前に突きつけられる。
「言葉と態度を改めてもらいませんか?それともティマー共和国は5カ国同盟と争うおつもりですか?」
ちなみにイントルさんのミスリルスティックにはエルフの血が塗られている。(指をナイフで切った後にセシリーがヒールを掛けたから問題はなし)
鼻の利く犬人族には何が塗ってあるか直ぐに分かる筈。
「決してそんなつもりは、それと5カ国同盟とは」
「黙れっ!!王子の許可無く直答する事は許さぬ!!」
イントルさんの大喝にビビりまくるティマー共和国の使者達。
「エルフィンではデュクセン、バルドー、ルーンランド、そしてヘイムランドと同盟を結ばせてもらった。何かあった時には協力をする為にな。それでお前達の用事はなんだ?」
ガーグさんが迫力満点の笑顔を浮かべる。
「あの、そのティマー共和国に魔物が現れて退治に協力をして欲しいのですが」
最初の勢いは、どこへやらプー男爵はしどろもどろに。
猫人族の課長猫ミャーさんに至っては顔面蒼白となり震えている。
そりゃそうだろう、今まで強気外交が通じていたエルフィンに来てみたら、現れたのは自分達の護衛より迫力がある王子様なんだから。
「構わねえが、だが無料なんて言わねえよな。俺は現役の冒険者でもあるんだぜ?ガーグ冒険者隊の荒くれガーグと言や少しは名の知れた男だ」
ガーグさん王座を降りてミスリル鉈を片手に持ちティマー共和国の使者に近づいていく。
さて、ティマー共和国から何を貰おっかな。
ちなみに皆さんの尻尾は、思いっ切り縮こまっいた。
次回は"所変われば名も変わる"
です。




