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幕間 ビルクーロ悲哀譚

人気が意外と高い悲運の古代竜ビルクーロの幕間です。

古代竜。

上級精霊の中でも、その力は抜きん出ていると言われている。

古代竜は十体、それぞれ光・闇・命・時・火・水・地・空・風・魔の力をもつ。


オーディヌス最大の火山、ボルケリア山のマグマの中に住むは火の古代竜フランメリア。

そこに訪れたのは風の竜ウインデイァー。


「フランメリア久しいですわね」


純白の鱗と純白の翼を持つ竜が声を掛ける。


「何用じゃウインデイァー」


応えるは赤い鱗と炎をまとわせた角を持つ竜。


「いえね、うちの子達が3体ほど行方知らずなんですよ。貴女が何か知らないかと思いまして。ほら他の竜さんとは気軽に会えませんし」


「精霊が行方不明だと?ふむ、儂は何も聞いておらぬがビルクーロなら時に干渉できるから答えが分かるやも知れぬの」


「だから一緒に行ってもらえませんか?私どうあの方は苦手でして」


「ふん、情けない。まぁビルの奴は少し狭量じゃからの。低級精霊でも行方不明となれば大問題じゃからの」


事実、古代竜同士が争えばオーディヌスの大地への被害は尋常ではない。

ましてやウインデイァーは同族の精霊を我が子の様に慈しむ。


時の狭間


「ビルおるか?ビル…何があったのじゃ?」


確かにビルクーロはいた。

しかしその姿は以前と比べようがない程に凋落していた。

自慢の黒い角は根本から折られて漆黒の鱗はまばらに剥がされており、その姿はまるで


「ビ、ビルさんが脱皮に失敗したトカゲになってしまいました」


(ティア止めぬか。ビルの奴は無駄にプライドが高いんじゃぞ)


(フラン、そんな事を言いましてもトカゲにしか見えないんですもの)


そんな2体の騒ぎに気付いたのか、ビルクーロがゆっくりと振り向く。


「はーいお馬鹿竜のビル君でーす。ビル君この間飲み会で無理矢理お酒を飲まされて苦労しましたよ。えっ?何のお酒かって?それはビールですよっ。ビルクーロだけにビールで苦労…ご免なさい、ご免なさい、つまらなかったですよね。…なんじゃ、お主等か」


ある意味勢いよく振り向いたビルクーロは揉み手のまま気恥ずかしそうに咳払いをした。

ビルクーロにしてみればある方から次に出迎える時は笑いをとれる出迎えをしろと厳命されたから全力で笑いをとりにいっただけなのだが。


「ビル何があったとか言うレベルじゃないぞ。答えろっ誰にやられた。闇か光か?」


火の竜フランメリアは気性も火の如く荒い。

いくら気に喰わぬ奴とは言え昔馴染みをここまで落ちぶれさせた相手を許せる質ではない。


「言えぬ…いや、言いませんってば。許せ大人の事情と言うやつじゃ」


数週間程前ビルクーロが何気にロッキの愚痴をこぼした瞬間に巨大な拳が真上から振り下ろされてビルクーロの意識を刈り取った。

目を覚ましたビルクーロが見たのはWXYやう○こ等のトイレの落書きレベルの文字に剥がされた自分の鱗であった。


「とにかく人型になりましょう。このままじゃ色々と辛いですから」


ウインデイァーはそう言うと純白で長い髪の美少女に姿を変えた。


「その方が良い様じゃの」


続いてフランメリアが褐色の肌に赤い髪を結わえた美女に姿を変えた。

ちなみにビルクーロの人型は漆黒の長い髪をたなびかせる美形青年。

しかしフランメリア達の前に姿を現したのはボサボサの長い髪と青白い肌に無精髭を生やしビン底眼鏡をかけたオタク風の青年であった。


「…ビルさんなんかご免なさい。あの私の子達が3体行方不明になっているの。お願いだから行方を探して下さい」


「この事を他言せぬと約束すれば構わぬ。…」


みるみる顔をまっ青にしていくビルクーロ、額からは冷や汗がとめどなく流れ落ちてくる。


「ビル、精霊の行方は分かったのか?ビル?」


「ご、ご免なさいー。まさか関係者だとは思わなかったんですー」


膝を抱え込みブルブルと震え出した人型ビルクーロ。


「ビ、ビルさんどうなされたんですか?凄い汗ですよ?」


「う、うるさい。お前の眷属の教育がなっていないのが原因なんだぞ。それにフランお前は絶対に逆らえない相手なんだぞー」


もはや三下キャラと化したビルクーロが喚き散らす。


「ビル口が過ぎるぞ。まさか儂等2体と争うと言うのではないだろうな」


微塵も怒りを隠さぬフランメリア。


「あの方々に逆らうよりもお前達と争った方が数倍、いや数万倍ましなんだよっ。今に見てろ、お前達も絶対に後悔するんだからな!!」


「何をふぬけた事を言っておる、そんな奴は儂が…ヒッ、あ貴方様は…」


「フランメリア止めてもらえませんか。それ以上言うなら貴女とはいえ容赦はしませぬよ」


時空の狭間に現れたのは自称トイザルス。


「貴方様が来られて、ビルさんが怯えているのは…」


「時の次は風と火ですか。羽毛布団とホットプレートが作れますね。どうしますか?ロッキさんとトイザルスがタッグマッチを組みますよ…冗談ですよ、泣かないで下さい。紳士はレディには優しいんですから」



「エコヒイキだぁー」


時の狭間にビルクーロの魂の叫びが鳴り響く。




たまにはクスリとできる話を書きたくて

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、素材取るのも目的の一つだっただろうし 地球にいかせて別れを告げさすのも ロッキの目的の一つだったでしょうし 予定調和だったんじゃね? その為の伏線をわざわざ地球にいってはってたみたいだ…
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