里帰りラプソディー 〜終幕〜
side 功才
俺の恋敵ウッド君はレクレールの勇者パーティーに所属しているらしい。
そして勇者パーティーは魔物を自分達で召還して自分達が倒しているとの事。
名乗りは清光の救者、清々しいまでの面の皮の厚さだよな
いや、勇者とかにはカラクリを教えていないのかも知れない。
「ねえ、コウサもしかしてヘイムランドで倒したヒュドラって」
ドワーフの国ヘイムランドにいる筈がないヒュドラちゃん(4歳男の子)が現れて、俺達が対応したんだよな。
「レクレールの連中がドワーフに武器を作ってもらいたくて喚んだんだろうな」
マッチポンプをしようとして喚んだのに、横取りされたんだから確実に勇者パーティーは俺達を逆恨みしてると思う。
ついでに言えばウッド君はメリーも横取りされたと思ってるんだろうな。
「それでコウサはこれからどうするの?」
「とりあえず同盟関係にある国のギルドに通達をだしてもらう。不自然な魔物が現れたら自国か同盟国の冒険者で解決をする様にってさ」
幸いにヘイムランド以外の首脳メンバーが、ここに揃っている。
流れ的に俺達に無茶振りが来るんだろうな。
「コウサ君、ウッドをどうするんですか?」
メリーパパは各国首脳陣と平然と話をしている俺を警戒してか敬語気味になっている。
「どうするもこうするも俺達が気付かなかった事にするしかないんですよ。ジュンゲル村にはウッド君の家族や親戚がいますし」
この狭い村で身内に殺人容疑が掛かれば人間関係がギクシャクしてしまう。
下手すりゃ村八分になるだろう。
「ウッドの妹のニーチャは良い娘だから、その方がメリーも安心だな」
二ーチャ・スレイヤーか、点が2文字ずれたらやばい名前。
「じゃないとあちらに戦う為の大義名分をあげる事になるからね」
レクーの思し召しを無視したばかりか、救者の1人ウッド・スレイヤーの家族に辛くあたったと。
「コウサ君、君の命を狙ったウッドに怒りはないのか?」
「怒ったら向こうの思う壺ですよ。今しなきゃいけないのは、どれだけ有利な立場に持っていけるかの下準備ですし」
本音を言えば、あまり関わりたくないんだけどね。
何しろウッド君はワイルド系なイケメン、長い銀髪に浅黒い肌に引き締まった体、モデル並の容姿。
メリーが俺を選んでくれたのが不思議な位の優良物件。
「お父さん、それよりコウサを家に泊めて良い?駄目なら私も宿屋に泊まるけど」
それは勘弁して欲しい。
彼女の実家なんて絶対に熟睡ができないから。
「そう言えばコウサ君はご飯がまだだったね。何か残ってれば良いんだけど」
メリーパパの見事すぎる方向転換、でもオッケーをされたら俺が困るし。
「そうだ!!コウサ久しぶりに何か作ってよ。最近コウサのご飯食べてないもん」
来た、ポイント稼ぎのチャンスが来たー!!
ここで料理の腕をみせればメリーのご両親の心証回復に繋がる筈。
せめて俺の事は呼び捨てにして欲しい。
「おーザイツの飯か!!久しぶりだな」
速攻ガーグさんが嗅ぎつけた。
まあ1人位増えたって手間は変わらないから良しとするか。
とりあえず今後の展開を話し合い解散とする。
―――――――――――
何故にこうなった。
「はい!!焼きそば5人前出来上がり」
とりあえず食材を確認すると大量の肉と野菜はあった。
流石は猟師が多いから肉は豊富にあるらしい。
野菜もこの日の為に物々交換で集めてくれたらしい。
でも使える調味料は塩が僅かのみ。
まあ、調味料は時空リュックにストックが沢山あるし、ロッキオンラインショッピングに加えてお姉様助けてアプリ(注:メリーとの進展状況報告及び、台本読みのお付き合い、愚痴聞き、装飾品送付を必要とする)もあるから何とかなる。
リュックからホームセンターで購入しておいたバーベキューセットを取り出して村で使っている焼き肉用の鉄板を敷く。
そしてロッキオンラインショッピングで焼きそばの麺やら小麦粉を大人買い(師匠も大事な弟子の挨拶に協力してくれるとの事)。
作るのはつまみにも主食にもなる屋台の定番焼きそば。
肉を好まないエルフの皆様の為にクレープ(ハンナママ達木こり奥様会からジャムや果物を提供してもらった)
その他には唐揚げ、お好み焼き等。
下処理や食材刻みはジュンゲル村婦人会の皆様が協力してくれる事になった。
でも味付けや焼きとかは俺が担当、つうか俺しか経験者がいないんだし。
「コウサ、焼きそば6人前追加だよっ!!。ローゼ、イチゴクレープ4個をエルフィン席に、ハーゼは唐揚げ6人前をルーンランド席にニーチャはデュクセン席にお好み焼きを8枚持って行って」
いやいや、俺は人気居酒屋の店長じゃないんだから。
ちなみにウェイトレスはジュンゲル村と周辺の村の村娘の会の皆様が担当してくれている。
その陣頭指揮を執るのはメリー、メリー曰く
「コウサのパートナーはメリーしか出来ないんだからね!!料理をしている素敵過ぎるコウサを見て、他の女の子が惚れるのを阻止するんだから!!」
メリー、鉄板の近くって物凄い暑くて汗だけらになるから、どん引きする娘はいても惚れはしないと思うな。
メリーパパを始める男性陣は各国のもてなしに行ってくれている。
「すいません、刻み野菜の追加お願いします。それとクーレプに使う小麦粉も溶いでおいて下さい」
「プルングさん、メリーちゃんの彼氏良く働くね。見た目はあれだけども安心だね」
「私はメリーが自分で決めたんなら反対しませんよ。それに恋愛なんて興味がないって言ってた娘が彼氏の為に率先して動いてる方が嬉しいですし」
よしっ、頑張れ俺。
まだ飯は食えてないけれど、気合いをいれるんだ。
今回の主役は俺の筈なんだけど頑張るんだ。
食材が切れた時の為に飯盒でご飯も炊いているし。
―――――――――
疲れた…。
嵐の様な接待がようやく終わった。
つうか娘さんを下さいどころか交際の許可さえもらっていない気がする。
イントルさんは婿殿扱いなのに。
「コウサ君、お疲れ様。飯も食べないで良く動いていたな」
へばっている俺に話し掛けて来たのはメリーパパ。
「プルングさん、これも俺の仕事ですから。楽しんでもらえれば同盟の強化に繋がりますし」
「君は何の為にそんなに一生懸命なんだい?君もウッドみたく愛や正義や勇気が大切だからと言うのかな?」
「俺は正義や勇気なんて立派な物は持っていません。それに俺が大切なのは突き詰めれば自分ですし。そんな身勝手な俺を恋人や仲間と認めてくれる人がいるから動くんですよ。早い話が自分の為です」
他人の為の、勇気や正義なんてエゴにしか過ぎないんだし。
「随分と正直なんだね」
「それに俺に正義や勇気なんて似合いませんよ。それを人様に言える程、立派な人間じゃないですから。俺が胸を張って言えるのはメリーを愛している事しかありませんから」
そんな看板は掲げる程、胡散臭くなるし薄汚れる感じがする。
「男としては好感は持てるが、義父にはもう少し見栄を張っても良いんじゃないかい。婿殿、いやコウサ」
「それじゃ認めてくれるんですか?」
「ああ、娘を頼むよ。君なら何があってもメリーを不幸にはしないだろうから。口じゃ幸せにしますなんて簡単には言えるけど、君は実際に動い見せてくれたし、そんな君の為に大勢の人が動いてくれたしね」
「ありがとうございます。プルングさんも飯はまだですよね。今、焼おにぎりでも作りますね」
「コウサー、メリーには梅干しとシーチキンをお願いー、味は醤油がいいな」
どこにいたのかメリーが食いついて来た。
「メ、メリー聞いてたの?」
「当たり前でしょ。これでようやく公認になれたね。今日はメリーお部屋に泊まってね」
「それは無理だって。まだ早い、心の準備が出来ていない!!」
次の日、前と違う意味で俺は寝不足になっていた。
side ウッド
何故だ、何故メリーにチャームが効かないんだ。
俺の方が格好良いし、メリーを愛しているのに。
「レクー様のご神託は絶対じゃなかったなか?俺とメリーは結ばれる筈じゃなかったのか?このままだとメリーはあの卑怯な不細工に騙されてしまうんだぞ!!」
「ウッド大丈夫だよ。君の魅力は絶対に通じるから」
「そうですわよ。レクー様の素晴らしさを彼女も、きっと分かりますよ。その為にも…」
幕間じゃなくなった気が
功才は大人になりました