ザコとホワイトデイ
おじさんが十代少女を書くのは無理が、バレタイン編並に劇甘です
side 功才
ホワイトデイがやって来る。
日増しにメリーからのコウサ何をくれるのかな!!のワクワク視線が強くなりプレッシャーを感じるんだけれども、悲しいかな俺は本命を返した経験がゼロ。
何時ものお義理チョコには功才特製クッキーを返しておくんだけど、多分絶対にメリーは姉ちゃんから色々な情報を仕入れているに違いない。
つまり最低でもクッキー+αが必要だよな。
クッキーの材料はロッキオンラインショッピングを使うとして問題はαの品。
お約束でいけばアクセサリー、服、花とか。
「おい、ザイツ。部屋に入って良いか?」
声のした方を見るとガーグさんとイントルさんが、ごっつい体を小さくしてドアの隙間から呼んでいる。
「良いですけど、どうしました?」
ガーグさんとイントルさんは、こそ泥の様に辺りを気にしながら部屋に入ってきた。
「話というよりも、相談なんですけと私達はほわいとでいを詳しく知らないので何を返したら良いか分からないんですよ」
ごめん、イントルさん俺も悩み中なんだ。
「いや基本はクッキー・マシュマロ・キャンディってお菓子なんですけども、一番は相手が欲しいと思う物をあげるのが一番みたいですよ」
「みたいって、お前の世界の行事なんだろ?」
「ガーグさん俺は本命チョコをもらったのは生まれて初めてなんですよ。今までは義理しかないから手作りクッキーで済ましてました」
ちなみに気合いを入れ過ぎてどん引きされた経験あり。
「あー、そうか。でザイツはプルングの嬢ちゃんに何を返すつもりなんだ?」
ガーグさんのなま暖かい目が痛い。
「おれは首飾り、ペアリング、ネックレスをあげてますから出来れば違う物にしたいんですけど。あっクッキーを作るなら俺が教えますけど」
それで開きました、ロッキオンラインショッピング。
師匠、狙ってるよな。
ホワイトデイ特集って、このサイト俺しか見ないじゃん。
クッキーの材料に加えてハートとかの金型、クッキーに文字をを書くためのアイシングの作り方、メッセージカード、ラッピング1式等々、そしてオーブンを魔導師の塔に用意しているとの事。
なんだろう、この準備の良さに恐怖しか感じられない。
しかし石窯でクッキーを綺麗に焼くのは至難の技。
師匠にお願いして魔導師の塔に転移させてもらったんだけど。
「皆さんせっかくビデオ撮影しているのに表情を硬くしちゃ駄目じゃないですか」
そこに待ち受けていたのは笑顔でビデオカメラは構える師匠と
(ザ、ザイツなんでこんな恥ずかしい格好をしなくちゃいけねえんだ?)
(ザイツ殿さすがにこの格好は照れ臭いんですが)
(すいません、全部師匠の悪巧みです)
俺達用のハート柄フリル着きのエプロン(ガーグさんピンク、イントルさん純白、俺黒)とハート柄のミトン、ハート柄の三角巾だった。
「はーい、最後には彼女への愛の言葉も撮影しますからね。もしガーグさんがお望みでしたらエルフィンの夜空に巨大スクリーンを作って映しますよ」
師匠を気にしていたら作業がはかどらない。
ここはメリーへの愛を思いっ切り込めたクッキーを作り上げるんだ、今まで培って来た技術をフル活用してやる、メリーならどんなクッキーもどん引きせずに受け取ってくれる筈。
そうだ、あれをやってみるか。
「師匠、…を作りたいんですけども買いに行って良いですか?」
幸いにルーンランドでハート型ペンダントとかを売ったから資金はある。
「コウサ君、顔に似合わずクサい事を思いつきますね。それ下手をしたらネタものですよ」
side メリー
今日はコウサの世界だとホワイトデイって日になるみたい。
コウサはどんなお返しをしてくれるのかな。
いつもなら起きたら直ぐにコウサに会いに行くんだけれども今日は我慢。
そんな時に部屋のドアを控えにノックする音が聞こえた。
「コウサおはよう。入って、入って」
あの控えめなノックは照れ臭い時のコウサが良くやるんだよね。
「あー、そのなんだ。ほらメリーからバレンタインにチョコをもらったじゃん。だからこれはお返しなんだけど良かったら受け取って」
コウサがくれたのは両手で持てる大きさの四角い箱。
(もうっコウサったら、お顔真っ赤にして。それに断られたどうしようって感じの子犬みたいな目。かーわいいーんだからー)
コウサがくれた箱を開けてみると中には大小様々はハート型のクッキーが入っていた。
イチゴジャムがはいったハート型のクッキー。
ココア、抹茶、きな粉を練り込んだっていうハート型のクッキー。
見ているだけで私のハートも満たされていく。
「真ん中にある四角いのもクッキー?」
「あー、それフォーチュンクッキーって言うんだよ。とりあえず割ってもらえれば分かるから」
かなりもったいないけど、言われた通りに割ってみると中から出て来たのは
「コウサ、これって!!」
クッキーの中から出て来たのは指輪だった。
「ほらっ本命に返すのにクッキーだけじゃ寂しいだろ?だからこの間の売り上げで買ったんだよ。それとたまには俺から」
コウサはそう言うと優しくメリーにキスをしてくれた。
side ハンナ
昨日からメリーが騒いでいたから、つい期待をしてしまう。
「ハンナ宜しかったらこれを受け取ってもらえますか?」
イントルがくれたのは自分への愛の詩が書かれたクッキーと花束と銀製の髪飾り。
これだっ、ガーグ殿やコウサには絶対に真似が出来ない紳士な振る舞い。
そして自分の為だけに書かれた愛の詩。
自分の自慢の恋人は強く誰よりも紳士で頭も良く、何より優しい。
前にイントルをフランソワ乙女騎士団の仲間に紹介したら、最初は"信じられない"と言われたが1時間もしないうちに"ハンナ、羨ましい"に変わっていた。
フランソワ団長に至っては詩人イントルの大ファンだったらしく、イントルにサインをねだる始末。
今日は一日中、イントルに甘えよう。メリーに言わせたら"今日もでしょ"とか笑われそうだけど。
side セシリー
普通に考えたら世話役が王子からお返しをもらうなんてのは考えられない。
下賜ならあるんだろうけどね。
だけど私とガー君の仲はそんなんじゃない。
だからガー君の部屋へいざ出撃。
「ガー君、今日は何の日だっけ」
「な、何ってなんだよ。お前それより世話役ならノックしてから入れ」
ガー君慌てている、何かを急いで隠したのを私は見逃さなかったよ。
「まだ世話役扱いなんだ…良いよ、ちゃんとガーグ様が正妻をもらっても世話役はするからさ」
良いわけがないんだけど、ガー君にはこの攻め方が効くってコウサさんが教えてくれた。
「馬鹿言うんじゃねぇ!!俺の女房はお前以外は必要ねえからな、正妻もくそもあるか!!ほらっこれはこの間のお返しだ」
ガー君がそう言って差し出して来たのは大きなハート型のクッキーと
「ガー君、これって王家のティアラ!!」
そうそれはエルフィンの歴代の王妃に受け継がれているティアラ。
「今はゴタゴタしているが、全部落ち着いたらそれをつけて俺の隣にいろ。分かったな!!」
大好きな人からの不器用過ぎる告白に私はただ涙を流していた。
それを見て慌てるガー君。
うん、決めたっ。
王妃になってもガー君の世話役は誰にも譲らない。
ガー君、私以外に手をだしたら覚悟は出来てるよねっ!!
ちなみに3組のカップルが部屋から出て来たと同時にメイキングホワイトデイが上映されて、男性陣はかなりの辱めを受ける羽目になった。
フォーチュンクッキーには普通おもちゃや十字架が入るみたいです。
ドワーフ編が終わったらホワイトデイ代わりに異世界姉妹旅行とかどうでしょう
師匠がツアーコンダクターで功才と関わった人達を姉妹と巡る旅