ザコ登場する
初オリジナルの作品となります。
更新の早さは全く未定です。
(今日も嬉しいぐらいに平和だ、いや幸せだっ !)
学校は男子校。
当然、彼女はなし。
できる予定もなし。
ついでに、才能や見た目は、人並み以下。
でも今、俺は幸せなんだ。
昼休みの教室で幸せを実感していると、同級生が声をかけてくる。
「おーいザコ。山田先輩が呼んでんぞ」
「わーった。今行く」
――――――――――
「ちーっす。山田さん何か用っすか?」
「おっ、ザコ来たな。こいつがバイト先の後輩の財津功才通称ザコだ。ザコこいつらが、お前の幼なじみの話を聞きたいんだとよ」
またか。
俺が知らない人に興味を持たれるのは、俺じゃなく周りの人間に興味があるからだ。
「いいっすけど、どっちの幼なじみっすか?」
「なっなっ、お前さ。美星学園の三条小百合さんと夏海唯ちゃんと幼なじみって本当か?」
三条小百合
黒髪の長髪、白い肌に日本人形並みに整った顔。
性格はおしとやかで、生け花や茶道を好むリアル大和撫子。
夏海唯
元気の固まりのスポーツ少女。
誰にも分け隔て無く接する明るい性格。
それでいてモデルが勤まる美貌をもつ。
「そうっすよ。2人共、俺の幼なじみっすよ」
この後の答えは、決まっている。
そしてその後の答えも。
「いーよなー。うらやましい、あんな美人の幼なじみがいるんなてよ」
「そうっすか?ついでに風雅院隼人と鷹丘勇牙も幼なじみなんすよ」
風雅院隼人
美星学園野球部の四番でエース。
頭脳も天才、そして綺麗系なイケメン。
鷹丘勇牙
同じく美星学園の生徒。
暴走族マッドエンペラー総長。
男気溢れる性格で、メンバーに絶対的な信頼をもたれている。
こいつはワイルド系イケメン。
ちなみに4人共も俺と同い年の高1。
「こいつの周りは美少女、イケメンばかり。しかも揃いも揃って多芸多才。それでこいつについたあだ名が財津巧才を縮めたザコって訳だ。悪い奴じゃないから可愛がってやってくれや」
山田先輩が、ニヤニヤしながら俺を指差している。
山田先輩の友達は、生暖かい目で俺を見ていた。
それは確実に同情の目。
その扱いには、慣れてるし同情ならむしろありがたい。
ガキの頃は、何も気にせずあいつらと遊べていた。
小学校にあがって努力では埋められない才能の差を思い知る。
周りの大人達からは、いつも5人一緒なのに君だけ努力をしていないんじゃないかと良く言われた。
努力ならあいつらの数倍していた。
勉強もスポーツも。
中学になると、あいつらに嫉妬をした奴が俺に八つ当たりをしてきた。
やれ三条に振られたのはお前のせいだとか、夏海に嫌われたのお前が悪口を言ったんだろうとか。
挙げ句の果てに、風雅院に女を盗られたとか、鷹丘にケンカをうって負けたのが腹がたつとか、そんな理由で俺に八つ当たりをしてくる奴もいた。
高校になって、あいつらと離れた俺には、美少女の幼なじみと絡める特権やイケメンや暴走族リーダーの幼なじみの恩恵を失ったけど、比較をされずに済む幸せが待っていくれた。
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その日の夜。
俺がコンビニのバイトを終えて、帰る途中に女の子の叫び声が聞こえてきた。
普段ならそんな面倒事は知らないフリをする。
しかし叫び声の主は幼なじみの夏海唯に違いない。
無視をしたら、小百合に泣かれ隼人に嫌味タップリに叱られ、勇牙にしばかれる。
何より唯が、傷つく姿を見たくはない。
あいつらから離れたのは、俺の勝手でしかないんだから。
今俺が持っているのは、飲みかけの缶コーヒーと通学カバンぐらい。
(武器になる訳ないよな)
声のした方に走っていくと、唯が男に絡まれている。
周囲を雑居ビルに囲まれて、逃げ場がないらしい。
男は180以上ある筋肉質でスキンヘッド。
できる事なら、一生関わりたくない人物。
ケンカじゃ絶対に勝つ自信がない。
でも俺はこの場を切り抜ける自信はあった。
飲みかけの缶コーヒーを男の頭目掛けて投げつけた。
カッーンと良い音を立てて、缶コーヒーは男の頭にクリーンヒット。
「良かったじゃねえか、ハゲに髪が生えたぜ」
男の頭からは、コーヒーが滴り落ちていた。
「功才っ!!」
唯、できたら名前を読んで欲しくなかったなー。
「唯、ここは俺が何とかする。勇牙があの公園で集会をしているから逃げろっ」
逃げて、勇牙や暴走族のお友達に俺を助ける様にお願いしてちょうだい。
男は小馬鹿にされたと思ったらしく、唯から俺に標的を変えて襲いかかってきた。
それならチョコマカ逃げて、唯の逃走時間を稼いでやる。
(唯の奴、心配をして残ってないだろうな)
…‥さすがは部活少女、ちゅうちょなく走り去った様で唯の姿は既に消えていた。
それなら俺が取る行動は1つ。
雑居ビルの隙間から逃走をはかるのみ。
あの体なら隙間に入ってこれないだろうし、隙間を抜ければ駅前通りだ。
思った通り、男は追って来れなかったが、何故か隙間は延々と続いていた。
どれ位歩いたんだろう。
確実に雑居ビル以上は歩いている。
でも、後ろを振り向く勇気なんて俺にある訳がない。
その後も歩いていくと、ようやく明かりが見えてきた。
ここを抜けたら駅前通りの筈なんだが。
でもそこはレンガ造りの部屋で、ソファーに男が腰を掛けていた。
男は俺を見つけると、ニヤリと笑いこう言った。
「ようこそ。魔法と剣の世界、オーディヌスに」
なに、この状況は?
幼なじみ4人は、しばらく、でてきません。