里帰りラプソディー "邂逅"
何気に重要な展開があります
side 功才
夢を見ていた。
遠くから笑い声が聞こえているのに俺は1人で暗闇にいた。
あれは確か中学2年の夏祭り、幼馴染み5人と一緒に行ったんだけれど、何時ものパターンであいつ等は取り巻きに囲まれて気付けば俺は1人に。
祭りの喧騒を聞きながら1人で帰ったんだよな。
そして今も遠くから宴の喧騒が聞こえきている。
どうやら俺はガーグさんの拳骨+イントルさんの投げ技で気を失っていた様だ。
俺はガーグさんの遠慮なしの拳骨で意識が薄れていく中で、イントルさんにこう言った。
「怪しまれない為にも、遠慮しないで放り投げて下さい」
イントルさんは優しいから、馬鹿力王子の拳骨でダメージを受けた俺に気遣って優しく荷馬車に入れてくる可能性が高い、それだと俺の計画が水の泡になってしまう。
でも俺は忘れていた、イントルさんは優しい以上に真面目な性格なんだよね。
馬鹿力王子の拳骨+イントルさんの荷馬車を壊さない程度の投げ技=俺は気絶。
「イントルさん、そろそろ絶対結界を解除しても大丈夫ですかね?」
「良かった。何も気配がないからザイツ殿が気を失ったかと心配していたんですよ。荷馬車の周りには誰もいません」
流石はイントルさん大正解、でもそのまま話したらイントルさんが自分を攻めてしまう。
だから絶対結界を張っていた事にしておく。
「何とか最悪の事態は免れたみたいですね」
メリーパパの俺への評価は最悪だろうけど。
「ええ、ハンナ達の村を滅ぼす訳にはいきませんからね」
最悪、俺やイントルさんは独り者に戻る可能性もある。
それでも恋人の生まれ故郷を滅ぼすよりはマシだ。
「イントルさんは、宴にでないんですか?」
「私は盛り上がっている宴に水を差す程、無粋じゃありませんよ」
「それにしても向こうは賑やかですね。こっちは虫の息づかいでも聞こえてきそうな位に静かなのに」
どうやらジン子爵の部下が荷馬車に通じる道を封鎖しているらしく、俺達の様子を見に来る人はいない。
「ザイツさんにしては珍しく詩的な表現ですね。でも私達には初対面の人との宴より、ここにいる方が気楽で良いじゃないですか」
俺もイントルさんも、第一印象はあまりよろしくない方だからな。
side ミント
コウサ君とメリーの婚約を楽しみにして来た筈なのに、肝心のコウサ君は荷馬車の中だし、メリーも表面状は笑っているけどれ、沈んでいるのが分かる。
腹が立つ事に、その原因となったジン子爵は得意満面といった感じで来客に酌をして回っていた。
「シャイン、このままで良いの?これじゃデュクセンの恥を教えただけだよ」
「良い訳がないだろ!!しかしコウサの事を思えば我慢するしかないだろ」
シャインの顔には苦渋が
溢れていた。
今回の事はジン子爵が情報を集めておけば免れたと思う。
「これはこれはシャイン伯爵とミントさん。宴はどうですか?あの生意気な猿人族のガキもトロルは私の部下が見張っていますので、ご安心下さい」
僕が文句を言おうとしたその時
「デュクセンの恥曝しが!!コウサとイントル殿に救われた立場を忘れて何をのたまう。ここに集まった来客はその2人を祝う為に来てくれたんだぞ。即刻、お前の兵をどけろ。皇帝の耳に届けば領地召し上げや死刑は免れんぞ」
「私は一生懸命やったのに、そんな理不尽な…」
「貴方は自分の理不尽を嘆いて情報すら集めなかった。でもコウサ君は自分の幸せを捨てても他人の為に自ら理不尽な目にあったんだ」
僕の言葉にシャインが優しく頷く。
そしてすっと立ち上がった。
「来客の皆様に申し上げる。皆様は我等の友人、ザイツ・コウサとイントル殿が何をしたか理解している筈です。よってシャイン・マクスウェルの名においては兵は退かせました。我等の不器用な友人と歓談をして来て下さい」
その言葉でルーンランドの人達が席を立った。
side ハンナ
シャイン伯爵の言葉にあわせてペルーセン教授達が席を立った。
「親父、お袋、着いて来て。自分の大切なイントルがどんな人なのか見せてあげる」
「ハンナ、食べ物を持って行かなくいいのかい?2人共、何も食べてないんだろ?」
「今持って行ってもイントルは何も食べないよ」
イントルはコウサが入っている荷馬車の入り口を背中で塞いでいた。
そして教授達がすすめる酒や食べ物をこう言って断った。
「ザイツ殿も何も口にしていませんし、ガーグさんも国の為に屈辱に耐えています。そんな中、私が1人だけ皆様と飲み食いしながら歓談する訳にはいきませんよ。それに酒や食べ物より皆様と話が出来る方が私は嬉しいですから」
いい、イントルはやっぱり良い、ストイックで優しくて理知的で格好良くて。
そして教授達とイントルの座談会が始まった。
昔ならチンプンカンプンだった内容も、今なら理解出来る。
「ハンナ、頷いたり関心しているが、あの人達が何を言ってるのか理解出来るのか?俺にはさっぱりだぞ」
「自分はイントルから色々な知識を教えてもらったんだ。お袋は村に来た吟遊詩人から詩人イントルが作った詩を聞いた事ある?」
お袋は詩が好きで、村に吟遊詩人が来ると必ず聞きに行っていた。
「詩人イントルがハンナの彼氏?まさか赤髪の君はハンナの事だったのかい?」
後から聞いた話だとお袋は、だいぶ前から詩人イントルのファンになっていたらしい。
「ハンナ、俺が採ってきた最高のキノコがある、それと酒を持ってこい。俺は婿殿に酌をしに行く」
side メリー
村はガーグさん達の歓迎で収穫祭みたいな賑やかさ。
昔なら楽しめていたんだろうけれど、でもここにはコウサがいない、だから私はつまらないを通り越して寂しくて仕方がない。
「メリーちゃん、お芝居は止めちゃったの?」
「ウッド話しかけないで。今私は機嫌が悪いの」
「お芝居はメリーちゃんの夢だったじゃないか。僕なら君の夢を応援するんだけどな」
「私は今もお芝居をしているよ。舞台は劇場じゃなくオーディヌスに全体。そしてコウサが最高のシナリオを書いてくれる。私はザイツ・コウサの書いたシナリオで冒険をしているの!!」
「それなら僕と一緒に冒険をしないか?僕は勇者のパーティーにいるんだよ」
「だから何?その勇者様は何をしたの?私のコウサはザコだけど活躍をしてこれだけの人に影響を与えたのよ。コウサは勇者よりも素敵なザコなんだから」
もう、無理。
コウサがこんなに近くにいるのに離れ離れなんて耐えられない。
立ち上がろうとした私にお父さんが話し掛けてきた。
「メリー、俺が悪かった。改めてお前の彼氏を紹介してもらえるか?」
「お父さん、いきなりどうしたの?」
「シャルレーゼ女王様、ガーグ王子様、ミッシェル様、シャイン伯爵様、ミント様、ロックオーガ伯爵夫婦、ヤ・ツーレ所長。みんなこう言ったんだよ。"コウサは良い奴だから、頼む"って頭を下げてくれたんだ。中には何であんな事をしたのか教えてくれた方もいた」
コウサ、コウサの気持ちはちゃんとみんなに伝わっているよ。
side ロッキ
「メリーさんの幼馴染みが勇者のパーティーにいましたか」
「はい、しかもメリーさんにチャームを使った様です」
「精霊魔術程度のチャームが効く訳ないのにご苦労様ですね」
私がいる限り、チャームなんかでコウサ君からメリーさんを奪わせません。
可愛い弟子の為にも、友との約束の為にも。
ねえ、オーディンさん。
これから勇者や師匠の正体が分かっていきます。
師匠の正体は分かっていると思いますが