里帰りラプソディー 〜狙われた理由〜
side イントル
さて、どうしましょうか。
私達トロル族は視力が良く暗闇でも目が見えます。
だからきちんと見えたんですよ、薄暗い森の中からザイツ殿を狙った人物が。
(ハンナ、耳を貸して下さい。……)
(えっ!!本当?うん分かったよ)
side ガーグ
ザイツの奴が身体中に生傷を作りながら球を転がしてきた。
身体を張った新しい宴会芸かと思いきや、ザイツめがけて矢が飛んでいやがる。
「ミッシェル、近衛の連中を展開させろっ!!」
隣ではマクスウェル伯爵も騎士団を展開させている。
「ガーグさん、荷馬車の保護をお願いします」
ザイツは必死で球を転がして来たらしく息も絶え絶えだ。
「ザイツ、何があったんだ?」
「師匠から連絡が来たんですよ。弓で狙っている奴がいるって」
「ちっ、このめでたい日に犯人探しをしなきゃいけねえのかよ」
下手すりゃ同盟がおじゃんだ。
「犯人の予想はついていますし、イントルさんに確認をしてもらったから犯人探しは必要ないですよ。でも出来れば犯人は逃げたから問題がないって展開にして欲しいんですけど」
「あん?ザイツお前の命が狙われたんだぞ?」
「同盟を守る為ですよ。それにイントルさんが見ただけじゃ認めないと思いますよ。それともう少し調べておきたい事もありますし」
しばらくするとイントル達と一緒にルーンランドの連中が戻ってきた。
「コウサ大丈夫?…コ、コウサその傷は?痛くない?痛いよね!!早く手当てをしなくちゃ」
怪我をしているザイツを見つけた途端にプルングの嬢ちゃんは絶叫、そしてザイツの側にピッタリと寄り添っている。
「メリー、コウサを自分の家に連れて来い。セシリー姐さんヒールをお願い出来ますか?」
「最初からそのつもりだよ。ついでにガー君が殴った所も治すね」
流れ的にプルングの嬢ちゃんの家に行くと思ったんだけどな。
ハンネスの嬢ちゃん家に着いてもプルングの嬢ちゃんはザイツの側から離れようとしなかった。
まあ、テメエの村で恋人が命を狙われたんだから仕方がないんだけどな。
side 功才
ハンナさんの家が凄い事になっている。
家の周りをエルフィンの近衛兵とデュクセンの騎士団がぐるりと囲んで蟻の子一匹入る隙間もない。
多分、ヤ・ツレーさんの部下達も周囲に潜んでいる筈。
でも家の中は、もっと凄い事になっていた。
俺達に加えてシャルレーゼ様とミッシェルさん、シャイン様とミント、そしてヤ・ツーレさんまでいる。
まあ、俺が呼んだんだけどね。
「ザイツ、それで犯人は誰なんだ?」
「その前にジュンゲル村の皆さんにお聞きします。ウッド・スレイヤーはどんな人物なのか教えて下さい。出来たら最近の事も」
「最近って言ってもな。ウッドの奴も、つい昨日帰って来たんだよ。まあ昔から見た目も格好良い、弓の腕も良い、正義感も強かったから、周りの村の娘にもモテたよな」
答えてくれたのはハンナパパ、つうか恋のライバルが完璧人間とか勘弁して欲しいんだけど。
でも弓の腕が優れているって情報はありがたい。
「親父、ウッドがモテたの周りの村の女にだけだぞ。少なくとも自分とメリーは興味すらなかった。…イントル、誤解しちゃ嫌だよ。自分の初恋の相手はイントルなんだからね」
ハンナさんはウルウルした目でイントルさん見つめている。
「コウサ、コウサの方がウッドの何倍も格好良いし、ウッドの優しさは独善的なんだよ。なんか自分は何時でも正しいみたいな感じでさ」
メリー、少なくとも格好良さはウッド君の方が10倍格好良いと思うんだけど。
「どこに行ってたいたか分かりますか?それと何か言ってませんでしたか?」
「確かレクなんとかって国に行って勇者の仲間になったって自慢してたぜ。それとメリーの事を根ほり葉ほり聞いてきたな」
答えてくれたのはメリーパパ。
その国は、やっぱりあのレクレールだよな。
「あちゃー、やっぱり最悪パターン的中だよ。不幸中の幸いはここに同盟国の首脳陣がいる事ぐらいかな。ヤ・ツーレさん何か聞いてますか?」
「まずはザイツさんの予想を聞かせて下さい。それに納得すれば私も教えますよ」
つまり、ヤ・ツーレさんは何か情報を掴んでるんだね。
「予想つうか消去法ですよ。まず犯人は村に詳しくて弓の腕がたつ人間じゃなきゃおかしいんですよ」
「コウサ君はジュンゲルの民を疑うのか?」
メリーパパは猟師仲間が疑われるのに納得がいかない様だ。
「プルングさん、最初の襲撃はあまりにも襲い手に好都合過ぎる場所だったんですよ。荷馬車を狙えて自分は薄暗い森の中に姿を隠す事が出来る、そんな場所は地元の人間じゃなきゃ分からないですからね」
「コウサの言う通り、あの森にいきなり行って荷馬車を狙える位置までは中々辿り着けないと思うな」
メリー、ナイスフォロー。
でも、メリーが俺にピッタリとくっついているから、ご両親の視線が痛い。
「それに犯人は俺を狙ったんですよ。同盟を壊したいんなら俺じゃなく違う人を襲った方が確実なんです。あの時、手前にいるペルーセン教授達を無視して、わざわざ荷馬車の中にいる俺を狙ってきたんですよ。そしてその後も矢は俺だけを狙って来た。ちなみに犯人の姿はイントルさんに確認してもらってます」
「君はそこまで分かっていて何で犯人を捕まえようとしないんだい?」
メリーパパが、さらにに問いかけてきた。
「イントルさんが見ただけで物証はないんですよ。それにバックが気になりましたからね。"僕達の仲間に殺人の疑いを掛けるなんて許さない"とかなったら相手の思うつぼなんですよ。でもバックはレクレールなんて最悪の相手でしたけどね」
「さすがはザイツさん。狙われながらも最良のパターンに持ってくる。最近周辺諸国で、そこには生息しない魔物が突然現れる事件が起きています。そしてタイミング良くあるパーティーが現れては、その事件を解決していくんですよ。彼等はこう名乗っています"清光の救者"と」
僕達は清光の精霊レクーの使いと言いたいんだろうね。
しかし救者とは、凄い上から目線だよな。
「そのパーティーに自称勇者とウッド・スレイヤーがいたんですね。
ヤ・ツーレさんの今回の目的はそれもあったんですね」
ウッド・スレイヤーの情報を怪しまれずに掴むには好都合なんだし。
「ザイツ、レクレールの連中は何で勇者を出してきたんだ?しかも他国の人間まで加えて」
「そりゃガーグさんイメージ回復の為でしょ。レクレールは勇者がいる正しい国だって言いたいんですよ。そしてウッド・スレイヤーはうってつけの人材ですし」
「コウサどう言う事?」
「他国者を加えて排他的なイメージを無くしたいんだよ。そして条件は見た目が良く腕がたつ事。それに正義感が強い事」
つまり自分達を正義の見方と信じて疑わない人間である事。
「そう言えば奴はメリーにチャームの魔術を使っていたぞ。見事に無効化されていたがの。チャームなんぞで女を手に入れようなんぞあさましい」
流石はシャルレーゼ様、魔術の発動が分かるんだ。
「勇者の仲間になればメリーが振り向いてくれると思ったんでしょうね。でも肝心のメリーは他の男と付き合っていた。しかもそれが卑怯で不細工、彼にしてみればメリーの救者になれると思ったんでしょ」
みんな、卑怯で不細工って所に納得していて軽くヘコんだ。
「それだけでコウサを狙ったの?メリーとコウサの愛はチャームすら無効にする完璧さなんだよ!!付け入る隙なんてないのにね」
多分、師匠のお陰だと思うんだけど流石に言えない。
でも師匠には感謝だよな。ここにいる人達と敵対させられたかもしれないんだから。
次は軽いホッとする幕間を入れたい