ザコとドワーフ ルーンランドからの出立
今回の話を書くのに色んな人に協力してもらいました。
side 功才
目指すはルーンランド魔法研究所の所長室、目標は新しい防具のゲット。
「防具の提供ですか?」
「もちろん無償って訳じゃないっすよ。後日ガーグ王子の帰還パレードがあります、その際に魔法研究所のロゴか何かついた鎧を着ていれば良い宣伝になると思うんすよ。それにルーンランドとエルフィン聖王国の同盟を広めるのにも効果があると思うんすよ。それとこれっす」
俺がヤ・ツーレ所長に見せたのは日本で購入した作業着と安全靴。
「これは変わった服と靴ですね。これがどうしましたか?」
オーディヌスは魔法がある為に技術面での進化が遅い。
まぁ大概の事は魔法で行えるから仕方ないんだろうけども。
「先ず服で見て欲しいのはチャックって場所とベルトとボタンっす」
オーディヌスの服は頭からすっぽりかぶって腰紐で止めるのが殆ど。
ボタンもあるにはあるけど紐で引っかける装飾ボタンがメインで所謂四つ穴ボタンは存在していない。
「確かに、この服は脱ぎ着するにも便利ですね。袖もピッタリしてるから毒虫が入り込む心配もないですね。靴も変わっていますね」
「足の甲の部分を叩いてみて下さい」
「これは金属ですか。面白いですけど一から作るとなると時間が掛かりますね」
「それはバラすと分かるんすが、つなぎ合わせているんすよ。場所事に分業制にすれば問題はないっすよ」
「わかりました。それでザイツさん達はどんな装備が欲しいんですか?」
「まず作業着は全員分をミスリル銀糸で作って欲しいっす。ガーグ王子、ハンナさん、イントルさんは金属で各パーツが分かれた鎧をお願いしたいっすね」
作業着は動き易いし、鎧はパーツ事に分けてバックル止め(マウンテンバイクのプロテクターをサンプルとして提出)にすれば動きの妨げにならない。
ベルトに至っては、腰紐が中心のオーディヌスでは画期的だし。
「わかりました。詳しい話はエリーゼ主任と詰めて下さい」
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「随分と面倒臭い作りだけど、量産できればいい儲けになると思うぞ。俺に任せておけ」「それで相談なんすけどもガーグさんの鎧とセシリーさんの服に…って入れる事できますか?」
「できるけど、ガーグの奴は納得するのか?」
「してもらうんすよ。試合の褒美が出せないなんなら自分で稼いでもらわないといけないっすからね。ついでにこのペンダントも売ってもらおうと思うっす」
「まっ、確かにアイツがそれを着けている姿は見てみたいからな。任せておけ」
おー、エリーゼさんったら男前なんだから。
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「これがルーンランドから提供してもらった防具です」
全員分のミスリル銀糸製の作業着には、ルーンランド魔法研究所とエルフィン聖王国のロゴ入り。
その他にガーグさん、イントルさん、ハンナさんにはボディアーマーとバックル留め形式のアームガードとレッグガード、ちなみにミスリル銀製。
そしてガーグさんの鎧とセシリーさんの作業着の背中には
「ザイツ、この背中の模様は何なんだ?」
案の定、ガーグさんは拒否しようとしている。
「あー、それはセシリーさんの服と合わせると…になります。きちんと2人の身長差も考慮してありますから安心して下さい」
「誰が、こんなこっ恥ずかしい物を許可した?」
ガーグさんが拒否するのは予想済み。
「ガー君、私が許可したんだよ。ガーグ王子、セシリーさんの幸せを祈って作りましたって言われたら断れないじゃない。まさか着れないとか言わないよね、ガー君」
うん、セシリーさんのガーグさんの扱い方は完璧だ。
最後のガー君は重低音で怖かったけど。
「今ルーンランドでは、ちょっとしたエルフィンブームですからね。今の内に既成事実を作っておけば純血派の横槍は入らないですからね。ガーグさん帰還パレード頑張って下さいよ」
文字通り、体を張って稼いでもらいましょう。
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その日ルーンランドは熱狂的なお祭り騒ぎとなっていた。
南エルフの卑怯な策略も物ともせずに劇的な勝利をした北エルフの一行が登場すると凄まじい歓声があがる。
先頭を歩くのは紳士な振る舞いでルーンランドの知識層に絶大な人気を誇る理知的なトロル、イントル。
その隣を歩くのは、凛々しい戦いが好評だった赤い髪の少女戦士、ハンナ・ハンネス。
イントルはグレーに染めた作業着、ハンナはベージュに染めた作業着、そしてその上に銀色に輝くミスリル製の防具を身につけている。
イントルの友人である画家のピルーネは、恋人に甘える赤い髪の少女と、少女を暖かく包み込む優しいトロルの姿を描いた。
その作品はルーンランドの国民に末永く愛されたと言う。隊列の中頃にはエルフには見えないがエルフィンの民に敬愛されているガーグ・エルフィンローズ王子と彼を一途に慕う世話役のセシリー・エルレインの姿があった。
彼らの出会いから再会までを描いた小説が魔法研究所より出版されて、今やガーグとセシリーはルーンランドで一番有名な恋人となっている。
ガーグは黒く染められた作業着と黒く塗られたミスリル鎧を身に着けおり、セシリーは純白の作業着。
2人の背中にはピンク色のハート模様が片方ずつ描かれており、ガーグがセシリーの肩を抱くと大きなハートが現れる仕組みとなっている。
そして、このパレードの仕掛け人財津功才は、目立たない様に茶色に染めた作業着を着て、新緑色の作業着を着た最愛の恋人メリー・プルングと共にガーグ王子の背後を歩いていた。
(いやー、見事にハートが出来たな。これであれも売れる)
(コウサ、あれって?)
(これを魔法研究所経由で露天で売ってもらってるんだよ。売り上げの1割が俺に来るのさ)
(これってハート型のアクセサリー?でも何で鎖が2つ着いてるの?)
(これは真ん中から2つに分かれるんだよ。俺が生まれる前に日本で流行ったんだってさ。まっ今じゃ身につける奴はいないけどね)
今の日本では殆ど絶滅しているが、ルーンランドでは新鮮味があって売れると思う。
(恋人同士が会ったらハートが出来るんだ。
ねえコッウサ、メリーも欲しいな)
いやいやいや、それは恥ずかしいからパスしたいんだけども、今のメリーを説得するのは不可能だと思う。
(メリー、姉ちゃんに写メ送ったりしない?)
後日、姉ちゃんが大笑いしながら電話を掛けてきたのは言うまでもない。
ビックリしたのは読んでくれている人にモトクロスをしている人が何人かいた事です。
作者の周りには、いないのに。
さすがにヒップホップをしてる人はいないですよね
次話でドワーフに会う予定です