ザコとトンマ
前に一度出て来た坂本虎馬との幕間です
只之暇神さんからリクエストを頂きました
side 功才
ご両親公認の初めてを経験した翌朝。
俺はメリーの部屋で小鳥のさえずりと柔らかな日差しで目を覚ました。
そして隣には幸せな表情で寝ているメリーがいる。
夕べは何というか、俺が頑張り過ぎた所為で、疲れたんだろう。
「コウサおはよー!!メリーにモーニングキスをして」
俺の気配に気づいて目を覚ましたらしくメリーが手を伸ばして甘えてくる、腰が痛いのかあまり動けないらしい。
「メリーおはよ。でもこうしてみると縁って不思議なものだよな。俺が師匠に喚ばれて、メリーが乗っている馬車が襲われている所に遭遇して、メリーの隣の部屋になって、色んな偶然が重なって今の幸せがあるんだよな」
1つでも欠けていたら俺は30歳で魔法使いになっていたと思う。
「違うよ、メリーとコウサは出会うべくして出会ったの。だから偶然じゃなく全部必然だったんだよ」
「まっ、どっちにしろ俺はオーディヌスに喚ばれてなきゃ、男同士で馬鹿をやって彼女が出来なかったのは確かだよ」
きっと山田さんとバイトをしたり、虎馬と馬鹿をやっていたと思う。
山田さんは俺の事を知っているけど虎馬はどう思ってるんだろうか。
「コウサ、また考え事?今はメリーの事だけ考えて欲しいな」
メリーが頬を膨らませて拗ねてみせる。
くっ、なんて可愛いんだ。
「メリーの事だよ。向こうのダチに会えたら、メリーの事を自慢しまくってやろうと思ってさ。俺の彼女は可愛くて優しい最高の女だって」
さらにナイスバディで一途で積極的…
虎馬の奴、絶対信じねえな。
「向こうの人ってヤマダさん?」
「いや、坂本虎馬って奴。よく2人で馬鹿ばっかりやってたな」
「ロッキさんに頼めば会えるんじゃないかな?」
会えるかもしれないが、ある意味それは嫌がらせになるかもしれない、虎馬も俺と同じモテない君なんだから。
坂本虎馬は俺の中学の時からのツレ。
なんでも親父さんが坂本竜馬の大ファンらしく竜馬にあやかって虎馬と名前を付けたらしい。
(竜馬は恐れ多くて付けられないとの事)
俺のあだ名がザコで、虎馬のあだ名はトンマ。
お互いモテない、冴えない、情けないと似ていたし、あいつも料理が好きだから気があった。
―――――――――
side ロッキ
その少年と会ったの私が東京で占いをしている時でした。
私の占いテントを見つけれる条件は
1.功才君の知り合い
2.本当に解決したい悩みを持っている
3.私を楽しませてくれる
このうち1つでも満たせばロッキさんのグレートな占いテントを見つける事が出来ます。
そして例の少年はテントを胡散臭さそうに見ていました。
(ふむ、彼は功才君のお友達らしいですね。…ほー、彼も面白い運命を持っていますね。しかも彼を功才君と絡ませたら、楽しめます!!)
そうと決まれば功才君とメリーさんを喚びますか。
side 功才
それはメリーにジュンゲル村と周りの森を案内してもらっている時の事。
(メリーはプチヒールで回復済み)
俺の携帯から、あの音楽が鳴り出したんだ。
「コウサ、この音って」
メリーの顔がひきつっている。
「うん、プチロッキ君音頭。師匠からだよ」
パブロフの犬じゃないけど、俺の胃はプチロッキ君音頭を聞くと痛みだす。
これが鳴ると確実に面倒事に遭遇するんだし。
「師匠、今度は何があったんすか?」
「可愛い弟子が大人になったみたいですから、ちょっとしたプレゼントをあげようと思いましてね」
……
「師匠、普通は確認してから喚びませんか?」
携帯はまだ繋がっているのに、俺の目の前には師匠がいた。
「功才君、善は急げって言葉があるじゃないですか」
「俺は急がば回れ派なんですよね」
特に師匠絡みで、何の準備をしていないのは不安でしかない。
「ねぇ、コウサここってトウキョウじゃないかな」
テントの外を見るとオーディヌスには絶対にない高層ビルが見える。
「師匠、こんなにあっさり喚べたんですか?爺ちゃん達の前で泣いた意味がないじゃないっすか?」
「いえね、功才君に会わせたい人物を見つけたものですから。特別ですよ」
師匠が指さす先にいたのは
「トンマ!!」
「へっ?その声はザコか?お前、海外留学しているんじゃなかったのか?」
テントの中に入って来たのは間違いなく俺の親友のトンマこと坂本虎馬。
「ねえ、コウサこの人はお友達?」
ちなみにメリーは俺にびったりとくっついている。
「みなさーん、ここにに害獣がいますよー。リア獣が出ましたー!!塩を撒いて下さいー!!」
「それを言うならリア充だろうが!!つうか俺はナメクジか?」
「うるさいわっ!!人に断りもなく居なくなったと思ったら幸せをを見せびらかしに来やがって!!ザコなんて大人の階段から転げ落ちて豆腐の角に頭をぶつけちまえ!!」
「それ意味なくね?階段から落ちて豆腐にぶつかっても潰れるだけじゃん!!…トンマ残念ながら、俺はもう大人の階段を登ってしまったんだよ」
「くっ、ザコトンマ同盟まで破るなんて!!ちきしょー!!ザコなんて蚊に目蓋を刺されればいいんだ!!」
「なにその地味な願いは?しかも確実に不快感が増すし」
うん、久しぶりに会ってもトンマとの呼吸はぴったりだ。
「うるさいわっ。ザコなんてスイカのチャージし忘れに改札直前で気づけばいいんだ!!…また居なくなるのか?」
「何その微妙な辱めは?ああ、次はいつ帰って来れるか分からないよ」
「そうか、これやるよ」
トンマは鞄から小さな包みを取り出した。
確かあれはトンマの宝物の
「これはお前が大事にしていたペティナイフじゃねえか。お前の宝物だろ?」
「ああ、料理人なるって決めた時に親父がくれた物だ。俺の分身みてな奴だよ…ザコ良かったな、可愛い彼女が出来て。俺も嬉しいよ」
「次はお前に彼女が出来たらノロケ聞きに来てやるよ」
「お前と別れて涙をするなんて気色悪いからもう行くわ。奇蹟みたいな幸せを守れよ」
トンマはそう言い残すと街に走り出した。
「コウサ、凄い仲良いんだね」
あいつはメリーの事を話さないでも、信じてくれた。
「気の置けないダチだからな。師匠トンマに何かあるんすか?」
……
「マジっすか?師匠トンマに会わせてくれてありがとうございます」
師匠から聞いたトンマの未来は予想もしなかったものだった。
ちなみに虎馬はザコが終わり次第ある展開を考えてます