ザコとエルフ 試合開始と南エルフの反則?
小説の締め所って難しいですよね
side 功才
いよいよ試合が始まる。
主審はロックオーガ伯爵、その顔には疲れがにじみ出ている。
「サン・エルフ帝国先鋒蒼き氷狼ウルフェン・サンゴー」
「へーい」
ウルフェンは前傾姿勢でポケットに手を突っ込みながらステージに上がっていく。
明るい茶髪で吊り目、ふてくされた様な態度。
あんな感じのが勇牙のチームにもいたよな、俺はよく絡まれたし。
「エルフィン聖王国先鋒騎士団団長レオ・ライオネック」
「押忍!!」
レオさんは相変わらず暑苦しいぐらいに気合いが十分だ。
「双方、武器を提示しろ」
「押忍!!よろしくお願い致します」
レオさんが見せるのは正真正銘の木剣。
「ほらよっ、刃はついてねえぜ。ヒャッハハッハッー」
(ちょ、あれってあからさまに金属じゃないですか?それに真ん中に埋め込んでいる石はなんですか?)
(あれは魔法剣だよ。剣に精霊が力を込めた魔石を埋め込む事で精霊魔法を詠唱なしで使える厄介な代物さ)
(何すか、そのふざけた設定は。そんな物今まで見た事も聞いた事もないですよ)
(ザイツ殿、魔法剣は非常に高価で殆とが国宝扱いで王族でも自由に見る事はできないそうですよ。それにもし持ち出して紛失でもしたら一大事ですから、魔石から精霊の力が無くなってしまうそうです)
早い話が盗まれでもしたら高額な損失に加えて、折角力を貸してくれた精霊に嫌われてしまうと。
魔石と同じく権威付けと抑止力に使うのが現実的なんだろう。
「隊長さん文句ねえよな?この氷狼の魔法剣アイスウルフを目に出来たんだから感謝しねえとな。可愛い娘さんの為にもよ」
えーと、あの子はお馬鹿?
自分からネタばらしと犯罪認定しちゃったよ。
「私語は慎み給え。それでは試合を開始するぞ」
伯爵がステージから離れると四隅にあるコーナーポストみたいな柱から光が出てきたステージをぐるりと囲み水が注水されていく。
水に氷狼なんて有利にし過ぎだろ。
「さて北エルフのお兄ちゃんよ。アイスエルフにしてやるぜー!!喰らいな、アイスウルフッ」
ウルフェンが剣を振るうと氷の狼がレオさんに襲いかかる。
距離もあったお陰でレオさんは難なくかわす事ができたも氷狼があたった水面が一瞬にして凍りついた。
「次々いくぜー。ほらよっ、そらよっ」
氷狼を次々だすウルフェン、必死にかわすレオさん。
いつの間にかステージは北極みたいに氷山だらけになっていた。
「おい、こら!!逃げてんじゃねー。北はビビりしかいねーのか」
いや、あれから逃げないとレオさんが氷漬けになるじゃん。
「遠くからしか攻撃のできない南エルフの方が臆病者ではないか」
(コウサ2人共寒くないのかな?見ているメリーも寒くなってきたよ)
(レオさんは違反してきたウルフェンへの意地、一方のウルフェンもあんな武器使っといて負ける訳にいかないからな。でも2人共唇が紫になってんだよな)
2人共寒中水泳をしてる様なもんだし。
ちなみに俺はメリーがピッタリとくっついているから暖かい。
「Hei!ウル君なにやっちゃってるのー?Hayaku決めちゃいなよー」
チピーラがウルフェンにプレッシャーを掛けてきた。
「王子分かりましたよ。喰らえっ!超絶最終秘奥技オーロラブリザートウルフッ」
今までの倍ちかい大きさの氷狼が吹雪を纏って現れる。
(コウサ何であんな恥ずかしい名前なのかな?)
(メリーそれ言っちゃ駄目。本人は格好いいと思って一生懸命考えた技なんだから)
「気合い全開!熱いエルフ魂は砕けない、むしろ氷をも砕く!!」
暑苦しさを倍増させたレオさんが氷狼に突っ込んでいく。
…結論、レオさんの魂は砕けなかったけども木剣が砕け散りました。
1敗はしたけども収穫は大きかった。
南エルフ自体は強くはない、だから反則な武器を選ぶんだろう。
次は棘のあるステージか…。
「メリー、ミスリルローブって持って来ている?」
「コウサのリュックに仕舞ってあるよ。どうしたの?」
「多分、次の相手は…くるからハンナさんに貸しても大丈夫?」
「当たり前だよ、ハンナはメリーの親友なんだからね。ハンナに渡してくるよ」
幸い、ステージは水を抜いて乾かす準備にはいってるから時間が稼げる。
この闘いに勝つには時間稼ぎも必要になってくる。
「次サン・エルフ帝国次鋒サン・エルフに咲く可憐な花ロゼッタ・サンフラワー」
「はぁーい。よ・ん・だ?」
何この露出狂は?
ボンデージって違う意味の女王様エルフかよ。
(何あのケバい女は次呼ばれるのは次峰なんだから自分だって分かるでしょっ!コウサそう思うよねっ)
(それ以前にあのキャラは受け狙いじゃないよな。南エルフには色物しかいないのかよ)
何でクネクネ歩くんだよ、それに手に持っているのは鞭だよな。
たしかに鞭だから刃はないよね。
「エルフィン聖王国次峰がーグ冒険者隊ハンナ・ハンネス」
「はいっ!イントル頑張ってくるよ」
ハンナさんが身につけているのは防御力満点のミスリルローブ。
2人がステージにあがると柱からプロレスのロープみたいな物が出て来た。
しかもご丁寧に棘付きって有刺鉄線かよ。
「あら?貴女は猿人族ね。でも可愛い顔して私好みだから可愛がってあ・げ・る」
…エルフィンに咲いた花って百合だったんだ。
「じ、自分にはイントルって言う心に決めた男がいるんだっ」
ハンナさんは、かなり必死だ…当たり前か。
「もう遠慮しちゃって。いくわよローズウイップ」
すげ、棘つきの鞭だ、鞭って武器は意外と厄介らしい。
先ずはリーチが長い。
そして素早い攻撃が出来る。
だから
「ほらほらっ、折角の斧も近づかないと意味がないわよ」
ハンナさんも攻め倦ねている様に見えた。
side ハンナ
どうすれば懐に入れるんだ?
こんな時の為にイントルに組み手をしてもらったのに。
えーと鞭と戦う時は…確か
今だっ、鞭が地面に着いた瞬間、自分は鞭を踏みつけた。
コウサからもらった頑丈な靴だから痛みもない。
「近距離なら自分の独壇場だっ!!」
side イントル
ハンナがロゼッタさんの頭上めがけて斧を降り下ろしたと思った瞬間、ハンナがグラリと崩れ落ちました。
「危ない、危ない。隠し武器は禁止じゃなかったよねー。ねぇ隊長さんキャハハハッ」
ハンナを嘲笑うロゼッタの手に握れていたのは短く切られた木槍。
どうやら胸元に隠してあった木槍でハンナの鳩尾をついた様です。
さて、久しぶりに紳士から魔物に戻るとしますか。
私の大切な人を傷つけるとどうなるか分からせてあげますよ。
今次作の構想を練っています
キャラとか粗筋とか
まぁザコとイ・コージが終わったら山田さんとの2本同時更新予定なんですけど