表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/235

幕間 セシリー奮闘記

リクエストがあったセシリーとガーグが再会するまでの話です

side セシリー


ガー君と再会して、それまでの放置が嘘の様な進展で気が付けば恋人になっていた。

まぁ、あの鈍感ガー君でも周りで四六時中いちゃつかれていたら影響を受けてもおかしくはないと思う。

何しろ私が参加した当初のガーグ冒険者隊には恋人が2組もいたんだから。

早い話が余り物はガー君だけで、あの頃の移動や休暇は随分と肩身が狭い思いをしたってガー君が愚痴っていたっけ。

しかも女性が2人共エルフに負けず劣らずの美少女、さらに男が選び放題に違いない彼女達が選んだのは1人はあまり格好は良くない卑怯者で1人は理知的だけどもトロル。

その上不思議な事に美少女のメリーちゃんやハンナちゃんの方がベタ惚れなんだよね。

ハンナちゃんはイントルさんと話をする為に必死でお勉強しているし、メリーちゃんに至ってはコウサさん以外の男は不要と言い切る程の一途っぷり。

2人共、自分の彼氏を信用しきっていて、まるで若い頃の私みたい。

私なんて信用をした所為で8年も放っとかれたのに。


エルフにして見れば8年は微々たる年数。

でも恋する乙女にしてみれば気が遠くなる様な時間だった。

エルフィン聖王国は他国と積極的に交流を持っていない所為で、外から手紙が届くのは精々2月に1度くらい。

ガー君がいなくなって最初の1年はその日を心待ちにしていたっけ。

あの頃の私に伝えたい、ガー君は鈍感な上に女心のおの字も分からない、つまり待つだけでは無駄以外の何でもないって。

それでもガー君の噂とかが聞こえなければ諦めがついた…


「セシリー聞いた?ガーグ様キングオークを退治したそうよ」


「セシリー、ガーグ様が送ってくれた薬でレニの弟が一命をとりとめたんだって」


「セシリー、ホワイトームーン家のビリー様がデュクセンで盗賊に捕まったけど、ガーグ様に助けてもらったんだって」


噂を通り越してガー君のリアルな活躍だけは聞こえてきていた。

無事なのは嬉しいけども、薬を寄越すついでに手紙の1つでも寄越せっての。

それでも私は涙の再会を夢見てヒーラーと世話役の修行に励んでいた。

結局、涙の再会じゃなかなったし、ガー君はハゲていたし。


あれは私が19歳でガー君が20歳の時。


「セシリー、私はバルドーで宮廷魔術師をする事になった」


私にそう言ってきたのは、もう1人の幼馴染みのミッシェル。

見た目はエルフらしいエルフだからミッシェルに憧れている娘は少なくない。

でも私にしてみればミッシェルはガー君との大切な時間を邪魔するろくでなし腹黒。


「へー良かったわね。頑張って」


ムカつくー。

私も外国に出たくて仕方ないっていうのに、20歳になった途端にあっさり就職をきめやがって。


「私はバルドーで純血派に対抗する力をつけてガーグが戻ってくる場所を作るつもりだ」


ここでぬか喜びをする程、今の私は甘くない。

何しろこの4年間でガー君からの連絡は一切なかったんだから。

ミッシェルも気の長いエルフ、一体何年掛かるのか分かったもんじゃない。


「それだったら私の働き場所も作ってよ。いつまでもガー君をエルフィンで待ち続けるなんて性に合わないの」


でもエルフィンでは男性より女性が外国に出国できる可能性はさらに低い。

容姿や魔術に優れているエルフを欲する他種族の権力者は決して少なくないのだから。

実際ガー君が奴隷にされたり誘拐されたエルフィンの国民を何人か助け出していたし。

しかも、あのハゲは自分の名前も名乗らずに


「女エルフみてえに弱いのがこんな所でうろちょろしているから捕まるんだよ。とっとエルフィンに帰りやがれ」


と追い立てていたそうだ。


帰って来たエルフはかなり腹を立てていたけども、世話役翻訳をすると


「女性のエルフは美しく力も弱いから、ここにいるだけで狙ってくる他種族がいて危険なんだよ。だから早くエルフィンにお戻りなさい」

となる。

後からイントルさんに聞いたら、ガー君はこの時エルフを誘拐した盗賊を全滅させたらしい。

盗賊の頭に至ってはアジトの洞窟の壁に100回近く叩きつけたそうだ。


そして帰って来たエルフが怯えながら猿人族の恐怖を語った所為で、女がエルフィンから出国する条件がますます厳しくなった。

私はも出国願いをだしては却下されるの繰り返し。

ガー君がいなくなって8年がたったある日、ふいにミッシェルが帰って来てこう言った。


「近々ガーグがバルドーに滞在する。その時の世話役をセシリーに頼みたい。ガーグがエルフィンに戻すのにはセシリーの力が必要だからな」


私はすぐさま了承した。

そして


「ここは私の別宅だ。料理や面倒を見てくれるのは、セシリー・エルレイン。エルフだ」


ミッシェルが連れて来たガー君はハゲてゴツいおっさんになっていた。

それだけならまだしも、8年もほっといた癖に謝る気配も喜ぶ様子も全くなし。

えーえ、良いわよ。

絶対にガー君から先に久しぶりって言わせてやるんだから

それにガー君にも立場と言う物がある、いきなり世話役が出しゃばる訳にはいかない。


「セシリー・エルレインです。皆様、宜しくお願い致します。」


ミッシェルの話だとガー君は王子どころかエルフであることも隠しているらしいんだよね。

だからあえて知らない振りをしておく。


「呼び方はさん付けまでしか認めねえからな。様付けなんぞ胸糞が悪くならぁ」

へー、幼馴染みの私にガーグさんと呼べと。

意地でもガー君からセシリーと呼んでくれるまで様付けで通してやる。


「私はメイドですので、どの様な方でも、お仕えするなら様付けです」


「別に無理にあんたに面倒を見てもらわなくもいいさ。ここにいる連中は自分で自分の面倒はみれるからな」


おい、ハゲ今なんて言った?世話役の仕事を剥奪する気?

でも、これぐらい負けてたまるか!


「メイドが一度受けた仕事は好悪に関わらず遂行するので受け付ける事はできません」


ガー君、絶対に逃がさないんだからね。


「さて、ガーグ。最初の依頼だ。ロディーヌの近くの川べりにギガントスネークが出没した。退治を依頼する。依頼料は200万バル悪くはない話だろ」


ミッシェル馬鹿じゃいの?

ギガントスネークはエルフィンだと軍隊出動レベルなんだよ。

ガー君はあっさり引き分けるし、怪我したらどうするのよ。

ほらっ、ガー君ここに優しくてガー君想いな優秀なヒーラーがいるよ。


「皆様、私はここで御無事を祈っております」


ガー君がどうしてもって言うんなら、現場で治癒の祈りをしてあけでも…


「別に祈ってもらう必要なんざねえよ」


うわっ、今度は乙女の祈りも否定っ?

良いわよ怪我して泣いてもヒールしてあげたいんだからね。

いや、あの人数でギガントスネークを相手にしたら怪我人は必ずでる筈、困っている時にヒーラーの私が颯爽と登場、そうしたらガー君は改めて私の大切さを認識する筈。

そうしてガー君達は出掛けて行った。


「セシリーもう少し素直になったらどうだ?全くお互いに子供みたいな意地を張って」


ミッシェルが呆れた様に話し掛けてくる。


「張るわよ、意地でもガー君から先に幼馴染みだって宣言するまで意地を張ってやるんだからね」


私の期待も虚しくガー君はかすり傷の1つも負わずに帰って来た。


「皆様お帰りなさいませ。御無事で何よりです」


ガー君、剣で指に傷をつけてヒールを頼むとかのヒーラーへの気遣いとかはないの?


「けっ。あの程度の依頼を無傷で、こなせなきゃデュクセンじゃ冒険者なんてやってらんねよ」


無傷ってヒーラーを全否定じゃない。


「皆様、ガーグ様はデュクセンでよくお怪我をされていたのですか?」


「ははっ、無茶、無謀、無理やりがガーグさんの特権ですからね。ザイツ殿と組む前は、怪我をするのは日常茶飯事でしたね」


「へー、ガーグ様は、自慢する割には弱いのですね」

なーにが心配するなよ。

それなら早く私を呼び寄せれば良いのに。

痛いのを我慢して意地張ってさ、ガー君が痛みを我慢できても私はガー君が怪我をしているのを我慢できないんだよ。


「誰もあんたに自慢してねーよ。胸くそわりぃ酒でも飲んでくらっ!」


ちょ、お酒を飲みに行ったら積もる話ができないでしょ。

今なら可愛い幼馴染みが手料理とお酌をしてあげるんだから。


「都合が悪くなると、お酒にお逃げなるんですね」


絶対に酒場なんかに逃がさないわよ。


「あっ、なんか文句あんのかよ?」


もー、我慢の限界。

8年も放ってといて文句がないと思っている無神経さ。


「も・ん・く?大有りよ。て言うか文句しかないわよ。私がどれだけ心配していたか分かっているの?」


そうして久しぶりにガー君と私の日常が戻って来た。


「誰が心配してくれって頼んだよ」


「うわっ、子供じゃないんだから素直にありがとうって言いなさいよね。何よ、坊主なんかにしちゃってさ」


「俺は何時でも素直だよ。素直じゃねーのはお前だろうが?お前の澄ました面を見てたらむず痒くなるんだよ」


「いい年こいて、礼儀も碌にできてないハゲよりマシよ」


「うわっ、可愛くねー。そんなんだから嫁の貰い手がねえんだよ」


「何よっ。人の気も知らないで!!ガー君の馬鹿・ハゲ・意地悪」


「セシリー久しぶりに会った幼なじみに対して、普通そんな事を言うか?」


「そうよ。久しぶりよ、私がいくら心配してもガー君は手紙の1つもくれないんだから、随分と久しぶりなんだからねっ」


「俺にも事情があるんだよ。この分からず屋エルフッ」


「ハゲッ」 「泣き虫」 「鈍感」 「ガキッ」



――――――――――


そうして今は


「ガー君、ガー君キスしてっ」


「セシリーなに言ってんだ。周りに人がいるだろうが」


「えー、夕べは久しぶりに会えたんだからってガー君からキスしてくれたじゃない。それに昨日はベッドでも荒くれガーグで私壊れちゃうかと…」


「セシリー止めろ。それ以上は勘弁してくれっ」


コウサさんから、ガー君のいじり方を伝授してもらい、今ではきちんとガー君の手綱を握る事が出来ている。

ガー君覚悟しなさいよね。


私が死ぬまで、ううんお互いに天国に行っても手綱もガー君も放さないんだからね。


セシリーは最初


「私は何時までもガーグ様をお慕いしております」

「ガーグ様のお側にいれるだけでもセシリーは幸せです」

ってキャラだったんですけども、これだとガーグと合わない気がしてガー君節のセシリーになりました。

PS 山田先輩が主役の優しい退魔士 山田を連載開始しました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ