ザコと姉妹 逃げてきたら追い詰められた
side 功才
俺の大好きな言葉に逃げるが勝ちってのがある。
「ザイツなんでまたローブを着なきゃいけねえんだ。しかもわざわざ夜中に出発しなくても明日の朝にでも出発すれば良いだろうが」
「朝だとローブを着る意味が半減するんですよ。種明かしはヘイムランドを離れたらしますから。さっ、早く乗って下さい」
ガーグさんとイントルさんは人一倍ゴツいんだから日中だとローブを着ていても目立つんだって。
「おい、ザイツこれは荷馬車じゃないのか」
そう俺はヘイムランドの人に頼んで幌付きの荷馬車を用意してもらった。
ちなみに中にはワラが満載で隠れる事も出来るし寝床にもなる。
「細かい事は後で言いますから。ここで話してたらせっかくバラバラに宿を出てもらった意味がなくなるんすよ」
荷馬車はワラと俺達を乗せて夜道を走り出す。
「おい、そろそろ種明かをしても良いんじゃないか」
馬車が出発して10分が経ったぐらいでジレた様にガーグさんが問いただしてきた。
「種明かしも何もヒュドラを喚んだ奴等の目を誤魔化す為ですよ。ヒュドラを倒したパーティーは男女6人だってヘイムランドでも噂になってますし、冒険者ギルドには守秘義務はありますけど噂を抑える事は出来ないっすから」
だから俺達は宿をバラバラに出た、しかもみんなの荷物は俺の時空リュックの中。
みんなにはヘイムランドの街で自由に過ごしてもらってバラバラに荷馬車に乗ってもらう様に頼んでおき、その間俺は荷馬車の荷台に絶対結界を展開させていた。
「なんて言うかコウサは相変わらず小心者だな」
ハンナさん、そこは芸が細かいって言って欲しいな。
「ハンナこれで良いんですよ。ヒュドラを喚んだのがレクレールならまともに相手するのは得策じゃありませんから。エルフィンの馬車は明日の朝に出発してもらうんですか?」
「さすがはイントルさん正解です。宿のお金は御者をしてくれたエルフさんに預けておきました。あのロッジ風の宿には今頃明かりが灯ってますよ」
絶対結界を展開させている荷馬車の中から俺達の存在を感知するのは精霊魔術でも不可能なんだし。
「コウサはレクレールの何をそんなに恐れてるの?だって同盟は沢山できたんでしょ?」
俺の隣にいるメリーが質問をしてくる。
メリーはどうやったのか分からないが、広い荷馬車の中から俺がいる場所を直ぐに見つける事が出来たんだよな。
「宗教国家の怖い所は道徳、正義、利益、恐怖とか諸々の判断材料を差し置いてでも信仰心で動くところなんだよ。何があっても精霊様の思し召しで片づけかねないから」
一般的な道徳や正義よりも精霊様の判断が正しく信仰の為なら利益を損なう事も恐怖も厭わない。
「今回のヒュドラの件は私達が手柄を横取りしたとか考えるんでしょうね。さしずめ私達はレクーの意志を無視した大罪人と言ったところですか」
「ですね。だから俺達とエルフィンの関係はまだレクレールには知られたくないんですよ。最低2、3年は準備に時間を使いたいんですけどね」
土地の開拓や地質改善とかが収穫に繋がるのには時間が掛かるし。
「レクレールの国土には土地が痩せてるそうですよ。ですから簡単には戦は起こせないと思いますが」
俺は戦に一番大事なのは個人の武力や戦術じゃなく物量だと思う。
「だと良いんですけどね。私達に精霊様がついてるから大丈夫って戦を起こさない事を祈りますよ。さっそろそろ寝ましょ」
俺がワラに潜り込むとメリーが近づいて来た。
(コウサ、お休みのキスは?)
(メリーこの流れで、ここで?)
(うん、エルフィンに着いたら、おはようとお休みのキスを毎日しよっ)
エルフィンに着いたらロッキオンラインショッピングで歯磨きや歯ブラシとかを買っておかなきゃ。
――――――――――
慎重に行動したお陰で無事にエルフィンに着けたんだけども、俺には新たな問題が勃発していた。
美才へのホワイトデイのお返しにクッキーを転送したんだけども、それから美才が俺に会いたいとゴネている。
チョコやクッキーが転送出来るのなら人も転送出来ると思ったらしい。
ここはみんなに相談して反対意見を取りまとめよう。
そう俺は決して美才と一緒に来るであろう姉ちゃんが怖いわけじゃない。
ここは剣と魔法の世界オーディヌスに姉ちゃんや美才にもしもの事があったら大変なんだし。
「ガーグさん、俺の妹がこっちに来たいって言ってるんですけども猿人族だからエルフィンへの入国許可は降りないですよね」
「あん?そんな事は心配するな。お前の家族なら国賓として歓迎してやるよ」
くっ、ガーグさんがいらない理解力を示してきた。
「ザイツ殿の姉妹ですか。1度お会いしてみたいですね」
イントルさん遺伝子学的にみると笑えないぐらいに俺と似てない姉妹なんですよ。
「えーイントル、コウサみたいのが3人もいたら自分は大変だと思うけど」
そうだ、頑張れハンナさん。
「ハンナ、エイカお義姉さんはすっごい綺麗で優しいしミサちゃんもすっごい可愛いんだよ」
メリー正確に姉ちゃんは他人に優しく身内に厳しいんだよ、特に俺には厳しい。
「それじゃ決まりだね。ガー君、私は歓迎の準備をするね」
セシリーさん、そんなあっさりと決めなくても。
そうだ、全ての決定権を持つ師匠に根回しをしておこう。
そう思った瞬間、携帯からプチロッキ君音頭が流れてきた。
「功才君、今回は財津姉妹に贈るオーディヌスの旅、財津功才の活躍と奇跡を巡る旅をプレゼンしちゃいますね」
しまった、師匠は面白そうならのってくる人だったんだよな。
やばいジャイアントシープとかを見た時の姉ちゃん達の反応が滅茶苦茶こわい。
次回で久しぶりに財津姉妹がでます
栄華と美才がいると他のキャラが目立たくなる可能性が