ザコとエルフ それぞれの準備
書きためがあるうちに書けば楽になるかも
side 功才
またまたやって来ました魔法研究所。
所長から身分証明書もらえたからフリーパス状態。
「コウサ今日はどこに行くの?」
「この間会ったロックオーガ伯爵の奥さんの所だよ。なんでも大量生産をする部署にいるらしいから」
欲しい素材は安い物なんだし。
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「何しに来たんだ、この腹黒小僧!!まったくお前を見るとコージの悪どさが可愛くみえてくる」
こりゃまたいきなり随分な挨拶だこと。
「ちょっと欲しい素材があるから分けて欲しいんすよ」
「あっ!何言ってんだよ?素材だって無料じゃねえんだからよ」
この人って本当に伯爵夫人なんだろうか?
「分かってます。きちんとお金は払います。細い鉄の棒とかがあれば嬉しいんですけども。親指くらいの太さがあればいいんすけど」
「そんな物どうすんだよ。向こうに資材置き場があるから事務所に話して持って行け」
流石は資材置き場、色々な太さの鉄の棒がある。
丁度いい太さの鉄の棒とA4サイズの鉄の板を購入、ついでにゴミ箱から木屑をゲット。
(素材を色々とゲットだぜー)
仕事の邪魔をしない様に心の中で叫んでおく。
「それじゃお世話になりました」
「ちょっと待て。よく考えたらそんな物どうするんだよ?下手な事に使われちゃ俺が困るんだよ」
うん、それ正論。
「内緒にしてくれるんなら何に使うか教えるっすよ」
「良いから早くしろ!!」
師匠から新しく教えてもらった魔法ウェポンファクトリー、早い話がアローファクトリーの武器版なんだけども刃をつける事はできない。
でも武器の形に制限はないらしい。
だから木屑の中に鉄の棒を埋め込む。
木剣の中に鉄の棒を埋め込むイメージをしながら
「ウエポンファクトリー」
完成!!鉄の芯を埋め込んだ木剣。
「おい、今の魔法はなんだ?つうかお前その剣を試合に使うつもりか?どう考えても違反だろうが。模擬戦や試合に使うのは木剣ってのが相場だろ?」
刃引きをしているとはいえ鉄の剣なんかで攻撃したら怪我は必須。
普通、今みたいな試合の時は木剣を使うのが暗黙の了解だ。
「言われたのは刃がついてない武器っすよ。それに南エルフはあの条項を拡大解釈してくると思うっすからね。木剣だと切られてお終いにするんすよ。まっ南エルフが木剣を使うんなら俺らもそうするっすよ」
下手すりゃ刃引きしたミスリル銀の武器を持って来かねない。
「って事は板は斧につかうつもりか。武器は2種類しか作らねえのか?」
ちなみに剣はガーグさん、斧はハンナさん用。
先鋒をお願いするエルフ戦士には普通の木剣を持ってもらう予定だし、イントルさんは木の棍棒で十分過ぎる威力がある。
俺は特別制の剣を作る予定だし。
「まあ、その当日をお楽しみにってやつです」
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side ハンナ
本当にイントルの相手は自分なんかで良いんだろうか?
今日、挨拶に回った人達は宮廷魔術師、宮廷詩人、指揮者、画家。
どの人もルーンランドだけじゃなくオーディヌス全土で有名な人らしい。
自分は聞いた事もない名前ばかりだった。
イントルはその人達と難しい話を楽しそうにしていたんだ、でも自分には内容はチンプンカンプン。
もし、もしイントルと結婚したら自分もあの人達と話をしなきゃいけないんだろうか。
「ハンナ疲れていませんか?次の人で最後になりますけども、少し休みましょうか?」
「大丈夫。これでも自分は戦士、体力には自信があるよ」
体は平気なんだけど、頭は真っ白。
「それなら安心です。次に会うのはペルーセン教授です。ペルーセン教授はルーンランド国立大学でを魔法陣構築論を教えているんですよ」
教授?教授って事は先生だよね。
うー、自分は先生が苦手なのに。
ペルーセン教授は小柄な白髪の老紳士だった。
「ペルーセン教授お久しぶりです。教授が先月に発表された魔法陣を構築する場所による魔術の威力の増減の検証及びその推論とても感銘を受けました。相変わらずのご明察振り素晴らしいです」
「いやいや、イントル君から届く質問のレベルの高さにはいつも感心させられるよ。うちの生徒達に君の爪の垢を飲ませてやりたい位だ。特にこの間の時空転移魔法が及ぼす周辺の影響なんて学会に発表しても十分通用すると思うんだがね」
えっ、イントルってそんなに凄いの?
「ありがとうございます。でも私はトロルですから叶わぬ夢ですよ。支えていきたい友人もおりますし」
トロルだからか…
自分はイントルより理知的な人に会った事がないんだけど。
さして支えたい友人はがーグ殿なんだろうな。
「話は聞いてるよ。政治の世界に身を置くつもりかね、君みたいに清廉潔白な人が政治の泥にまみれて欲しくないのだが」
「泥がついたら落としますよ。泥中にいても民の為に清さを保てるか試してみたいんです」
イントルー、何を話しているか自分には全く分からないよー。
「分かった、後は何も言わないでおくよ。ただで無理はしないでくれ給え」
「教授、大丈夫ですよ。今の私には無限の力を与えてくれる人がいますから」
「ハンネスさんでしたね。どうかイントル君を支えてあげて欲しい。彼ほどの人物は中々いないのだからね」
そうか、自分は自分のペースでイントルと歩いて行けばいいんだ。
「は、はっい。自分以上にイントルを大切に思える女はいませんから」
side ロッキ
「南エルフが怪しい動きをしているんですか?」
「はい、ルーンランドで今の試合に関わっている人間の家族を誘拐して試合を有利に勧めようと計画している様です」
「コウサ君達の手に余る感じですか?」
「魔石に宿っている低級精霊を3匹確認しました」
精霊ですか、あれだけきちんとお話してあげたのに。
恐らくは私の誠意が届かなかったのか、または教えてもらえなかったのか。
「やれやれ、功才君に内緒で試合を観戦しようと思ってたんですけどね」
「ご安心下さい。低級精霊等に貴男様のお手を煩わせる必要がございません。私が動きます。…いえ、動かさせて下さい、功才さん達の動きをみるのは私の楽しみでもあります。あんな無粋な事をされるのは不愉快ですし」
功才君、やりますね。
この者が猿人族にプラス感情を持つなんて奇跡に等しいんですよ。
なにしろ彼は精霊より遙かに格上である魔神なんですから。
師匠の部下の名前考えなきゃ