ザコと姉妹 功才の軌跡はまさに奇跡
なんとか師匠の意図が分かる展開にしたいです
side 功才
「それじゃ改めて俺の姉妹を紹介します。まず先から俺に拳骨を食らわせてくれたり頬をつねったりしてくれているのが姉の財津栄華です。年は俺の3つ上の19才、俺をよく叩き俺をよく叱る…とても美人で優しいお姉様です」
叱るの続きをと言おうとした瞬間に姉ちゃんから怒りの気配を感じた。
でも無事に回避が出来たと思う。
「財津栄華です。皆様うちの愚弟がご迷惑しか掛けていない様ですいません…功才、皆さんからお話を聞いたらお姉ちゃんと1時間くらいお話をするわよ」
うん、俺が甘かった。
色々と危ない橋を渡ってきたからお説教だけで済めばいいんだけど。
「次に俺にひっついてるのが妹の美才です。年は…」
「財津美才14才、お兄ちゃんのとっても可愛くて大切な妹です。好きな物はお兄ちゃんが作ってくれる卵焼き、オーディヌスにいる間はお兄ちゃんに甘えまくる所存です」
流石は現役アイドル、自己紹介が手慣れている。
ただお兄ちゃんとしては無理に難しい言葉を使うのは止めて欲しい。
「見た目が似てないの昔から言われてるけども一応は血が繋がっていますから。ガーグさんシャルレーゼ様に挨拶をしたいんですけど大丈夫ですか?」
シャルレーゼ様は国政のトップにいるから、かなり忙しい。
「大丈夫だよ。ババアもザイツの姉妹に興味があるみてえで会うのを楽しみにしていたからな」
――――――――――
「そなた達がザイツの姉妹じゃな。ザイツは我が国にとって今や欠くべからず人材。安心してゆっくりとしていくと良い」
(姉ちゃん美才、あの方がエルフィン聖王国女王シャルレーゼ様だよ)
3人して片膝を着いてシャルレーゼ様の言葉を聞く。
新参者は礼儀はきちんとしておかないと目を付けられやすいし。
「おいババアなんでザイツの姉妹だってすぐ分かったんだ?魔術でも使ったのか?」
「はん!この馬鹿孫が。見た目だけで判断しとるからそんな言葉が出て来るのじゃ。近しい魂の色、お互いに信頼し心配しあっているのを感じればすぐ分かるじゃろが。まっ、セシリーにうつつを抜かしておる奴には分からんじゃろな」
姉ちゃんと美才が呆気にとられている、周りのエルフの方々は、また始まったと飽きれ顔。
「何でセシリーが出て来るんだよ」
「言っておくが儂はデキ婚なんぞ認めんからの」
(功才、シャルレーゼ様って女王様なんでしょ?なんで周りの人は止めないの?)
確かにガーグさんの態度は次期王位継承者としては難がある。
(ガーグさんのやり取りで健在さをアピールしてるんだよ。前も言ったけれどもガーグさんが戻って来てからシャルレーゼ様が明るくなったて言うし)
前は1人で国政を担う重圧からか笑顔も少なかったらしい。
「何で俺の話になってんだよ。ザイツの姉妹の歓迎会だろ」
「うるさい馬鹿孫、儂がガープと会えないで寂しいのを知っとる癖にイチャイチャしおって。歓迎会の準備まで時間がある、少しエルフィンを見てもらうが良い」
俺達はシャルレーゼ様の本音?を聞いた後エルフィンの城を後にした。
「コウサ、ロッキさんが来てるよ」
メリーが指さした先にいたのは"驚愕の魔導師ロッキさんと巡る財津功才のオーディヌスでの奇跡"と書かれた旗を持った師匠がいた。
「はーい皆様、今日は我がロッキハッピートラベルの主催する"ハンサム魔導師ロッキさんと巡る財津功才オーディヌスでの奇跡"に参加してくれてありがとうございます。この企画は日本からオーディヌスに来てくれた財津姉妹の為に私が思いつきで考えました。剣と魔法の世界オーディヌスでどうやって功才が生き抜いてきたかをお見せしたいと思います。旅の案内は私いぶし銀の魔導師ロッキことロッキ・バルボーが務めさせていただきます」
確かに転移魔法が使える師匠がいると短時間でオーディヌスを見て回る事ができる。
しかし何でだろう、俺のヤバさ感知レーダーが危険を告げている。
「さて参加する方は私の前に整列して下さい。あっ功才君は私の隣に来て下さいね。さてこれからロッキさんから旅をするにあたって幾つかのお願いがあります。まず1つ目おやつは300円まででバナナも含みます。2つ目水筒の中身はお茶か水に限ります。3つ目偉い人にも会いますから礼儀はきちんとして下さいね。4つ目魔物に襲われたらガーグ冒険者隊の方々に押し付けて下さい。5つ目何か疑問があったら、その都度功才君を問い詰めて下さい」
師匠明らかに順番がおかしいです。
オチ的なのは最後にして大事なのを最初にしましょうよ、つうか最後のがめっちゃ気になるんですけど。
「それじゃ皆さん行きますよー」
師匠が指を鳴らすと俺達を黄土色の光が包んでいく。
悪趣味な光が消えると俺達はレンガ造りの部屋にいた。
ここは師匠に喚ばれて俺がオーディヌスで最初に来た場所だ。
「はい皆さんここが功才君が私に喚ばれて最初に来た魔導師の塔です。いやー懐かしいですね、あの時功才君は言い訳をしつつ逃げようとしていましたけれど、あのまま逃げていたら今頃功才君はオーディヌスの大地と一体になっていたでしょう」
早い話が俺は死んで土に還っていたって事ね。
「この時期に功才君が無慈悲に倒した魔物はか弱いゴブリンさんと愛しい恋人がいたオーガさんでしたよね、功才君」
「確かにゴブリンとオーガは倒しましたけど試験だって師匠が言ったんじゃないっすか?なんか犯罪者扱いになってませんか?」
つまり俺を恨んでるオーガさんがいるんだね。
「ねえお兄ちゃんゴブリンやオーガってどんな生き物なの?」
「ゴブリンは小学生くらいの背丈を持つ子鬼で俺が倒したオーガは3m近いプロレスラーって感じだったよ」
今思ってもよくオーガを倒せたと思う。
「ザイツ殿、3mを越えるオーガと言ったらギガント種ですよ。オーガの中でも中位の強さがあると聞いてますが大丈夫でしたか?」
へっ?師匠は確か弱いオーガと言った筈だけども
「トロルさん大丈夫ですよ。ギガント種の中で弱いオーガを選びましたから」
ペテン師だ、今更ながら俺の師匠はペテン師だ。
「今から同じタイプのオーガを喚びますから屋上に行きますか」
その後オーガを初めて見た美才は泣いて俺に詰め寄るし姉ちゃんは何故逃げなかったとお説教。
この旅が終わるまで俺の胃が持つか心配になってきた。
次話では意外に人気の残念騎士ミントとシャイン様が再登場します
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