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ザコと姉妹 兄で弟

side 功才


 こうして振り返って見ると改めて思う。

良く無事だったなと。

つーかもう1回戦ったらボロ負けする可能性の方が高い魔物ばっかりだし。

だって念入りに下準備をしていたから勝てたんだし、いきなり襲われでもしたら即アウトになる自信がある。

もちろんと言うか当たり前と言うかゲームと違って強い魔物を倒したからって大幅にレベルアップするなんて夢みたいな話がある訳もなく、俺の強さなんてたいして変わってないんだし。


 「さて、そろそろエルフィンで歓迎会の準備が終わる頃ですね。それでは本日のメイン・イベント、ザイツコウサVSアーマードボアのシングルマッチをお送り致します」


はい?シングルマッチって俺が1人で?


データボール参照アーマードボア


体長3mを越える猪さんです。

一番の特徴は鎧の様な頑丈な甲殻を持つ事なんですよ。何でも食物を食べる時にカルシウムや鉱石が多量に含む土も一緒にとるらしいんです、武器は鋭い牙と体当たり。

でもアーマードボアのお肉は美味しいんですよ、パーティーに持って行けば人気者間違いなし、これで今夜のパーティーの主役は功才君に決まりです。


歓迎会だから主役は姉ちゃんと美才なんだけどね。

しかしメリーの為にも肉は手に入れておきたい。

何よりも勝てれば姉ちゃんや美才を安心させる事が出来ると思う。


「師匠、まずは俺が仕込みに行っても良いですか?」


「ええ、いいですよ。ジャイアントシープ達は元の場所に戻しておきます」


師匠が指を鳴らすと、丘の下には何もいなくなった。


「ちょっと功才何を考えてるの?貴男1人で戦える訳がないじゃない!!」


「お兄ちゃん、猪さんって強いんだよ?お兄ちゃんが怪我する所なんて美才見たくないよ」


姉ちゃんや美才が必死に止めてくる、まぁ昔の俺しか知らないんだから仕方がないが。


「大丈夫だよ。細工は隆々」


俺は一息おいてメリー達と目を合わせた。


「仕上げを御覧じろ」


ガーグ冒険者隊の声が1つとなり丘に響く。



―――――――――


 まずアーマードボアが来る前にリュックから鉄パイプを取り出しておく。

金属カッターで鉄パイプを斜めに切断する。

これで準備万端のつもりなんだけども…

現れたアーマードボアはどう見ても5mはある個体。

しかも目は血走っているし、息が笑えない位に荒い。


早い話がアーマードボアさんは、めっちゃご機嫌斜めなご様子。

あの状態で突っ込まれたら避け様がない。


だから

アーマードボアに向かって「シールドボール」


シールドボールに閉じこめられたアーマードボアの不機嫌はさらに急上昇。

何回もシールドボールの内壁に体当たりを繰り返している。

そんなアーマードボアにビビりながらも俺とアーマードボアと丘が一直線になる位置に移動。


それでアーマードボアに

「ライトソード」


続いてアーマードボアが体当たりしようとした瞬間にシールドボールを消す。


「マジックキャンセル」


すぐさま横っ飛びをして、体重が軽くなり勢いよく駆け抜けていくアーマードボアに


「マジックキャンセル&グラビティソード」


加速している途中に体重が重くなったアーマードボアの足に


「プチスタン」


アーマードボアは痺れた足のまま勢いよく丘に体当たりする。

たまらず気絶したアーマードボアの鼻に鉄パイプを差し込んで


「プチサンダー」


鼻の中なら電流の逃げ場は限られてくる。

俺は何回も何回もプチサンダーを重ね掛けしまくった。

当然、アーマードボアの脳にも電流が流れる訳で、何とか倒す事が出来た。



side 栄華


 成長した弟を見るのは嬉しい様な寂しい様な不思議な気持ちだった。

あの泣き虫な弱虫な臆病な功才がたった1人で巨大な猪を倒してしまったんだから。

きっと功才は私達のずっと先を歩いている。

そしてあの子には支えてくれる彼女や共に歩んでいく仲間がいる。


「今の功才は幼馴染みも父さん達の事も昔話になっちゃったのかもね」


「でもコウサにはエイカお義姉さんが必要なんですよ。コウサが頭を空っぽにして甘えれるのはエイカお姉さんだけですから」


メリーちゃんの目線の先には自分が殺めたアーマードボアを毅然と見つめる功才がいた。



side 美才



エルフィンで開かれたパーティーは美才も経験した事がない華やかさだった。

まあ、本当のお城で王族が開いてくれたパーティーなんだから当たり前なんだけどね。

王座の隣には正装したガーグさんとティアラやケープで着飾ったセシリーさん。


その脇に控えるのは鎧を着たイントルさんとハンナさん、そしてお兄ちゃんとおっぱい女は玉座の後ろに控えている。

パーティー嫌いのお兄ちゃんはいつの間にか主賓側になって如才無く参加者に挨拶をしていた。

お兄ちゃんが倒した猪はパーティーで振る舞われ参加者を驚かされている。

なんでもガーグ王子の側近には1人で巨大な猪を倒せる者がいるって言う宣伝も兼ね備えているらしい。

今のお兄ちゃん馬鹿幼馴染み達を軽く倒せると思う。

でもそれは大人が子供にケンカを売る様な事。

だって私達に話し掛けてくるエルフの人達は口を揃えてこう言うんだもん。


「エルフィンにザイツさんが来てくれて本当に感謝しています。彼は全てのエルフの大切な友人なんですよ」


死がすぐ側にある異世界に来て色んな人に慕われるまでになったお兄ちゃんからしたら、自分達の力が通じる世界だけで調子にのっている幼馴染みの連中なんかを相手にする気はないんだと思う。



side 功才


 パーティーが終わり姉ちゃん達が帰る時間が来た。

シャルレーゼ様の配慮で途中から姉弟水入らずで過ごす事も出来た。


「それじゃ行くわね。それと遅くなりましたけど、これは私からのお土産代わりです」


姉ちゃんがくれたのは活版印刷、農機具、製紙、井戸掘りなどの色々な技術をまとめたレポート。

内容も具体的で事細かな注釈がなされていた。

ただ物を持ち込むだけではその物が壊れてしまえばお終いだ。

その点姉ちゃんのレポートには制作道具の作り方まで書かれていた。


「姉ちゃん、忙しいのにありがとう」


「なに言っってるの。可愛い弟がお世話になっているをだから、これくらい当たり前でしょ。それに良い経験ができたしね」


確かにリアルに魔物と戦う所を見たら色んな意味で演技に幅が出来ると思う。


「お兄ちゃん、美才からはこれ」


美才が差し出してきたのはかなり大きめの段ボール。

つうかピヨピヨと鳴き声が洩れまくっている。


「美才、これってヒヨコ?」


「だってこっちの世界にニワトリさんがいなかったら卵焼きが食べれないし。昔のニワトリさんって卵をあまり産まないんでしょ」


確かにオーディヌスにもニワトリはいるが卵を産む数が少ないから卵はかなり貴重だ。


「美才ありがとな。養鶏が軌道にのったら最高の卵焼きを作ってやるよ」


しかしこうなるとあれが欲しくなるんだよな。

農地にも必要なんだし。


「さてと、それじゃ私達は戻るわね。みなさん功才をよろしくお願いします。弱くて姑息な弟ですが、音は優しく真面目な私の可愛い大切な弟なので」


ガーグさん達に深々と頭を下げる姉ちゃん。


「お兄ちゃん、次の長い休みには時間を作ってまた遊びに来るからね。みなさん美才の大好きなお兄ちゃんをお願いします」

美才も深々と頭を下げる。


そして2人が光に包まれていく。


「おっ、ザイツ泣いてるのか?似合わねえぞ」


「な、泣いてないっすよ。転移の光が眩しかっただけっすよ」


ここぞとばかりにガーグさんがいじってくる。


「コウサ、今更このメンバーに〜っすって演技は通じないと自分は思うぞ。ねっイントル」


「でも私は安心しましたよ。ザイツ殿も人に甘えるんですね」


「確かにお姉さん達といる時のコウサさんは、何時もより子供みたいでしたね」

俺が冒険者隊のメンバーにいじられている?


「それじゃ、この時間からはメリーがコウサに甘える時間。さっコウサお部屋に行こう」


こうして姉ちゃん達は日本に戻り俺達の日常が戻ってきた。



side ロッキ


 これで功才君がオーディヌスで築いた絆が再確認できましたし、功才君も姉妹とあって心が休まったでしょう。

これから始まる厳しい闘いに備えての休息、師匠から弟子へのプレゼントなんですよ。


予定では幕間を挟んで次の話、そしてラストになります。

と言うわけで読みたい幕間を募集します。

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