ザコと姉妹 姉の気持ち
side 栄華
心配で胸が張り裂けそうになる。
功才がまた無茶をして自分を追い詰めているんじゃないかと。
あれは確か功才が小学5年生の時。
その頃の功才は幼馴染みを追い越そう、父さんに認めてもらおうと無茶な努力をしていたのよね。
努力で全てを解決出来るなら夢が破れる事なんて事はない。
でも現実には同じ努力や半分以下の努力でも結果をだしてしまう秀才や天才と呼ばれる人間いる。
功才の幼馴染みは才能の神様に、えこひいきされた様な奴ら。
あの頃の功才は毎日あいつ等の倍以上に努力をしているのに、倍以上の結果をつけられていた。
そしてあの日、功才は泣きながら私の部屋に来た。
「姉ちゃん、僕ってポンコツなの?」
「功才、そんな事を言ったらお姉ちゃん怒るわよ」
「だって僕、隼人の倍の練習しても野球が上手くならいし勇牙のよりも多く走ってもリレーで負けるし、小百合や結よりいっぱい勉強してもテストで負けるんだもん」
この頃の功才は素直で真っ直ぐな子だった、だから周りからのくだらない陰口も正面から受け止めて倍以上に傷ついていた。
そして気付けば功才は努力する事を止めて自分が傷つかない様に人と距離を保ち始めていた。
確かに功才はオーディヌスに来て認められて恋人や大切な仲間が出来たみたい。
でもあの子は私の可愛い弟は人の期待を裏切れない子。父さんの期待に応えられずに見捨てられたから、また大切な人に捨てれるのが怖くて無茶な努力をしているんじゃないだろうか。
文字通り命懸けで。
side 功才
「さて次のゲストはトム・チーキン君とその婚約者のレミ・バルドーさんです。愛し合う2人は新しい町で新しい家庭を築いていくそうですよ。功才君、差をつけられちゃいましたね」
なんだろう、姉ちゃん達に加えてメリーからも強烈な視線を感じる。
師匠が指を鳴らすと、そこに現れたのは
「トム君?」
前は細身だったトム君が今や結構いい体格になっていた。
「コウサ君久しぶり。紹介するよ、僕の婚約者のレミ。レミ、彼がコウサ君だよ」
「トムからよく話は聞いています。トムったらコウサ君には負けたくないって言って体を鍛えてるんですよ」
あの人がレミさんか、メリーには負けるけど確かに美少女だ。
「そう言えばミスリルゴーレムは大きくなった?」
「今度のゴーレムならコウサ君に倒されない自信があるよ」
そう言ったトム君は自信に満ち溢れている。
「そう、功才君はミスリルゴーレムとも闘ったんですよね。ちなみにトム君の今のゴーレムを喚んでみますね」
勝てねー、あれには勝てねー。
トム君の体格が良くなった分、ゴーレムの体格も良くなっていた。
「何か中に入って操れそうな大きさになったね。レミさんにも乗ってもらえば作業効率があがるんじゃないの」
「中に乗ってゴーレムを操るの?…それなら安全性も増すし、レミに周囲の安全配慮や細かい作業指示をしてもらえれば操作に集中出来る。コウサ君、また借りが出来ちゃったね。コウサ君に何かあったら絶対に駆けつけるよ」
「トム、ゴーレムの改良も良いけど体を大事にしてね。コウサさんメリーさん結婚式に招待しますから是非いらして下さい」
ここはあのセリフを言うべきなんだろうけども、かなり恥ずかしいんだよな。
でも言わなきゃメリーが落ち込むし、お姉様に叱られそうだしな。
「絶対に行かせてもらいます。まだ何時とはいえないけれど俺とメリーの結婚式にも来て下さい」
出来るだけ爽やかに決める。
頷きながら光に消えるトム君達。
でもメリーだけテンションマックスで他のみんなは苦笑いってなんでよ。
似合わないの知ってるって。
「さてこの後コウサ君はフランソワ乙女騎士団と共に魔術師イ・コージが立てこもるお城に攻め込んだんですよね。そしてエルフ族のミッシェルさんに誘われて舞台はバルドーへ、そして次のゲストはこのお方です」
光の中から現れたのはトム君とは間逆の存在、今一番喚んで欲しくなかった人。
「ザイツさんお久しぶりです。ガーグこんな面白い事に誘ってくれないなんて酷いじゃないか」
腹黒エルフのミッシェルさんだ。
「お前を呼んだら全力で楽しむだろ?」
「当たり前じゃないか?強力な魔導師殿と知己になれる上に色々と楽しめる最高じゃないか。どうも貴女方がザイツさんの姉妹ですね。初めましてミッシェル・スターローズでございます」
今ならガーグさんの気持ちが良く分かる、あの黒い笑顔は胃にくる。
「お兄ちゃんなんかあの人の笑顔爽やかだけど怖いよ」
「美才見ちゃいけません。あの人に関わったらいじれれて終わりなんだよ」
俺と同種のミッシェルさんだけれども、向こうは準備万端、俺は防戦しか出来ない。
「ザイツさんが何をしてくれたかですよね。いっぱいありますよー。まずあそこにいるジャイアントシープを丸飲みできるギガントスネークを退治してくれましたし低級とは言え精霊を体を張って説得してくれました。バルドーで誘拐を繰り返していた貴族も退治してくれましたよね。今思うと良く無事でしたよー。そうそうエルフィンに来てくれてからもアーマーベアも退治してくれましたしまさに冒険者の鏡ですよ」
言われた、反論の隙を与えずに一気に言われた。
「お兄ちゃん精霊って強いの?」
「そうでよね低級精霊フローラルとも相対しましたね。今度のゲストはこの蛍です」
「お久しぶりぶりー!今日も元気だ草露が美味い、蛍型の精霊フローラルだっよーん」
必死だ、フローラルは必死に笑いを取りにきている。
「本来なら人なんかの前にに姿を現すのは癪なんだけれどもあるお方の命令だから来てあげたんだから感謝しろよっ」
フローラルが尻を光らせながらダンスをする。
うざい、相変わらず果てしなくうざい。
「あーフローラルさんお久しぶりっすね。神殿生活はどうっすか?」
「聞いてくれる?神殿の精霊関係ってグチャグチャなんだよっ。僕みたいな美しい精霊に対する嫉妬なのか可哀想なフーロラル君は孤独なんだよ」
それはただ単にうざいからだと思うが
「それではフローラルさん精霊の力を見せて下さい」
「はいっロッキ様。ストレス解消も兼ねた我が力をとくとみよー!!」
低級とは言え精霊だ。
溢れてくる力が凄い。
気付いたら姉ちゃんが俺をかばっていたし、美才は俺に抱きついている。
栄華さんの本音の回でした