ザコとエルフ ルーンランドでの暗躍
冒頭部分はイ・コージの前話の視点変更です。
side 功才
魔法研究所、所長ヤ・ツーレ。
イ・コージの上司にしてルーンランドの闇の部分に深く関わっている人物。
本来なら関わりたくもない人物なんだけども、南エルフやイ・コージとの事を考えると避けては通れない。
ヤ・ツーレは名は体を表すって感じで悲壮感さえ漂っている。
でも対峙しただけで分かる洒落にならないぐらいにやばい人だ。
「イ・コージさんの無罪の手続きの代わりに公平な情報の開示をお願いしたいんすよ」
「公平な情報の提示ですか?本当にそれだけで宜しいのしょうか?」
他の国の死刑囚を脱獄させた上に自国で働かせているんだ、本来なら金とか無茶振りとか色々と引き出せるんだけども。
「別にイ・コージさんが何でルーンランドにいるのかを知りたい訳じゃないんすよ。南エルフの人達は因縁をつけて試合に持ち込んだっすからね。あの手の人達が試合まで何もしない訳がないっすからね。それに下手な事をしたらガーグ王子の信頼を傷つけるだけっすよ」
他国の人間を脅したなんて経歴があると、これからの外交上あまり宜しくない。
「分かりました。そういえば最近ルーンランドは月明かりが暗いんですよ、夜道は気をつけて下さいね」
つまり調子に乗ると闇討ちをさせると
「そうなんっすか、それなら夜は冒険者宿から出れないっすね。冒険者ギルドの宿屋なら心配ないっすもんね」
「そうですね、冒険者宿なら安心です。でも郊外に行くと誘拐とかの噂もあるのでお気付けください」
今度は宿から出たら賊に襲わせる可能性を臭わせてきた。
「シャルレーゼ・エルフィンローズ女王、デュラン・マクスウェル伯爵、時空竜ビルクーロ、バルドーの宮廷魔術師ミッシェル・ブラックローズ、魔導師ロッキ・バルボー。有名無名様々な人がいるっすけども、全員それなりの力を持つ人っす。それが返事っすよ」
それなら俺達についているバックを臭わせておく。
「時空竜とは。昔話じゃないんですから」
まぁ、普通は信じないよな。
「これは俺の師匠ロッキ・バルボーから授かった魔石なんすけども」
俺が取り出したのは師匠から預かってあるビルクーロの力が籠められている魔石、魔法研究所の市長なら分かる筈。
「やれやれ、今回は私の負けです。子供相手と油断した事と準備で差がつきましたね。いいでしょう、私が知っている情報は教えて差し上げます」
「勝負なんて嫌っすよ。俺はあくまでも話し合いに来たんすから。それに俺には自分で動かせる力はないっすから長期戦だと不利になるから勘弁っす」
この手の相手には油断は禁物、だって向こうが提供するのは出しても損はない情報、それに対して俺は手持ちのカードをフルに使い切った。
「コウサ、大丈夫?」
所長室から出て疲れ果てている俺を見てメリーが話し掛けて来た。
「なんつーか怖いおじさんだったよ。ありゃ絶対に洒落にならない組織を抱えてんな」
今回は南エルフの情報を聞き出すのが一番の目的だったからうまく譲歩をしてもらえたけど、ゆすったりしていたら知らぬ間にあの世行きだ。
「これから南エルフを見に行くんだよね。今回は新婚旅行に来た夫婦でどう?お婆さんからもらった指輪を着けて名前はメリー・ザイツにしようっと」
正確には今回も夫婦役なんだけどね、でも喜々として準備をするメリーにそんな事を言える訳がない。
「南エルフは貴族御用達の宿屋に泊まっているだとよ。物珍しさもあって観光客や商人で賑わっているみたいだよ」
実際に南エルフが正式に国外に出てくるのは数百年振りらしい。
「そんなに騒がれて嫌じゃないのかな?エルフって他種族をあまり好まないって話じゃなかった?」
「頭の中じゃ北エルフに完全勝利している姿が完成していてご機嫌なんだろ?今から自分達を印象付けておいて試合で完勝すりゃ株が急上昇だからな。それにチピーラ・サンシータは自己主張が強いらしいし」
まあ、南エルフが1人でも見れれば御の字って所だから周りの商店とかで聞き込みするのが一番だろう。
――――――――――
(コウサ、コウサ、もしかしなくてもアレがそうなのかな?)
(肌が日焼けしたエルフだし、周りにいるのは南エルフだろうからそうなんだろうな)
周りに聞くまでもなくチピーラ王子を見つける事が出来た。
貴族宿の階段に腰をかけてギターみたいのを弾いている。
金髪に日焼けした肌、シャツは胸元まで開けてバラを口にくわえている。
イケメンな顔もあり、その姿はまるでホスト。
北エルフの王子がヤーさんで南エルフの王子はホストって。
(周りを囲んでいるのが代表戦士だろう。名前くらい知りたいよな)
話し掛けてメリーがいないのに気付いたまさか南エルフの所に?
「ダーリンこんな物が売ってたよ」(コウサはハニーって呼んでくれるんだよね)
メリーが持って来たの一枚の紙、ダーリン、ハニーは姉ちゃんの入れ知恵だろう。
メリーからの成果報告を聞いて笑い転げるつもりに違いない。
「ハ、ハニーありがとう。それはなんだい?」
埋めてくれ、穴に入るだけじゃこの恥ずかしさは消えない、誰か俺を埋めてくれー!!
「チピーラ王子様の紹介だって」
へっ?紙にはサン・エルフの美しき王子チピーラ・サンシータとその忠義戦士達ってタイトルが書かれていた。
(メリー、俺の隠密交渉が虚しくなってきたよ。つーかコンサートの告知かよっ)
(コウサ後からメリーが膝枕してあげるからゆっくり休んでね。これを持って宿屋に帰ろっ)
後ろからはサン・エルフ達への黄色い歓声があがっている。
女性による人気投票なら俺達は完敗する自信がある。
ちなみに俺はメリーの膝を少しだけ濡らした、俺が命懸けで交渉したのに勘弁して欲しいよな。
――――――――――
イントルさんもイ・コージから情報を引き出せたらしく、俺達は宿屋で話し合いを行う事にした。
「しかし用意周到といや言いのかザルだらけと言えばいいのか」
「どっちも俺等に漏れるとは思ってないんですよ。信用第一の研究所から情報が漏れる可能性は低いですし、宣伝もエルフ以外に渡す様に話してあるんでしょ。北エルフはまだデュクセンにいると思い込んでるんですよ」
ミッシェルさん達にはデュクセンで派手に動いてもらっているから、嫌でもチピーラー達の耳に入ってると思うし。
「それにしても何だよ、この通り名は」
蒼き氷狼 ウルフェン・サンーゴー
サンエルフに咲く可憐な花 ロゼッタ・サンガール
輝く英知 ブレーイン・テンーサイ
孤高のサムライ ジュベー・ヤーギュー
太陽王子 チピーラ・サンシータ
うん、厨二だねっ、つうかゲームの登録名みてー。
それで闘技場は胸まで水を張るステージ、魔法の棘を張るステージ、クイズステージ、道場ステージ、目立つ為のステージ。
うん、まるで男○だねっ。
サン・エルフにも○塾があるのか。
こっちとしては先鋒はエルフのレオさんかネーガさんで様子を見る
次鋒は女性になるだろからハンナさん。
中堅は知識があるイントルさん。
それで大将はガーグさんしかいないよな。
つうことは俺の相手は孤高のサムライって人になるのよな、やべっ、一番ガチな人じゃん。
サムライなら相手と同じ条件で闘おうよー。
でも木の板の上で闘いって事は道場剣術なんだろうな…あれを試してみるか。
あくまで精霊魔術は禁止なんだし。
クロスさせるのって凄い難しい。
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